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今日も今日とていつもの公園に向かい、のんびりのどかに爽やかな風に吹かれる天野 青空(そら)。
今日は少しばかり変わっている。というのも雨御(アマゴ) 虹(なな)に呼び出されたのだ。
あ、十四松だ(知ったかぶり)
と景色を見ながらいつものベンチまで歩く。前日のこと
「あ、もしもし?」
「うーす」
リビングで寛いでいるとき、虹(なな)から電話が来た。
「お疲れ〜」
「疲れてないけどお疲れ〜」
「今大丈夫だった?」
「大丈夫じゃないと電話でーへんわ」
「それもそうか」
「どうした?」
「いや、明日さ?いつもの公園行く?」
「うぅ〜ん。まあ、行く予定。雨じゃなきゃ」
「そっかそっか。いるとしたらいつものベンチ?」
「そ う だ ね?」
「オッケー」
「ご飯でけたー」
虹(なな)の奥から男の子の声が聞こえる。
「オッケー!今行くわ!作詞作曲やってんの?」
「ん?今まさにやってる」
「おぉ」
「虹(なな)は?」
「いやぁ〜徐々に勘が戻ってきてますね」
「お、いいじゃん。MyPipeで動画でも出すか」
「いいんでなぁ〜い?じゃ、明日よろしく」
「よろしく?あ、はい」
電話が切られた。
あれは一体なんだったのだろう?
と思いながらいつものベンチを目指す。あ、ちなみに今日は前髪をヘアゴムで上げています。
ヘアゴムは昔虹(なな)が置いていったヘアゴム
人気ハイトーンボイスバンド「Alex thunder drops」のロゴのヘアゴムである。
「あ」
いつものベンチに人が座っていた。そりゃ“みんな”の公園だからこんなこともある。
幸いベンチは横並びに2つあるため、人の座っていないほうのベンチに座ればいい。
なぜか少し申し訳なさそうに座る青空(そら)。
リュックを横に置いてゲームをしている男の子。顔は髪で見えない。
てか、よく見たらコーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)の生徒じゃん。
こんな時間に公園いるし、ヤンキーかもな(ブーメラン1本目)
てか、ゲーム学校に持ってってんのか。ヤンキーだな(ブーメラン2本目)
てか髪めっちゃ長ぇな。前見えんのかあれ。ヤンキーの間で流行ってんのか?(ブーメラン3本目)
よく見たらピアスしてんじゃん。やっぱヤンキーだ。こえぇ〜(ブーメラン4本目)
ブーメランが全て返ってきて青空(そら)に突き刺さった。
1、コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)の卒業生
2、学校にゲーム持っていってた勢
3、髪長い
4、この男の子は耳たぶに1つだが、この男の子と比較にならないほどピアスを多く開けている
自分で投げたブーメランで体力がゼロになり「GAME SET」である。
はっっと我に帰り
あ!勝手に対戦して、自分の攻撃で勝手に負けてた!
と思いスマホを取り出す。隣のベンチからはカチカチカチカチとボタンを押す音が響いていた。
あいつ(虹(なな))、昼休憩の間に出てくると思ったけど、まだかかんのかな…。LIMEしてみっか
青空(そら)「着いたけどどうしたらいい?」
しばらく待ってみて再度、虹(なな)とのトークルームに入ったが
既読にもなってねぇや。まだ昼休憩になってないのかな。
とりあえず意味がわかると怖い話でも読んで待つか
とスマホで意味がわかると怖い話のアプリを開いて、読んでない話をタップし、読み進める。
この間、怖い体験したからここに記す。
その日オレはいつも通り仕事して帰ろうとしたら先輩に飲みに誘われたの。
まぁぶっちゃけ疲れててすぐ帰りたかったけど、断るに断れなかったオレは先輩と飲んだの。
幸い1軒だけで済んで、家に帰った。鍵穴に鍵を差し込んで回してドアノブを握って
ドアを開けようとしたんだけど開かなくて、もう1回鍵差し込んで回したら開いたの。
はぁ〜おんぼろアパートだし、鍵も変えないとダメか?
なんて思いながら鍵を開けて家に入って、ドアに鍵閉めて電気つけてリビングに入った。
汗もアルコールも疲れも落としたくて、リビングでネクタイ外して
ジャケット脱いで、ズボンも脱いでお風呂場に向かった。Yシャツを洗濯機に放り投げて
ガラガラッってすりガラスの扉を開けてシャワー浴びたんだ。
本当はお湯に浸かってゆっくりしたかったんだけど、疲れが勝っちゃって
結局シャワーだけで浴槽の蓋には指1本触れずに風呂から出たんだ。体を拭きながら
ビール飲んで、テレビ見ながら寝落ちかな
なんて考えてたの。その時、背後から音が。ガタンッ。
オレはもうビクッー!ってなっちゃってwでもよく考えたら、オレ来週誕生日だし
彼女か妹が誕生日プレゼントの偵察のためにオレとLIMEして、オレがお風呂入るって言ったら
その隙を狙って、合鍵で侵入したのかな?なんてお気楽に考えることにしたわけ!
んで、とりあえず今タオル1枚だし、下着くらい穿こうと思ったら
ダッダッダッダッ!ってリビングを走る音がするの。
そんな音出したらバレるぞー。いやもうバレてるけど。なんて思いながら
下着を穿いて何も気づいてないふりしてリビングに入ったの。
パチンッって電気をつけて暗かったリビングが照らされる。そしたらなんてことなかった。
さっき脱ぎ散らかしたスーツとか、散らかったいつもの部屋。誰のいなかった。
誰もいないの。あ、そうか。あの足音は隠れ場所探して焦ってた足音だったんだ。って思って
何も気づかない振りを継続して、ベッドに入って寝ようとしたわけ。
しばらくしたら風呂場のドアがゆっくりギッギギーって開く音が聞こえて
「あぁなるほど。咄嗟に風呂場に隠れたのか」と思っていると、お次はカッチャンッって
鍵が開く音がして、たぶん出て行ったんだと思うんだ。
そしたら不思議なことにまたドアが開いたんだよね。「なんだ?」って思ってると
「キャッ!」っていう女性の声とダッダッダッダッって玄関のほうに走っていく足音が
聞こえたの。起き上がりはしなかったけど、ビクッってなってね。
気になってなかなか寝れなかったんだけど、まぁ疲れもあって、いつの間にか寝ちゃってたんだよね。
朝起きてスマホ見たら彼女からLIMEが来てて、しかもなんか怒ってんの。
「元カノとまだ会ってたの?」とか「元カノとまだ関係続いてたの?」とかオレにはさっぱりでね。
身に覚えのないことで怒られるのって怖いよねw
そんな話を青空(そら)が読んでいる間、横にいるゲームをしていた男の子はゲームをカチカチカチカチしていて
ゲームのロードか試合に勝ったか、一区切りがついたようでパッっと周りを見回した。
すると横にいる青空(そら)に気づいて、サティスフィーをリュックに入れて
ファスナーを閉めて、リュックを背負って立ち上がった。
え?ムズくね?この問題。え?結局彼女が家にいましたってこと?
