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15 - 第15話*演技派彼氏と雨の記憶*3

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2025年07月04日

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――そう、メリット。

彼が提案した、それは。


『航平は人の女が好きだよ』

『だから君にとっても悪い話じゃないと思う』


そんな、内容だったわけで。


「あ。 じゃねぇぞ、天野さん。あいつは今でさえ売れてイケメンだの人気ミュージシャンだの言われてるけど、根はただの女好きのしょうもねぇ奴だぞ。俺が言うのもなんだが」

「……あ、はい。 そうみたいですね」


肩をガシッと掴まれて軽く前後に揺さぶられる。


「あ、はい。 そうみたいですね。 じゃないんだよ天野さん。いいのか? あんた下手すりゃ毎日浮気されるぞ? 」

「ま、毎日って、そんな」


まさか暇なんですか、あの人? とは言い返せない雰囲気だ。


眉間にしわを寄せ、ジッと間近で見つめられ。 航平の黒い瞳の中に、柚の姿が見える。

近すぎる。

こんなの正直頭が回らない。


心配をしてくれている。

という事実だけがストン、と心に届き暖かくなって。



「て、店長、あの、それなんですが」


口が緩んでしまいそうなのを我慢しながら声を絞り出すのと、ほぼ同時。


それは昨日の繰り返しのように。

カラン、と店の入り口から開かれ、聞こえる鈴の音。


「あ、やっぱり、まだいたんだ」


当たり前のように自然な空気を醸し出し、扉を開けた、その人物が顔を出す。


「え!? え、あれ、優陽さん、当分忙しいんじゃ……!?」


目が合うと、彼は身につけていたサングラスとマスクを取って、嬉しそうに微笑んだ。


「ああ、うん、まあ。 そうなんだけとちょっと色々あってね」


強風で乱れた髪をかき上げながら店の奥へと進んでくる優陽。


オーバーサイズの黒いパーカー。 そしてジーンズ生地のスキニーとスニーカー。

例えば柚が着てみても、何の特徴も放たない、言わば無難な服装。

それなのに。

ひとつひとつの動作が、いちいち色気を放つのは……やっぱり人気者なだけあるというか。


「あと、ほら今日天気も悪いし。君の家駅から遠いでしょ? 心配だから、来ちゃった」

「え……?」


ニコニコと微笑み続けながら、柚と航平が作業するキッチンの前……カウンターにやってきてドサっと、笑顔とは裏腹。

気怠そうに席に着いたのだ。


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