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遠野吠side
”兄ちゃんはいつも正しい”
そして、昔の俺はいつも比べられてばかりだった
俺の兄ちゃん、遠野久光は完璧な人間だった
久光兄ちゃんは何でもできる
例えば、走れば誰よりも速かったし、テストではいつもNo.1だった
それなのに、俺は……
走れば転ぶし、テストではいつも50点以下だった
そして、喧嘩を毎日していた
すると、お母さんは
「なんで、こんな簡単なこともできないの!!久光はできているのに!!」
そういって俺を責めた
……そうだよな、俺は”出来損ない”だよな
ごめんなさい、お母さん
こんな出来損ないで…
ごめんなさい、久光兄ちゃん
兄ちゃんの足をいつも引っ張って…
※※※
そして、月日が流れ、俺はゴジュウジャーになった
ゴジュウジャーになって、仲間もできた
こんなに楽しいのに…俺はまだ過去を引きづっている
…でも、そんなことは自分のせいなので、仲間の前では弱音を吐かない
そんなことをしてしまったら、俺はまた我慢ができない出来損ないに戻ってしまうと思ったから…
「大丈夫?吠君」
「ぼーっとしているけど…」
「え…あ、あぁ」
「なんでもねぇ」
急に陸王に話しかけられた
俺が陸王の問いかけに答えると、陸王は少し俺を見つめて考え出した
「…困ったことがあったら、僕を頼っていいからね」
「…!」
…陸王はすごいな、そんなことまでわかるのか
でも、俺は陸王に頼らない
俺だけの問題、頼れば人を巻き込むことになる
そんなことしたら出来損ないだ
でも、一応返事はしておいた
「…あぁ」
すると、俺は気づいた
どうやら陸王も気づいたみたいだ
「…吠君」
「…あぁ」
「「ノーマンが出た」」
※※※
俺と陸王はノーマンがいる場所に行った
するともうノーマンを倒していた
俺達が来た意味ないな、なんて思っていると…
「元気にしてるかい?吠」
俺は少し動揺した
俺の目の前には、久光兄ちゃん…いや、クオンが居た
「クオン…」
「…昔みたいに兄ちゃんとは呼んでくれないのかい?」
クオンはそう言うが、俺は無視した
今は…今だけはクオンに会いたくなかった
最悪だ、よりにもよって過去を思い出してしまった日に…
こんな日にクオンに会ったら、俺は…
出来損ないに見えてしまう……
「……、」
「どうした?吠」
「……あぁ、なるほど」
「過去を思い出してしまったんだな」
「…!」
…勘が鋭いな
流石としか言いようがない
それに比べて俺は…
「過去?どういうこと?」
悪い、陸王…
「何があったのだ?遠野」
竜義…
「吠っち?大丈夫か?」
禽次郎…
「ちょっと、聞いてるの?」
角乃…
「…みんな」
ごめん、そう言おうとした時
クオンは俺の声に被せて
「”出来損ない”の吠」
「ッ…」
「え…?」
みんなが声を揃えて驚く
そう…だよな、俺が出来損ないって聞いてガッカリだよな…
「昔っからそうだよねぇ?」
「走れば転ぶ、テストの点数は悪い、毎日喧嘩」
「いっつも僕と比べられてたもんね?」
「ぇ…ぁ……」
呼吸が荒くなる
何も考えられなくなる
全てが…嫌になる……
「…は、ぁッ」
「…!?吠君!大丈夫!?」
仲間の声にも反応できないなんて、俺は…
「吠も気づいているだろう?」
…!兄ちゃん、やめてくれ…
それだけは…言わないでくれ……
兄ちゃんの口からは聞きたくない……
「お前は……」
い…嫌だ……
「今も出来損ないだって」
「……ッッ!」
「兄、ちゃん……」
やっぱり俺は、昔から変わんなかったんだな
無愛想で、喧嘩ばっかりで、金がない
そして、出来損ないで、愚図
兄ちゃんの言ってることはいつも正しい
だから、今回のも正しい
俺は膝から崩れ落ちた
すると、自然に目から水が落ちてきて
「…グスッ」
「可哀想にねぇ、吠」
「兄ちゃんが助けてあげるよ」
「……ぇ?」
兄ちゃんが…?出来損ないの俺を……?
助けて……くれる………?
「遠野!耳を貸すな!!」
「奴は間違っている!!」
「遠野、お前は出来損ないなんかじゃない!」
竜義……ありがとうな……
でも、俺は出来損ないだ
今までも、これからも……
「吠君!僕達を信じて!」
「信、じる……?」
そんなこと……
「そんなこと出来るわけないだろう?吠」
「さぁ、兄ちゃんの所に帰っておいで」
「お前なら正しい選択が出来るはずだ」
「……」
なら……俺は……
「吠っち!」
俺の声に被せて、禽次郎が言ってきた
「この世に出来損ないなんて居ない!」
「そうそう!ハイクラスでラグジュアリーな私の言うことを信じて!」
「みん、な……」
俺、俺は…クオンなんかに……
「……殺すしかないか」
クオンがそう言った途端、俺の後ろにいた陸王、竜義、禽次郎、角乃が吹き飛ばされた
「え?…」
「……」
みんな…?なんで喋らないんだ?
なんで倒れているんだ?
兄ちゃんはなんで銃を持ってるの?
……あぁ、そうか
俺が出来損ないの愚図だからか
「さぁ、吠…行こうか」
「…………………………………あぁ」
出来損ないの俺はきっとみんなの足でまといになる
それなら俺は居ない方がいいよな
「悪いな、お前らのことは忘れねぇから」
みんなありがとう
そしてじゃぁな
また会う日はもうこないだろう
そして、俺とクオンはどこかへ行った
仲間が起きるともう俺達は居なくなっており、みんな悔しがった
「くそっ……!」
「吠、君…」
「……吠っち」
「!ねぇ、見て」
角乃が指を指した方をみんなが見る
吠を探す唯一の手がかりは……
吠の涙だった
END