でもそれだと怖くないしな…。元カノが部屋にいたってこと?
それはめっちゃ怖いけど。仮にコイツが浮気してたって話でも怖いけど
なんて考えながら正解を探す。白い文字で表示されている文章をタップする。
部分的に赤くなる。「解答」ボタンを押す。画面に「不正解」と出る。考え直す。繰り返す。
一向に「正解」という文字が出る気配がない。
ここじゃないならどこやねん!
たまにある。意味がわかると怖い話で、わかってはいるけど正解の場所がわからないこと。
心の中で大声でツッコミを入れる青空(そら)。
ふと気づいた。スマホを見ていたその視界の中につま先がこちらを向いた白いスニーカーが入っていた。
え?
顔を上げる青空(そら)。青空(そら)の視界には
隣のベンチでゲームをしていたはずの前髪の長い男の子が立っていた。
青空(そら)は一瞬なにがなんだかわからず、真っ白になった。そして改めて
え?
と思った。青空(そら)にはその男の子の後ろに
ズゴゴゴゴゴ!というバトルマンガや能力系アニメなんかで
怒りで大地がひび割れ隆起するような効果音が聞こえ
文字になって浮かんでいるように見えた。脳内の青空(そら)は
え?え?え?待って待って待って?怖い怖い怖い。なになになに?わからんわからんわからん。怖いって。
とパニックになってキョロキョロしていた。ハッ!っとなにか気づいたような表情になり、口に手をあてて
もしかして脳内でこの子に向かって「ヤンキーだろブーメラン」を投げてたのバレた?
わりと「えいっ!」とか無邪気に楽しんで投げてたのバレた?
と思った。しかし恐らくそれはバレていない。
「隣、いいっすか?」
とその男の子が口を開いた。長い前髪で表情はわからない。
氷に包まれたようにピキンッっと固まった青空(そら)。
「はい。どおぞ」
言葉まで氷に包まれているようだ。
イヤホン取ったほうがいいかな?
イヤホンを外す青空(そら)。しばし2本の間に沈黙が訪れる。
沈黙「すいませぇ〜ん。しばらくお邪魔しますねぇ〜」
青空(そら)は脳内で
男の子に胸ぐらを掴まれ
「おい!テメェーさっきゲームしてるオレのことジロジロ見てたな!?
オレに向かって「ヤンキーだろブーメラン」投げてきてたんだろ!」
と言われ
「いや、違うんです!すいません!カッコいいなぁ〜って。
僕と同じ高校だなぁ〜って思ってただけです!すいません!」
と言い訳をかましていた。
こうなんのかな?助けて…虹(なな)…早く来て
と思った。「ヤンキーだろブーメラン」は正式名称なのだろうか。
「ヤンキーだろブーメラン」グッズ化検討中です。人に向かって投げないでください。
怪我と喧嘩の元になります。
気っ…気まずい…好きな子に告白してフラれて、次の日に席替えがあって
告白してフラれた好きな子がたまたま隣の席になったくらい気まずい
経験談だろうか?たしかにそれは気まずい。
「あの。僕のこと、覚えてますか?」
男の子が口を開いた。いなくなったと思っていた沈黙が再度訪れたが
先程より体重が重くなっていた気がした。
へ?
また真っ白になった。
え?もしかしてどこかで会ってる?街中とかこの公園とか?
前髪長いなぁ〜ってつい見ちゃった?前髪長いから気づかなかっただけで、それがバレてた?
んで青メッシュのバカはどこだって探してお礼参りに来たとか?
やっぱオレこの後ボコボコにされんのかな?
とめちゃくちゃ心配していた。
「ほんとに覚えてないですか?」
男の子は青空(そら)を見て
「青空(そら)兄(にい)」
と言った。言われた青空(そら)はというと
青空(そら)兄(にい)青空(そら)兄(にい)青空(そら)兄(にい)青空(そら)兄(にい)
青空(そら)兄(にい)青空(そら)兄(にい)青空(そら)兄(にい)青空(そら)兄(にい)
青空(そら)兄(にい)…
と頭の中を「青空(そら)兄(にい)」が反芻(はんすう)していた。
その反芻している頭の中にボヤァ〜っと小さな笑顔の男の子が思い浮かんだ。
ハッ!っとなにかに気づき、男の子の両肩をグッっと持ち
「もしかしてオレの生き別れの弟か!?よく見りゃちょっと似てる」
と言い放った。しかし
「違うっすよ。あとたぶん全然似てないっすよ。テキトーなこと言わんでくださいよ」
と冷静に言った。青空(そら)はニコッっと笑い
「な〜んってな」
と言った後、男の子の頭にポンッっと手を置いて
「虹(なな)の弟の橋(きょう)だろ?」
と言うと橋(きょう)の口元は緩み嬉しそうだった。
「いやぁ〜何年振り?大っきくなって、まぁ〜。ね?
こんな髪も伸ばしちゃって。パーマか?癖毛か?ピアスまでして
高校はコーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)とか、お兄ちゃんの後追っちゃダメだぞ?」
と橋(きょう)の髪をわしゃわしゃする青空(そら)。橋(きょう)は
犬かな?
と思った。
「で、どうした?」
と言った瞬間
「あ!」
となにかを閃く青空(そら)。
「昨日のあれ(昨日の虹(なな)との電話のこと)は橋(きょう)のことだったのか」
と1人で納得した。
なんか1人で納得してる。昨日のあれってなんだ?
と思う橋(きょう)。
「そうそう。実は青空(そら)兄(にい)に相談があって」
と言った後に
「あ、そうだ」
となにかを思い出し、リュックを漁る橋(きょう)。
「これ良かったら。最近ひさびさに飲んだら激ウマでさ。最近よく買うようになったんだ」
とホロナミンCを出した。
「お!サンキュー!オレも最近飲んでないわ。でもなんで?思い出したん?」
「いや、兄さんが青空(そら)兄(にい)に相談するなら、お供え持ってけって言ってたから」
「え。あのアホ、オレのことお地蔵様かなんかだと思ってる?」
本名:雨御(アマゴ) 虹(なな)
呼称:アホ、兄さん
「思ってるかもね」
半笑いで言う橋(きょう)。
「どこの世界に金髪青髪メッシュでピアスまみれのお地蔵様がおんねん」
と冷静にツッコミを入れた。
その後ホロナミンCのキャップをメリペリ、プシュッ、カポコンッ!と開け
「んじゃ、あえいがたくお供え物いただきます」
「どうぞ」
と口に流し込んだ。
ホロナミンC特有のビタミン?の香りに意外と強い炭酸が口の中を刺激する。
「ップハアァ〜!え?待って。こんなうまかったっけ?」
とひさしぶりのホロナミンCの美味しさに驚く青空(そら)。
「ね。ひさしぶりに飲むと美味いよね」
「あぁ〜ごめんごめん。なんだっけ?相談?」
あまりの美味しさに炭酸と一緒に本題が弾け飛びそうになったが、間一髪のところで繋ぎ止めた青空(そら)。
「あ、そうそう。相談ってのがね」
一度膝に手を置いて、息整えてから
「オレね!モテたいんよ!」
とまるで某塾講師タレントの「今でしょ」のような身振りで言い放つ橋(きょう)。
唐突な出来事で、変な相談に固まる青空(そら)。真っ白になり、相談内容を飲み込み
「あ?」
と眉間に皺を寄せ、めっちゃ怖い表情で見下す青空(そら)。
「え、怖っ」
思わず言葉になる橋(きょう)。
「え、ごめん。なんか気に障ることでも言っちゃった」
つい謝る橋(きょう)。
「あ、ごめんごめん。違うのよ」
笑顔で両手を合わせて謝る青空(そら)。
「オレの可愛い可愛い弟のような橋(きょう)が「モテたい」なんてバカなこと言ったように聞こえてさ?
