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「初めまして、私がここのメイド長を務める羽川 茉莉也です」
「初めまして、来栖 侑那です。よろしくお願い致します」
「まあ、挨拶をそれくらいにしましょう。軽く上澤家の使用人たちについて話しておきます。今現在住み込みで働いているのは上澤家の使用人統括長の如月さん、メイドの私、矢中さん、門真さん、運転手を務める私の夫、それから、パティシエの高間さん、庭師の三条さんに料理人の梶谷さん、関根さん、光井さんの十人で、貴方を入れたら十一人になります。後は、通いの使用人や運転手が数人いるわ。この広い屋敷にメイドは三人。やることは沢山あって、正直あまり教えている時間が取れないの。貴方、こういった経験は?」
「家事をこなすくらいしか」
「そう……まあ、家事が一通り出来るなら大丈夫ね。それに貴方は坊っちゃん専属のメイドだから、私たちと仕事内容は多少異なるわ。主に如月さんの指示を仰ぐことになるから、そのつもりでね。この後も早速如月さんのところへ行って指示を貰って。彼はこの通りを真っ直ぐ行って突き当りを右に曲がった執務室に居るから」
「は、はい……」
「とにかく、すぐに辞めないでもらえると有り難いわ、若い子はすぐに辞めてしまうから。頑張ってね、来栖さん」
それだけ言うと、羽川さんは自分の持ち場へ戻って行ってしまったので、私は言われた通り如月さんが居るという執務室へと向かって行った。
「如月さん、来栖です」
「お入り下さい」
執務室前に着いた私はノックをして声を掛けると中へ入るよう言われたので、静かにドアを開けて中に入る。
「羽川さんに、如月さんから指示を仰ぐように言われたのですが……」
「彼女からはどのような話を聞きましたか?」
「住み込みで働いている方の名前くらいは」
「そうですか。まあ、皆それぞれの仕事をこなすので手一杯なので、話す機会はなかなか無いかと思いますが、顔を合わせたら自己紹介くらいは済ませておいてくださいね」
「分かりました」
「それでは、早速来栖さんには仕事に取り掛かっていただきましょう。付いてきて下さい」
「は、はい」
席を立った如月さんが自分に付いてくるよう言ってきたので、私は返事をして彼の後を追いかけた。
辿り着いた先は厨房で、中では料理人の方々の他にパティシエの方が一人、黙々と作業をこなしていた。
「高間さん、少し良いですか?」
「如月さん、どうかしましたか?」
「こちら、本日より巴様専属メイドとなった来栖さんです。お菓子は彼女に運ばせてください」
「分かりました。初めまして、僕は上澤家専属のパティシエをしている高間 利久。よろしくね、来栖さん」
「来栖 侑那です! こちらこそ、よろしくお願い致します!」
「それでは来栖さん、早速高間さんからお菓子の説明を受けて、それを巴様の部屋まで運んでください。食べ終わるまで、ドアの側に立って待っているように。終わったら片付けをして部屋を出て、また私のところへ来てください。部屋を出る前に巴様から何かを言い付けられた場合は、その用事を済ませてから来るように」
「分かりました」
私を厨房に残して如月さんは出て行ってしまったので、ひとまず高間さんからの説明を受けることにした。
「大変だね、巴様の専属なんて」
「やっぱり、そうなんでしょうか?」
「うーん、まあ、僕が来てからもう五人くらい変わってるからね……」
「そんなに!?」
「ここ最近は特に、長続きしないんだよ……巴様、言い方も結構きついところがあるから、耐えられないんだろうね」
「そうなんですね……」
「だから、最近は僕が直接お菓子を届けていたから、その役を引き受けてもらえるのは物凄く助かるよ。巴様は甘い物が大好きで、一日三回は必ず甘い物を届けなくちゃならなくてね、運ぶ役もやっていると、なかなか集中して作る作業に取り掛かれなくて」
「そうなんですか、それは大変でしたね。私はすぐに辞めるつもりは無いので、高間さんは今日からお菓子作りに専念してくださいね!」
「はは、有り難う。頼もしいよ。それじゃあ、早速説明するね」
「はい!」
羽川さんから紹介された住み込みの使用人たちは皆私より年齢が上の方ばかりだと聞かされていたから不安もあったけれど、中でも高間さんは年齢が割と近いみたいで話しやすく、すぐに打ち解けられそうで安心した。