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「……いいでしょう。リムル顧問。では、そこの少年――デンジ君の管理は、あなたにお任せします」
マキマはそう言うと、同行していた一人の青年を呼び寄せた。
「早川君。君はリムル顧問の補佐として、彼らの生活をサポートしてあげて。……今日から、君の家で彼らと同居してもらうわ」
「えっ……? 俺の家で、ですか?」
呼ばれた青年――早川アキは、怪訝そうな顔でリムルと、薄汚れたデンジを見つめた。
「マキマさん、この金髪のガキはともかく、この……リムル顧問、というのは?」
「特別顧問よ。話せば長くなるけれど……とにかく、閣議決定されたことなの。いいわね?」
「……了解しました」
アキは納得いかない様子だったが、憧れのマキマの命令には逆らえなかった。
こうして、リムル・デンジ・アキの三人は、アキのマンションへと向かうことになった。
【早川アキのマンションにて】
「おい、ここが今日から俺の家か! すげえ、トイレがあるぞ!」
デンジが土足で上がり込み、はしゃぎまわる。
「おい、勝手に上がるな! まずは風呂に入れ。お前、死ぬほど臭いぞ」
アキは眉間にしわを寄せ、デンジを突き放した。アキにとって、デンジは「マキマさんに拾われただけの正体不明のガキ」でしかない。
「おい、なんだよお前! 偉そうに……」
デンジが食ってかかろうとした瞬間、リムルが二人の間に割って入った。
「まあまあ、二人とも落ち着けって。アキ、こいつはデンジ。悪い奴じゃないんだ、色々あって腹が減ってるだけなんだよ」
「顧問……。あんたも、馴れ馴れしく俺の名前を呼ばないでください。大体、あんたは何者なんですか」
アキの冷たい視線がリムルに刺さる。アキからすれば、リムルもデンジも、自分の平和な生活をかき乱す「不審者」でしかない。
『報告。個体名:早川アキの不信感を確認。……マスター、これ以上の険悪な雰囲気は、今後の効率的な救済の妨げになります。精神干渉は行わず、「胃袋」への直接的なアプローチを推奨します』
(「……だよな。シエルさん、出番だ!」)
「アキ、そんなに怒るなよ。ほら、手土産だ」
リムルが何もない空間から、アツアツの「特製テンペスト・カツ丼」を三つ取り出した。
「な……!? どこから出したんだ、それを……」
アキが絶句する。一方、食欲に勝てないデンジは、すでにカツ丼に食らいついていた。
「うめえええ!! アキ、お前も食えよ! これ、今まで食ったもんの中で一番うめえぞ!」
「……毒なんて入ってないぞ? ほら、冷める前に」
リムルに促され、アキは渋々、一口だけカツを口に運んだ。
「……!!」
その瞬間、アキの目が見開かれた。
(なんだこの美味さは……。それだけじゃない、さっきまでの倦怠感が、まるで魔法みたいに消えていく……)
『報告。食事に「超速再生薬(フルポーション)」の成分を微量配合。早川アキの体内組織の修復を開始しました。……これより、彼らの「心の距離」の短縮フェーズへ移行します』
シエルさんの計算通り、カツ丼の圧倒的な美味さを前に、アキの警戒心は(少しだけ)和らいでいく。
そこに、さらなる混乱の種がやってくる。
玄関のドアが、凄まじい勢いで蹴破られた。
「ワシの降臨じゃあ!! どけどけ人間ども! 血を寄越せ――!!」
血の魔人・パワーの乱入である。