さすがに違うよね?きっと高校で習った宇宙語を話しただけだよね?ごめん。勘違いしちゃったぞ」
「いや勘違いじゃないよ。あと高校…というかたぶん、どこでも宇宙語は習わないよ。
特にうち(コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称))は習わないよ。てか、オレそんな変なこと言った?」
青空(そら)は再び優しく微笑み、橋(きょう)の頭にポンッっと手を置く。
「聞こえてました。でもあながち冗談でもなくてさ?ま、可愛い弟みたいな存在ってのはほんとだけど。
橋(きょう)がこんなときから知ってんだから」
とベンチより低い位置に手を持っていく。
「その大きさはない。それこそ宇宙人。宇宙語ペラペラよ」
と笑う橋(きょう)。
「まさかの宇宙語フラグ回収完了」
青空(そら)も笑う。その笑った顔のまま
「橋(きょう)は充分カッコいいよ」
と言う青空(そら)。
「オレが言うんだから間違いない。だから「モテたい」なんてカッコ悪いこと言うな」
「そっ…青空(そら)兄(にい)…」
すごくいい事を言ってお悩み解決。みたいなシーン。
「ん?」
ふと冷静に考える橋(きょう)。
「いやいやいや?え?オレの悩み解決されてなくね?」
解決されていなかった。
「橋(きょう)…そこは空気読んで「青空(そら)兄(にい)、いい事言ってる…」みたいな感じで
いい感じに締めるとこでしょ」
そんなこと自分で言うものではない。
「ごめん。空気読めなくて。え、でもさ「カッコ悪いこと」って言ったけど
学生のときとか思うもんじゃないの?高校のときなんて特に。
青空(そら)兄(にい)は高校んとき思わなかったの?」
たしかに。橋(きょう)の意見も尤(もっと)もである。
「ん?思ったよ?」
「え?」
青空(そら)の思わぬ返事に頭が追いつかない橋(きょう)。
「え?」
「え?」
「いや、高校のときモテたいって思ってたよ?」
「え?」
「だからモテたいって思ってたって」
「え?」
「いや、何回やんねん」
苦笑いでツッコむ青空(そら)。
「あ、ごめんごめん。思ってもない返事が返ってきたから。青空(そら)兄(にい)も思ったことあるんだね」
「あるよ」
「でもそれなら尚更じゃない?青空(そら)兄(にい)も思ってたんなら、オレも思ってもよくない?」
ご尤(もっと)もである。
「んん〜…いやぁ〜…経験談から思ってほしくないんだよなぁ〜…。
あ!いや…でもこれ話すとなると女性に許可をもらわないと…」
少し悩む青空(そら)。
「ちょっと1本電話していい?」
と言う。
「うん。いいけど…」
なんだかわからないが了承する橋(きょう)。青空(そら)はスマホを取り出し
トーク一覧からお目当ての人物をタップし、通話ボタンをタップし、電話をかける。
テテトテテトテテトテテトンッ。橋(きょう)はよくわからないがなぜか緊張し、ドキドキしていた。
「はい」
相手が出た。
「お、出た。あ、もしもし」
「もしもし」
「ひさしぶり。元気だった?」
「ひさしぶり〜元気元気」
「今大丈夫だった?」
「大丈夫じゃないと出ないから」
「それもそうだ」
「さっきまでメンバーと合わせてて、ちょうど休憩だったとこ」
「大変ですなぁ〜」
「ま、大変だけど好きだからね。楽しいよ。あ、なに?なんかあった?」
「あぁ、そうそう。本題本題。今から弟みたいな存在に例え話するんだけど
聞き様によっては女性に対して失礼な話かもしれないからさ。
あ、もちろんオレ自身そんなつもりで話すわけではないけどね」
「それで女性の許可がほしいというわけね?」
「That’s right!!そんな意味じゃないよ?そんなこと思ってないよ?っていうのを誰かに了承を得たくて」
「良かろう。この私が女性代表で了承しよう」
なぜか謎の女性が女性代表になった。
「勝手に女性代表」
青空(そら)が笑う。
「いいのいいの。てかそもそも青空(そら)さんがそんなこと思う人じゃないってのは
私が保証するから。大丈夫よ」
笑ってどこかふざけているように、でもどこか真剣に言う女性。
「ありがとうございます。あ、ライブ行くから」
「嘘?チケット買うお金あんの?」
「ない」
「でしょうね。大丈夫。チケット送るから」
「いや、悪いよ。1番良い席で頼む」
「図々しいわ」
「嘘嘘。もし本当にチケットもらえるなら1番安い席でいいよ」
「送っときますわ」
「ありがとー。じゃ、自分のペースであんま無理しないように
って言っても無理してきた人だもんね。でもくれぐれも身体壊さないようにね」
「うっす。ありがとうございます。じゃ、また」
「はい。またぁ〜」
終了ボタンを押す。「NOZOMI」という名前に、左手の人差し指、中指、親指を立てたポーズの手が4つ
人差し指と中指を中心にしたアイコンが映し出された。トーク画面に戻り
青空(そら)「急にごめんね。出てくれてありがと。身体を壊さないように頑張ってね」
と送って画面を消した。スマホをしまなや否や
「ということで。橋(きょう)!好きな食べ物言って?Say hoo!あ、できれば5つくらいほしい」
と笑顔で言った。
「え、どういうことで?」
まったくわからない橋(きょう)。
「さっきの…彼女?女性の声漏れ聞こえてきたけど」
「あー。ううん。違う違う。全然違う」
そんな否定しなくても。
「自慢の友達。それかファンかな?すごく苦労してきた子でさ。
ま、自分の好きなことだから苦労だなんて思ってないだろうけど。
でも思うようにいかなくて、でもようやく合う仲間に出会ってうまくいってるって感じ?
