ゆずきと付き合い初めて1ヶ月が経った。マナとは一切連絡は取っていなかった。でも、ゆずきは口には出さないけど、心配と不安でイッパイだったようだ。そんなゆずきを見ていると胸が傷んだ。俺の〝大丈夫だから〟という言葉は、きっとゆずきの中では何も満たされないし、心配も不安も取り除いてあげることは出来ないのかもしれない。だから言葉ではなく、俺がいかにゆずきを好きで大切に想っているのかを普段の生活の中で見せてあげなければ、きっとゆずきを安心させられないと思った。だから、時間の許す限り俺はゆずきと時間を共に過ごした。また、不安がらないように、いつでも俺を近くに感じていられるように小まめにメールや連絡をするようにはしてあげていた。
「ねぇ圭太、今日の夜空いてる?」
「特に仕事もたまっていないし、定時で上がれると思う」
「そっか、それなら19時に東京プリンスホテルに来て! パーティーに呼ばれてるの」
「何のパーティーだよ?」
「詳しいことはわからないけど、友達に招待されたの。食事もお酒も出るから行こうよ」
「そうだな――わかった。たまにはそういうのもいいかもな」
「ありがとう、楽しみにしてるね」
「ゆずき――」
「なに?」
「いや、何でもない」
楽しみと言っていた、ゆずきは、どこか笑顔を取り繕っているように見えた。気のせいだったのか――。
その日は残業もなく定時で職場をあとにすると、電車を乗り継いで約束の場所に向かった。そして、ホテルの目の前まで来ると、ゆずきが入り口で俺に向かって小さく手を振りながら出迎えてくれた。
「待った?」
「うぅん、私もさっき来たところ。それより早く会場に入ろう」
「あぁ――それより、何のパーティーなんだ?」
「世良さんが経営するレストランのオープン記念パーティーなの」
「世良さんの――」
きっとマナも来ているはずだ。マナに会える嬉しさはあるけど、俺とマナが会って話をしてる姿をゆずきが見て悲しい思いをさせる訳にはいかない。でも、パーティーに来れば、嫌でも俺とマナが接触するのはわかっていたハズだ。それなのにどうして、俺とマナを引き合わせるようなことをわざわざしたんだ。まさか、ゆずきは敢えて俺とマナを会わせて俺を試そうとしているのか――。そんなことを考えながら歩いていると会場の前まで来ていた。受付を済ませて中に入るとウエルカムドリンクがあったのでスパークリングワインを手に取った。
それから間もなくして、パーティーは始まった。初めに、このパーティーの主役の世良さんが登場して挨拶をしていた。それが終わると、世良さんの音頭で乾杯が行われた。そして招待された客人たちは、各々食事をしながら会話を楽しんでいた。前方のステージを見ると、世良さんが客人に挨拶をしに回っていた。マナも一緒だった。15分くらいゆずきと食事を楽しんでいると、世良さんとマナが俺らのもとにやって来た。2人の様子はずっと目で追っていたのでいつ来るのかはわかっていた。
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