テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「第三章 赤月の巨影」 ―プロローグ―
赤月が、ついに夜空を支配しはじめていた。
昨日まで遠くに見えていたその輪郭は、今や空のほとんどを覆い、血のような光を放っている。
海も砂漠も森も、その赤い光に染まり、すべてがどこか不吉な色をしていた。
星舟の操縦席で、セレスティアは無言のまま計器を見つめていた。
指先がわずかに震えている。
あなたが声をかけようとしたその時――
警告音が甲高く鳴り響いた。
「……来た」
セレスティアの声は低く、鋭い。
前方の星雲の向こう、光のない闇が渦巻き、そこから何かが現れようとしていた。
最初に見えたのは、銀色の指だった。
それは人間のものよりもはるかに長く、冷たい光を放っている。
やがて腕、肩、そして顔――
闇を割って現れたのは、全長百メートルを超える銀色の巨人だった。
無数の赤い結晶が体中に埋め込まれ、まるで鎧のように輝いている。
巨人は一歩、宇宙空間に踏み出した。
その足の下で、砕けた小惑星が粉々に散る。
やがて、赤月の光を反射させながら、ゆっくりと右手をあなたたちに向けた。
「……迎えが来たわね」
セレスティアは立ち上がり、背中に星の翼を展開した。
その動きは覚悟に満ちていたが、どこか懐かしさのような影が混じっていた。
「行くわよ。あれは……私とお前、両方の過去に繋がってる」