いやいや、違う違う。ほら、橋(きょう)の好きな食べ物!なるべくメインを張るやつ。Say!!」
ライブのコール&レスポンスのように耳に手をあてる青空(そら)。
ファン?なんか有名人なのかな
と思いながらも
「メイン張れる好きな食べ物?」
と考える。
「味噌ラーメン、オムライス、ビーフシチュー、ざる蕎麦。…海老天はメイン張れる?
ダメならカレーとかになってビーフシチューと被るけど」
「海老天メインいけるよ!
でもカレーよりビーフシチューが好きなんだね。なんか妙にリアルだわ」
「妙にリアルって。リアルだからね」
「じゃあさ?その橋(きょう)が好きな料理を5人の人が、それぞれ手間暇かけて作ってくれました。
試行錯誤して、ネットで調べたり、味見して、練習して、材料も吟味して
渾身の逸品を食べてもらおうと真心込めて作ってくれました!
さてそんな真心込もった逸品が橋(きょう)の目の前に並んでます!さて橋(きょう)はどれを食べますか!」
想像上で橋(きょう)の目の前のテーブルの上には
美味しそうな味噌ラーメン、オムライス、ビーフシチュー、ざる蕎麦、海老天が並んでいる。
「なに食べる?んん〜今はお昼食べた後だし、ざる蕎麦か海老天かな?
ま、そのときの気分で食べたいもの食べるよ」
まあ、大概の人がそうだろう。
「だよね。オレもそうすると思う。じゃあさ、こんな条件あったらどお?
どれか一品しか食べられません。選ばれなかった料理は食べることができないどころか、捨てられます。
しかも、作ってくれた方の目の前で。さあ?なにを選ぶ?」
とても厳しく、難しい質問だ。
「え!?捨てられる?え?なんで?」
「なんで?」は笑ってしまうくらい純粋な質問だがその疑問も尤(もっと)もである。
「なんでって…」
青空(そら)も純粋すぎる失礼に困る。
「いいから!どうする?」
答えが出ず、ゴリ押しする青空(そら)。
「んん〜…」
「作ってくれた本人はもちろんだけど、相談した友達とかにも知られることになる」
「なんかさらに嫌な条件出てきた」
橋(きょう)は腕を組み悩む。
「んん〜…厳しいな。全部選びたい気持ちもあるし
逆にずっと選ばず放置しておきたい気持ちもある。どっちにしろ即座には決められない」
その答えを聞き
「やっぱ橋(きょう)はいい子だな」
と言って笑顔になる青空(そら)。
「オレも一品なんて選べない。これは個人的な、オレの考えだけど
人の好意とか告白って料理に似てると思うんだよね」
と言った。青空(そら)と橋(きょう)の想像上で女子高生が廊下にいる。
「一目惚れとか優しくしてくれたとか、好きになるキッカケっていろいろある思うけど
人に「好意」を抱いて、連絡先を交換して
最初のスタンプさえ嬉しかったり、最初なにを送ろうかドキドキしたり
体育祭とか文化祭の打ち上げとかでみんなでカラオケ行ったり
打ち上げじゃなくても仲良いグループ数人で出掛けて盛り上がったりして
数日、数週間、数ヶ月。時には数年かけてその人のことを知っていって
その「好意」は「友達」としてじゃなくて「恋人」に
「その人の特別な存在に」なりたいっていう意味の「好意」だって気づく」
想像上の女子高生は好きな男の子とLIMEを交換するためにQRコードを出したら
男の子もQRコードを出していておかしくて笑ったけど、気が合うことに少し照れたり
仲良いグループ数人でカラオケに行ったりして
最終的に放課後に学校の人のあまり来ないところに呼び出した。
「成功するかしないかは置いといて、その好意を抱いている相手に自分の想いを伝える。
これが「恋愛的な好き」だとオレは思うんだよね?」
橋(きょう)はその様子が容易に想像でき、その様子が微笑ましくニコッっと笑い
「なんかラブコメみたい。想像できるわ」
青空(そら)もニコッっと笑い
「ね。いいよね。オレなんてもう懐かしいレベルだわ。で、話戻るけど、料理も似てると思うんだよね。
ほら、料理を作ってあげたい相手のことを想って
好きなもの、嫌いなものを知って、で、スーパーに食材買いに行って練習して。
食べてもらいたい人のことを想って料理したら、それなりに時間かかると思うんだよ」
照れ臭いのか、青空(そら)は視線を外しながら
「だから弟みたいに大切な橋(きょう)には「料理」はもちろんだよ?
SDGsとか関係なしに無駄にしないでほしいし
女の子からの「好意」「告白」なんかも無下にするような人にはなってほしくないんだよね」
と言った。橋(きょう)は
青空(そら)兄(にい)…やっぱカッコいいな…
と心の中で思っていた。
「やっぱ青空(そら)兄(にい)はさすがというか、うちの兄ちゃんとは違うわけだわ」
と納得し、コクコク頷く橋(きょう)。
「ん?どゆこと?」
「いや、同じ相談を兄ちゃんにもそれとなく言ってみたことがあったんだけど」
虹(なな)は自分の家のベッドの上で胡座をかき、ゲームをしながら
「モテたいの?んん〜…オレ高校んとき割と人気あったからなぁ〜…。わかんねぇや。とりま髪切れば?」
と無責任だけど、的を射ることを言ってのけた。
「って言われたんだよね」
「あぁ、あいつならそう言いそうだな。まあ現にあいつ高校んとき人気あったからなぁ〜。
後輩でもいいなって思ってる子、割といたらしいし」
「それに比べると青空(そら)兄(にい)は考えが大人だよね。なんかもう達観してるっていうか」
青空(そら)は照れて、後頭部をかく。
「そんな〜。そんなことないと思うけど〜」
「なんかもう仙人レベル?」
青空(そら)と橋(きょう)、2人の想像上で、富士山の上に、雲に乗った白い太眉の歳をとり
魔術師の持つ杖を持った青空(そら)の姿が思い浮かんでいた。
「え。それは褒めてる?」
と冷静なツッコミをしつつも
「まあ、そんな褒めてくれた後に言いづらいんだけど、これ人からの受け売りなんだよねぇ〜」
とカミングアウトした。
「え」
固まる橋(きょう)。
「え。オレの仙人返して?」
と謎発言をする橋(きょう)。
「オレの仙人って…。橋(きょう)のリュックについてるキーホルダーだったりする?」
「いい天気 能天気」グッズ
いい天気 能天気 登場キャラクターのデフォルメキーホルダー
天野 青空(そら)(仙人バージョン) 税込780円。好評発売中(嘘です)
「なんだ。青空(そら)兄(にい)の考えじゃないのか。
仙人キーホルダーは青空(そら)兄(にい)の考え?」
「キーホルダーはそうね」
