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若き覇王に、甘くときめく恋を

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若き覇王に、甘くときめく恋を

58 - 第三章 ときめきの甘い恋を、あなたに EP.1「貴仁さんとの初デート」⑮

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2025年01月27日

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「では、私から投げよう」


彼が言い、飲んでいたジンベースのギムレットをコーナーそばに据えられた小さな丸テーブルへ置くと、ダーツを構えた。


真っ直ぐに的を見つめスラリと立つ姿が、さすがに様になっていて、つい見とれてしまう。


彼のしなやかな指先からヒュンッと矢が放たれると、真ん中の赤い一点を目がけ飛んで行き、見事に命中した。


周りの人たちからも「おおー……!」と感嘆の声が上がり、私も「すごいですね!」と手を叩いた。


「そんなに褒められると、照れるな」


気恥ずかしそうに言いながら、彼が次の矢を手に取る。


投げられる瞬間、軽やかに腕がしなる仕草さえもスマートに決まっていて、傍らで見ているだけで胸がドキドキと高鳴ってくる。


息を呑んで見守る中、続けざまに投げられたダーツは、全てが中心を外すことなく刺さって、その腕前に驚かされた。


「次は、君の番だ」


あれほどの完璧さを見せられた後では、やったこともないし投げにくくてとためらっていると、「……こうするんだ」と、彼が後ろから片手で私の腰を抱き、矢を持った手をもう一方の手で引き寄せた。


背中に厚みのある胸板が密着して、鼓動が否応もなく早まる。


「こちらの、ダーツを構えた手と同じ方の足を、少し前に出すといい」


言われるままに、片足を踏み出す。


「握った手を、こうしてやや引いて……」


手首がふっと掴まれ、ダーツの先を少しだけ上向きにさせられる。


「そうして的を狙い、指を離して投げるんだ」


「は、はい……」


丁寧に教えてもらったおかげもあり、的にはなんとか当たったけれど……。……耳元に吹き込まれる彼の低めな声と吐息は、あまりに心臓に悪くて……。


それに……、たぶん貴仁さんの方には自覚はないんだろうけれど、腰に回された手だけではなく、その唇さえもくっつきそうな程に距離が近すぎて、心臓の音はどんどん加速していく一方だった。


当然のことながら、集中力に欠けた私のダーツはブレまくって、ゲームは彼の圧勝で終わることとなった──。


「貴仁さんが、こんなにダーツがうまいだなんて……。……それに、ダーツをしている時のあなたが、とってもカッコよくて……」


まだ後ろから抱かれたままのかっこうで、照れて赤くなりつつ話した。


「ありがとう。君にそう思ってもらえるのが、一番うれしい」


バックから両腕でさらに抱き寄せられ、耳のそばで密やかに告げられると、一気に体感温度が高まって、顔はますます真っ赤になった。


「……あの、それと貴仁さん、もうそろそろ離してもらっても……」


体温がふつふつと上がりまくっていて、これ以上抱かれてたら、それこそ沸騰でもしてしまいそうで、こそばゆい思いでぼそぼそと口に出した。


「あっ……と、すまない。気がつかなかった」


私にフォームを教えることに徹していて、密着していたことに本当に気づいていなかったようで、彼がパッと腕を離した。


「少し、酔っていたらしい。君に、くっつき過ぎていた……悪いな」


「そんな、謝らないでください。悪いことなんて、ちっとも……」


そこまで話して、彼の肩へ両手を乗せ、少しだけつま先立ちになった。


「……くっつき過ぎは、ちょっと恥ずかしいけど、大歓迎なので」


そうして耳元へ、本音をそっと囁きかけると、彼の耳が仄かに熱を帯びたのが、微かに触れた唇から伝わったのがわかった。

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