テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
海の紅月くらげさん
「ごちそうさま」
「っみ、実里くん!!」
まさか隠された袖の向こう側で、私の口の端についた水飴を実里くんがぺろりと舐めとったなんて誰も気づきもしなかったはず。
「顔真っ赤だよ、かわいい 」
「そ、そういうことダメッ!」
ああもう、心臓に悪い。口の端っこ舐めるなんて……。実里くんは上機嫌で、怒る気力を失ってしまう。
恥ずかしさを隠すように私があんず飴を頬張った。
「まーしろーん! 俺もあんず飴を買ってきたぞ。特別にもなかの部分をプレゼントだ!」
「え、いりません」
それ、あんず飴の飴がちょこっとついただけの虚しい部分ですよね。
武蔵先輩は顔を顰め首を傾げる。どうして受け取らないのだと不思議そうだった。
「自分がもなか好きじゃないだけでしょ」
呆れたように実里くんが言う。不服そうに武蔵先輩は、もなかを口に運んで食べ始める。苦手なものを私に押し付けようとしていたらしい。
「どうせ俺の様子見に来たんでしょ」
実里くんがぼそりと呟く。
「え?」
「心配なんでしょ。夜だから」
空を見上げればいつの間にか濃紺に染まっている。お祭りの明るさで気づかなかった。
そっか、武蔵先輩それで急にこっちにきて実里くんの様子をうかがってたんだ。
「馬鹿みたい」
皮肉たっぷりに言っている実里くんの表情は少し柔らかかった。そして、私と目が合うと恥ずかしそうに視線を落とした。
「ひっ!?」
頬にひんやりと濡れたものが当たり、思わず肩が跳ねる。
「ごめん。驚かせちゃったね」
振り返ると潤が立っていた。頬を手で覆いながら潤の手に視線を向けると、二本のラムネを持っている。
そっかあれが頬に当てられたんだ。びっくりした……。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!