「キーホルダーは可愛い気がする。いいね。
青空(そら)兄(にい)の考えじゃないなら、その素敵な考えしてるのは誰なの?」
「虹(なな)とオレの先輩の弟くんの考え。あ、電話してみる?めちゃくちゃいい子だよ?」
青空(そら)はスマホを取り出してトーク画面に入り
匠(タク)「わかるw励みになるっすよね」
という朝7:33分に来ていたメッセージに返信しつつ
青空(そら)「そうそうwコメントとか励みになるよね」
青空(そら)「急でごめんだけど、今電話できたりする?」
と送った。橋(きょう)は内心
別に電話しなくてもいいんだけどな…
と思っていた。
匠(タク)「別に大丈夫ですけど…。どうかしました?」
青空(そら)は無料通話ボタンをタップする。テテトテテトテテトテテトン。テテトテテトテテトテテトン。
「あ、もしもし」
「あ、もしもし。急にごめんね」
「いや、全然大丈夫っすけど」
「ひさしぶりに聞いたな。匠(タク)くんの声」
「たしかに。オレも青空(そら)さんの声ひさしぶりに聞きました」
「たしかにね」
盛り上がる2人。なにをしていいのかわからない橋(きょう)。
「んでさ、ちょっと話したいことー…っていうか、うん。スピーカーにしてもいいっすか」
「ん?いいっすよ?」
青空(そら)が通話画面のスピーカーONのボタンを押す。
「どうかしたんすか?」
橋(きょう)にも匠(タク)の声が聞こえるようになった。
「いやね?実は「モテたい」って相談受けて、そのときに匠(タク)くんの言葉を受け売りしたんだけど
やっぱ本人の口から、本人からの言葉のほうが重みあるかなぁ〜って思ってね?」
「モテたい?はい?」
匠(タク)の声が圧力のある声になった。
「誰ですか?そんなアホみたいな、バカみたいなこと言ってるの。
もしかして青空(そら)さんっすか?前言いましたよね?女の子、男の子に関わらず
その人のそのときの時間ってのはそのときしかないんですよ」
怒涛の口撃が始まった。
「待って待って?落ち着いて匠(タク)くん。
オレじゃないって。相談されたって言ったでしょ?カウントダウン。落ち着いて?」
そんなやり取りを聞いて
怒涛の…怖い人なのかな…。
あと「落ち着いて?」でしょ?それを言うなら「calm down」だよ青空(そら)兄(にい)。
と心の中で思う橋(きょう)。
「あぁ、すいません。すいません。あとそれを言うなら「calm down」っすよ。
ま、アンガーマネジメントで、怒りは何秒か耐えれば収まるっていいますけど」
匠(たく)が言ってくれて少しスッキリした橋(きょう)。
「あ、カムダウン?」
「ま、それはいいっす。で、どちら様が?」
と聞かれて、意を決して
「あ、自分です。自分がモテたいって青空(そら)兄(にい)…青空(そら)さんに相談しました」
と言う橋(きょう)。
「あ、…。小野田 匠(タク)です。初めまして」
「あ、初めまして。雨御(アマゴ) 橋(きょう)です」
自己紹介を終えた2人。
「あ!そうだ!橋(きょう)ね、コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)の現役高校生なのよ。オレの後輩ですぜ」
なぜか自慢げな青空(そら)。
「え」
声だけで匠が固まっているのがわかる。
「あ、すいません。なんか。あ、コーミヤの。あぁ」
「いえいえ。こちらこそなんかすいません」
なぜかペコペコする2人。
「青空(そら)さん青空(そら)さん」
小声で青空(そら)を呼ぶ匠(タク)。
「なに?」
小声で応える青空(そら)。
「なんで早く教えてくれなかったんですか」
「なにを?」
「コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)の現役高校生だって」
「なんで?」
「ヤンキーでしょ。コ○されるかもしれないじゃないですか。モテたいなんてバカなこととか言ったら」
黄葉ノ宮高校への印象が悪すぎる匠(タク)。
「いやいや。橋(きょう)はめちゃくちゃ優しい、いい子だから。ヤンキーだったらオレも怖くて無理だって。
あとコーミヤ、オレがいたときから、ヤンキーは少なかったよ?ま、ちょっとはいたけど」
と橋(きょう)がいい子だということと黄葉ノ宮高校はあまり怖くないよと訂正した青空(そら)。
「で、話戻すけどその橋(きょう)がモテたいって相談してきて、匠(タク)くんが前してくれた話をしたから
ま、オレから話すよりも本人から話してもらったほうが伝わるかなぁ〜って」
「なるほど。わかりました」
と言って匠(タク)が話し始めた。
「じゃあ、あ、これから話すのはあくまでもオレの考えだからね?そこんところよろしくお願いします」
丁寧に一言断りを入れておく匠(タク)。なぜかお辞儀をする青空(そら)と橋(きょう)。
「橋(きょう)くん?でいい?」
「はい」
「「モテたい」って思ってたら、個性的な女の子…漠然としててごめんだけど、想像して?
個性的な女の子5人から「恋愛的好意」を抱かれました。嬉しい?」
「まあ、そりゃー嬉しいですよ」
思わず口元が緩み、ニヤニヤする橋(きょう)。
「まあ嬉しいよね。ニヤニヤが伝わるよ」
思わず笑う匠(タク)。
「じゃあ、まあ、当たり前なことだけど改めて言うね?
その5人の中から付き合う女の子を1人選んでください。
“ただし”!ここからが当たり前なことだけど改めて言うことね?
1人選ぶと他4人が傷つきます。さあ、誰を選びますか」
「あぁ〜…あぁ、そうか。まあ、そうですよね。そうか」
悩む橋(きょう)。
「悩むか。青空(そら)さんの言う通り優しい人だね。悩むよね。わかる。
でもオレ個人的にはそーゆーことだと思うんだよね。「恋愛的好意」を向けられる「モテる」と
ただ「人気」なだけの「モテる」は大きく違うと思うんだよね」
「あぁ〜なるほど」
静かに納得する橋(きょう)。
「ごめんね。めんどくさくて」
「いえいえ全然。なるほどなって思いますし」
「ありがと。んでまあ、さらに個人的な話になるけど、オレマンガ家になりたくてね。
んで、まあ、描いてるんだけど、自分で生み出したキャラクターたちには幸せであってほしいのよ。
ま、これは作者さんにもよるし、作品の方向性にもよるけどね?
だけど、オレはたとえ本筋に関わらないサブのサブキャラでも愛はあって
全然本編のストーリーで描く話でもないけど、そのサブのサブキャラの設定細かく決めたりね?
