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「そーゆう『私は貴方がどうでもいい』って意思表示はダメージ大きいから聞きたくないなあ」
「ほお。それで私を起こしてまで話したい内容は妹さんのこと? 鍵を返してもらったならもう来ないんだし私は気にしないよ」
「それもなんだけど、冷蔵庫の中にある野菜のことなんだけど」
野菜。
そう言われ、閉店間際のスーパーで色々買ったことを思い出した。
素材だけあっても、私が料理ができる人間と言うアピールにはならない。
「冷蔵庫の材料は別に貴方に作ってあげたくて買ったものじゃない。ただ私も料理ができるってアピールのために二人分買っただけよ」
変に意識されると困るのでさきにはっきり言っておこうと発言したつもりが、みるみる彼の首が真っ赤になり、ネクタイから上の顔をつい覗いてしまった。
彼の顔をまじまじと見ることなんて絶対にないと思っていたのに。
見上げた彼の顔は、茹でタコみたいに真っ赤。
耳も額も、分かりやすいぐらい赤い。
なんだろう。怖いという先入観はなく、この真っ赤の理由が知りたくて見てしまう。
「なに?」
「いや、その……野菜は俺の祖母が送ってくれるから買わなくていいよって伝えたかっただけで。――俺の分まで買ってくれてるなんて思ってもなかったから」
「だから赤くなってるの?」
「ちょっと待って。すげえ熱い」
ネクタイを緩めた彼は、自分の顔を両手でパタパタ仰ぎ、目を閉じて落ち着かせようとしている。
「……私の料理、食べてみたい?」
落ち着かせようとしていたくせに、口を歪ませ観念したように頷く。
「二人分の食材見て、期待しちゃった」
「……」
この人、まるで少年みたい。大人っぽい雰囲気とは裏腹に年相応か、または少し考え方は幼いのか。
無垢なのか馬鹿なのか。
「あのね、私、夜が遅い分朝は出勤が遅いんだよね」
「ああ、それなのに朝ご飯付き合わせて悪いなって」
「だから、朝ご飯も私が作るよ。夜はほぼいないみたいだけど」
朝は比較的ゆっくりだから、疲れて帰ってきた彼よりは私の方が作りやすいんじゃないかな。
単純明快。ただそう思っただけのこと。
「いいの? 好きでもない俺に時間使うのいやじゃない?」
「強引に結婚まで持ち込んだ人が、なんで逆にご飯だけは遠慮するの。私は別にいいよ。料理が好きなら、やりたいときに作ればいいけど」
耳まで真っ赤だった彼は、観念するように深く息を吐く。
「うん。そうだった。華怜さんは昔からそんな人だったよね。うん」
「何」
「じゃあお願いしようかなって」
うん、うんと自分を納得させているのか、落ち着かせているのか、不思議だ。
顔を覗き込むと、逸らされた。
「自分の設定を忘れてるぞ。男性恐怖症なんだろ」
「設定じゃないけど、でも一矢くんは最初から怖くなかった気がする」
「じゃあ、着替えるから見るな」
真っ赤な彼を私は覗き込む、彼はそらす。
くるくると廊下で回っている私たちは滑稽だろう。
「そんなに見たいなら、脱ぐ。下着だけになるぞ!」
「それは嫌だな。イケメンでも脛毛は汚い」
「……あのなあ」
髪を掻き上げながら、ふとまた顔を真っ赤にしていた。
「タコとか明太子よりも真っ赤」
「……華怜さんに容姿を褒められると思っていなかったから」
あまりにも可愛い反応に、ちょっと驚いた。
なので私はとりあえず「さん付けは背中が痒くなるので、呼び捨てでどうぞ」と誤魔化した。
砂原 紗藍
#再会