たとえサブのサブキャラであっても幸せであってほしいの」
猫井戸高校2年生。片目隠れキャラ。
よく図書室にいる。ミステリーばかりを読むミステリーヲタク。
髪型も好きなミステリー作品のシリーズの女性キャラクターの髪型を意識している。
基本的に静かで大人しい性格だがミステリーの話となると目を輝かせて饒舌になる。
「あ、そうなんですね」
「そうなのよ。で、まあ、気持ち悪い話をするけど
橋(きょう)くんの人生は橋(きょう)くんが主役なわけじゃん?」
「え。あぁ、主役…主役なのかな。まあ、主役…か?」
「主役だよ?それは全然恥ずかしいことじゃないとオレは思う。
オレだってオレの人生の主役はオレだって思ってるし、青空(そら)さんの人生は青空(そら)さんが主役だし。
だって、嫌な例えだけど、橋(きょう)くんが死んだら
死んだ後の世界はあるかどうかもわからないわけじゃん?」
「あぁ〜…たしかに」
「だから、自分が生きてるからこそ今の世界を体験できてるわけだから
自分の人生の主役は自分なんだよ。自分中心で回ってるんだよ世界は、基本。
自分中心「すぎなければ」自分中心でいいと思うんだ、オレは」
一理ある。
「じゃあそんな橋(きょう)くんが主役の人生において、この5人の女の子たちはどんな存在?」
「どんな存在?…んん〜…」
腕を組み悩む橋(きょう)。
「ヒロインの1人?それとも自分に「恋愛的好意」を持っているサブキャラの1人?」
静かに考える橋(きょう)。
「オレさっきも言ったけど、マンガ家になりたくて自分でキャラ生み出してるんだよね。
主役がいてヒロインがいて2人を囲むサブキャラたちがいて。
さっき言ったことに対して矛盾が生まれるかもしれないけど
いくら自分の人生の主役は自分だからといっても、他の人にはその人本人が主役の人生があるわけなんだよ」
今まで素性も詳細もわからなかった5人の女の子たちの詳細が明かされる。
1人目 木梨 明(あかり) 黄葉ノ宮高校2年
褐色女子で太眉。明るめの茶髪ショートカット。バスケ部の次期キャプテン候補。
外の体育や体育祭、外に遊びに行くときも日焼けを気にしないため、1年のときより黒いと友達に言われる。
2人目 奏 ウィリアムズ 猫井戸高校1年
三白眼で茶髪。まつ毛も茶色。ショートカット。イギリス人の父に日本人の母の間に生まれた。
音楽が好きで暇さえあれば音楽を聴いている。声に透明感がある。
三白眼で音楽をよく聴いていて、話しかけても音楽を聴いていて無視された?とか勘違いされるし
よく「怖い」と思われがちなのだが、話し始めればめちゃくちゃフレンドリーだし
笑うと誰でもイチコロレベルの笑顔の持ち主。
3人目 木村 絵心(えこ) 紅ノ花水木女学院1年
毛先が金髪の赤髪、ウルフカット。ピアスを多く開けている。
伊達の丸メガネをかけている。ダルそうな印象を受けるがテンションは高い方。不思議な子で詳細は謎が多い。
4人目 野崎 桜愛(さくら) 桜ノ丘高等学校1年
片目が隠れる前髪の黒髪ポニーテール。勉強できるが勉強よりも本が好き。
感情を表に出すのが苦手。「桜」に「ラブ」と読む「愛」で「桜愛(さくら)」という
自分のキラキラネームが恥ずかしくて自己紹介が苦手。
5人目 源 南 黄葉ノ宮高校1年
前髪はぱっつん。触角部分も姫カットのように揃っている。金髪のロングヘアー。
ピアス多め。爪長め。大ギャル。しかし、しっかり者。学力的には頭悪いが頭良い。
家庭の事情で父親がいないが本人も家族も幸せ。母が働いている。大学生の姉がいて、7歳の双子の妹もいる。
そのため自然としっかり者になり、料理は彼女が担当している。とびきり美味しい。
「当たり前だけど、その子たちにはそれぞれご両親が考えてつけた素敵な名前があって
その子たちそれぞれに特徴があるんだよね」
木梨 明(あかり)
今現在、バスケに打ち込んでいて
プロ選手になりたいとか日本代表になりたいとかそんなことは全然考えていないが
今一緒に戦っている仲間と汗、時には涙を流しながら青春の一部をバスケに捧げる子
奏 ウィリアムズ
音楽が好きで、両親にも友達にも声が綺麗と褒められて、誰にも内緒でMyPipeで歌ってみた動画を投稿し
「え!めっちゃ声綺麗です!」とか「声好きです!」とかコメントが溢れて爆発的に人気が出て
歌手になれるって思ってたけどそんな甘くはなく、再生回数は多くても数百回。
それでも諦めきれず、歌手を夢見る子
木村 絵心(えこ)
なに考えてるかわからないとか不思議ちゃんとか言われてるけど
心の底からマンガが大好きで、自分を構成する一部にマンガは必要不可欠で
マンガ家を目指して、イラストやマンガを描いてネットに投稿しているが「絵が下手」だとか
「ストーリーがおもしろくない」などと言われ、心がぽっきり折れそうになるが
それでも自分にはマンガしかないとマンガ家を目指し、直向きに努力し続ける子
野崎 桜愛(さくら)
小説を読み続けているうちに自分が書いたお話も文庫本として出版して
小説家として生きていきたいと思うようになり、ストーリーを考え、書いて
出版社さんのコンテストに応募するもののことごとく落選し
ネットに投稿してみるが、小説を読む人が少ないのか、おもしろくないのか
そもそも読んでもらえず、でも諦めきれず、書き続ける子
源 南
家庭の事情で父親がいなく、母の手で育てられ
バイトしているとはいえ、姉は大学生、双子の妹も可愛いが2人揃って小学生。
自分も高校生だし、双子の妹もこれから中学、高校、大学といかんせんお金がかかる。
母方の祖父母もまだ働いてくれていて、生活や妹の面倒などを見てくれていて
手助けしてくれているが腰に爆弾を抱えていて
手術をしなければ歩けなくなると言われ、手術をするお金も必要。
母には「大学行って好きなこと見つけて、好きなことを仕事にしなさい」と言われており
母のその言葉に甘え、好きなことを見つけ、それに打ち込むか
やはり祖父母のため、母のため、妹たちのために大学に行かず就職するか、将来について悩んでいる子
「その子たちそれぞれに事情があって考えがあって
それぞれの夢があって努力してたり、楽しんでたりするんだよね。なんかこう聞くとさ
今までボヤァ〜ってしてた女の子たちだけど、こう顔もさ、はっきりイメージできてこない?」
「たしかに。今まではなんか、テキトーな感じのイメージだったけど
具体的に動き姿とか笑顔とかいろんな絵が浮かんできますね」
「なんかごめん。無理矢理言わせてるみたいで」
「いえいえ!全然!ちゃんと「たしかに」って思ったので」
「ありがとね。そう考えるとさ、その子にはその子の時間があって
その時間は貴重なわけじゃん?青春の時間なんて、長いようであっという間なんだから。
だから仮に自分に「恋愛的好意」がある子がこの5人だとしてもさ?
仮に告白されて、その場で返事しなかったとしよう。
その告白の返事をせず「あぁ〜オレのこと好きなんだ〜モテてる〜」って優越感に浸って
嫌な言い方だとキープしてる状態だとさ、その子の貴重な青春の時間
他のことを考えたい時間、フってくれたら、もちろん傷つくけど
他の人を好きになれるかもしれない時間、そんな限られた時間をその子から奪うことになるんだと思うんだよ」
「…なるほど」
「橋(きょう)くんマンガ読む?」
「まあ、ちょいちょいくらい?ですかね?」
「あぁ〜じゃあ、わかるかな。オレ、マンガが割と好きでさ?一般人よりは読んでると思うし
ヲタクってほどじゃないけど、家にも1万冊くらいはマンガあるのよ」
「1万!?」
充分なオタクでは?
と心の中で思う橋(きょう)。
「うん。橋(きょう)くんは読んでるかわかんないけど
ハーレムものなんかはそんなことよくあるじゃんって思わない?」
「まあ、たしかに。ハーレムでは、そうですね」
「でもさ、ハーレムもののクソ男主人公ってさ、イメージ大体、2パターンくらいじゃない?」
※「クソ男主人公」など匠(タク)の言葉が多少乱れていることをお詫び申し上げます。
しかしキャラクターへの「愛」故なのでそこはご理解願います。
ハッっとして急に画面越しに話しかけてきて
「あ!あれですよ!ハーレムものも好きなんです!読みます!うちの棚にもハーレムものあります!
ハーレムものに出てくるキャラクターたちはこのハーレムというストーリーだからこそ
作者様の頭の中で生まれたキャラクターだと思うので全然いいんです!
全然いいんですけど…あの…えぇ〜…。
あの「クソ男主人公」のイメージもあれです。私の個人的イメージなので。…すいません」
と恐らくマンガ家様に言い訳をしていた。その様子を見て
「誰に言い訳してんだろうねぇ〜」
「さあ?でも変わった人ですね」
「うん。一時期二次元への扉を探してたから。あ、今でもかな」
と青空(そら)と橋(きょう)は話をしていた。
クソ男主人公 パターン1
イケイケ1軍男子
パーカーを着ていたり、制服を着崩していたりすることが多い。基本的に陽キャラで明るい。
髪も染めていることが多い。運動部に所属していることが多い。
キャプテンじゃないことが多いがキャプテンより才能があることが多い。
モデルをしていたり、モデルにスカウトされたりする。
ピアスはシンプルに片方の耳たぶに1つ、もしくは両方の耳たぶに1つずつ。
とにかく爽やかで笑顔が輝いていたりする。汗すらも輝いている。
クソ男主人公 パターン2
インテリ賢系男子
とにかく勉強勉強の日々で女の子への接し方や話し方がわからないことが多い。
会話内容も勉強以外わからない。テストでは毎回上位常連ではあるが1位にはなれていない。
1位には毎回決まった人がいて1位を目指して頑張っていたりする。急に意味不明にモテ始める。
ヒロインたちの家庭教師や家庭教師役をまかされて
学校の図書室や図書館、ヒロインの家などで勉強を教えたりする。
家で勉強を教える場合、着替えなどのタイミングで入ってしまうなどのラッキースケベ展開もある。
メガネに関してはかけている場合も、視力は良くメガネはかけていない場合もある。
「これがクソ男主人公の2パターンね。あ!」
また橋(きょう)が画面越しに話しかけてきて
「あ!あれですよ!この「クソ男主人公」のイメージもあれです。
私の個人的イメージでして…。ハーレムも読むんです。読むんですけど…」
※長いので割愛いたします。
「次。また男主人公の2パターン」
「ほお」
と言いつつも
またクソ男主人公の2パターン?
と橋(きょう)は疑問に思っていた。
「また?って思ったでしょ?まあ聞いてよ」
鋭い。
パターン1
モテたくてモテたくて神様にお願いしたところ
神様が間違えて運命の人を100人にしてしまい、どんどん彼女を増やしている男の子
パターン2
めちゃくちゃ可愛い彼女が出来たのだが、もう1人から告白されて、その子もめちゃくちゃ可愛くて
今の”カノジョ“に「この子とも付き合いたい!」と堂々と宣言する”アホ“ボーイ
「さて、さっきのクソ男主人公2パターンと今の2パターン。なにが違うのか」
静かに考える橋(きょう)。
「クソ男主人公2パターンは女の子たちからの
「恋愛的好意」に気づいていながら明確な答えを出さずダラダラと引き伸ばし
女の子たちの貴重な時間を費やさせる。ま、気づいてない鈍感主人公パターンもあるけどね。
そして後半の2パターンは運命の人が100人いるとか
正々堂々2股、3股宣言する”アホ“ボーイはめちゃくちゃアホ。めちゃくちゃアホだけど
自分に「恋愛的好意」を抱いてくれた女の子たちを全員幸せにしたいと思う一心なの。
側から見たらめちゃくちゃなこと言ってるし、めちゃくちゃなことしてるし
めちゃくちゃアホだけど、めちゃくちゃ愛に溢れた人だと思う。
女の子の中から1人選んで他の子を傷つけて1人だけ幸せにするんじゃなくて
女の子全員を振って全員を傷つけるか、全員の告白にオーケーを出して覚悟決めて全員を幸せにするか。
ただ無駄な時間は費やさせない。後者はめちゃくちゃアホだけど、めちゃくちゃカッコいい。
だって大変よ?個性ある女の子たち、それぞれ趣味趣向も違うし
当たり前だけど自分は1人しかいないんだから、体1つで全員を幸せに
全員を満足させないといけないんだから相当の覚悟がいるからね」
「たしかに」
たしかに一理ある。
「だから、まあ、もちろん「恋愛的にモテたい」って気持ちはわかるけど
でもなんの考えも覚悟もなく、ただ「恋愛的にモテたい」ってのは
やっぱりオレは好きじゃないし、応援もできない。
人気者になる意味での「モテたい」なら応援するけどね。っていう話を
当時「モテたい」「モテたい」って言ってた青空(そら)さんに言ったんだ。ですよね?青空(そら)さん」
青空(そら)と橋(きょう)と匠(たく)の想像上にデフォルメされた
青空(そら)の顔が思い浮かんでおり、その青空(そら)の顔は目が点で
スライムのように顔が溶けており「モテたい!僕モテたいよ!女の子にチヤホヤされたい」と
アホみたいに言っている姿が容易に想像できた。
「いや?うん。まあ、この話はしてもらったけど、オレたぶんだけどモテたいとは言ってないよ?
あと想像上のオレ、めっちゃアホそうだったよ?ヨダレ垂らして顔溶けてたし」
「青空(そら)兄(にい)ならワンチャン溶けそうだよね」
と笑う橋(きょう)。
「橋(きょう)?」
少し威圧感のある声の青空(そら)。
「ごめん」
和気藹々な雰囲気である。
「まあ、こんな感じー…でしたよね?てか、こんなんでよかったんですか?」
「オッケーオッケー!オレの想定より全然良かった!ブラボー!映画ならスタンディングオベーションよ!
まあ、あまりにもアホそうなオレとかは気になったけど」
「じゃあ、これで。お疲れ様っしたぁ〜」
「お疲れ様〜。あ、オレはチェックしてるし、読んでるから、身体壊さない程度に頑張って」
「うっす。ありがとうございます。…あ!ちょい待って」
「ん?どした?」
「橋(きょう)くん、コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)の現役高校生なんだよね?」
「はい。今2年っす」
「クラスにギャルいる?」
「ギャルー…いますよ?」
「橋(ぎゃる)くんギャル好き?」
「ギャル…まあ、好きかはわかんないですけど嫌いではないですね」
「じゃあさ、ちょっと検証してほしいことがあるんだけど」
「検証?はい。できることであれば」
「もしギャルと仲良く、お近づきになることがあれば「ギャルは部屋でも男の前で平気で水着になるのか」とか
「ギャルは下着見られても平気なのか」を検証してきて」
橋(きょう)と匠(タク)の想像上には金髪ショートカット、ピアス多めのギャルが
「どお?水着似合ってるかな?♡」
とか
「やっばー。雨降ってきて、ダッシュで帰ればへーきだと思ってたけど
全然…びちゃびちゃになっちゃったね」
と制服を脱ぎ、Tシャツを捲し上げて
水着なのか下着なのかわからないものが完全に見えている状態が思い浮かんでいた。
※エロいので谷間や水着なのか下着なのかわからないものは隠してお送りいたします。
「なんなんですか。その状態。状況。どこのエロマンガですかそれ」
と笑う橋(きょう)。
「別にいいっすけどそんな状況ないと思いますよ?」
「あったらでいいから。あ、青空(そら)さんにオレのLIME送ってもらうから、よろしくね」
「うっす。わかりました」
「じゃ、橋(きょう)くん。青春を謳歌したまえ。
青空(そら)さんはまた、なにか機会があれば。あ、オレは聴いてるんで。最高です」
「やめて。照れる」
電話越しに匠(タク)が笑う。
「じゃ、また」
「ありがとうございました」
「またねぇ〜」
電話を切る青空(そら)。
「あ、そうか。公園だった」
と辺りを見回す橋(きょう)。
「わかるわかる。なんか電話すると会話に集中するのか、周りのこととか認識甘くなるよね」
「そうそう」
ほんの少し、2人の間に静寂が訪れる。
「ま、というわけよ」
どういう訳なのだろうか。
「他の人はどうでもいいよ?でも弟みたいな可愛い橋(きょう)には
無責任でダサい「モテたい」なんて思ってほしくない。あ、恋愛的な意味でのね?」
「うん」
「橋(きょう)には1人を愛して叶うならその1人から愛されてほしい。ま、理想だけどね。
両想いなんて奇跡みたいなもんだから、願い通りにはいかないかもだけど」
青空(そら)が笑う。
「そうだね」
橋(きょう)も笑う。橋(きょう)が空を見上げる。来たときの空よりもカラッっと晴れている気がした。
「よしっ!そうする!」
「お?」
「好きな人見つける。匠(タク)さんと青空(そら)兄(にい)の話聞いて「モテたい」ってダサいって思ったし
やっぱ好きな人いないのに「モテたい」はおかしいとも思ったから、まずは好きな人見つける!」
「いいぞ!よっ!青春!」
「怖いけど、ちゃんと周り見る」
と言いながら長い前髪を触る橋(きょう)。
「髪…切ろうかな」
「それ、なんか、虹(なな)の言う通りみたいで癪に障らない?」
知らぬところで「癪に触る」と言われている虹(なな)。
「はっくしょん!あ!すいません!」
話を聞いてくれている会社でくしゃみをする虹(なな)。
「たしかに」
という橋(きょう)に青空(そら)は自分の前髪を結んでいるヘアゴムを取って
「まず切らずに上げてみたら?オレの使った後でごめんだけど」
に差し出す。
「全然大丈夫。あ、Alex thunder dropsじゃん」
と言いながら受け取る橋(きょう)。
「これ、うちに忘れてった虹(なな)のだけどね」
「はっくしょん!あ!すいません!風邪ではない…はずなんです。
花粉症かな…。花粉症ですか?花粉症って急に来ます?」
さすがは営業マン。花粉症トークに引きづり込んだ虹(なな)。
「あ、兄ちゃんのなんだ」
と言いながら前髪をまとめて結ぶ橋(きょう)。
「おぉ、これは…」
「とりあえず明日これで学校行くわ」
初めて橋(きょう)の目元が見えた。
お兄ちゃんの虹(なな)そっくりのキリッっとした目に虹(なな)とは逆の目の下にある涙ぼくろ。
「ぷっ…」
橋(きょう)は青空(そら)を見て笑う。
「ははははは」
「な、なんだよ」
「青空(そら)兄(にい)前髪ヤバイ」
青空(そら)の前髪は結んでいたから癖付いたのだろう。ピョーンッっと逆立っていた。
青空(そら)は橋(きょう)のその笑顔を見て、青空(そら)は昔会った子どもの頃の橋(きょう)を思い出した。
笑顔変わってないじゃん
ホッっとする青空(そら)。
「そうね。とりあえずそれで学校行って味噌?」
橋(きょう)はリュックを持って立ち上がる。
「今日は学校は?」
「サボる」
「おぉおぉ。オレの前で堂々宣言」
「兄ちゃんの家行って寝る」
「さすがに実家には帰れないか」
「ま、帰れるけどね。2人ともまだ帰ってないだろうし。
でも万が一ってこともあるし、夜ご飯も作らないとだから」
「あ、なに?虹(なな)の夜、橋(きょう)が作ってんだ?」
「だよ?」
「そうか〜…。今度食べに行こうかな?」
「おいでよ!3人でご飯食べよ!」
嬉しそうに満面の笑顔の橋(きょう)。
「うん。ま、解決した?みたいで良かったわ」
「うん!ありがとね!青空(そら)兄(にい)に相談して良かったわ!」
「こちらこそ。ひさしぶりに会えたし、オレのこと頼ってくれて嬉しかったわ。
じゃ、またLIMEするわ」
「うん!またね!青空(そら)兄(にい)!」
歩き出す橋(きょう)。微笑ましくその背中を見守る青空(そら)。
好きな人かぁ〜…中2以来いないかもな…
と思いながら歩く橋(きょう)。青空(そら)と橋(きょう)はカラッっとした青空を見上げ
眩しいくらい晴れたじゃん
と思った。そして青空(そら)はもう1つ思った。
あの顔であのスタイルで料理上手?
「あぁは言ったものの、ありゃモテるかもしれん」