朝になり、翔太がベッドで目を覚ます
「おはよう、涼太…」
大きく伸びて目を擦る姿は、いつもの翔太そのもので…
「翔太?」
思わず、宮舘はそう聞いた
「そうだけど?」
不思議そうに見つめた翔太が、そう答えた
「俺以外の何に見える?」
「いや…。そういう話じゃ無いんだけど…」
「…?朝から何?夢の話?」
「夢?……夢なのかなぁ…?」
本当に夢なら良かったが…上に乗られた確かな記憶
「翔太…【ショウタ】って知ってる?」
「俺?」
「だから、翔太じゃなく【ショウタ】なの」
「ショウタ?」
それは、勝手に涼太が付けた
同じ【しょうた】は呼びにくい…
同じ読みでもアクセントを付ける場所を変える事で、違う名前にちゃんと気聞こえる
【翔太】は翔太で…【ショウタ】が昔、事務所でJr.の教育係をして…後輩に怖がられていた頃の呼び方だ…
「何か、その呼び方懐かしい…」
「本当に、何も知らないの?」
「だから、両方俺だろう?」
今だ理解していない渡辺に
「とりあえず、飯食いながら説明するよ…。翔太も顔、洗っておいで…」
そう言った宮舘は、部屋着に着替え
キッチンへと去って行った…
「………」
残された渡辺は、ベッドの上で悩んでいた…
『涼太は何を言っている?』
その時…
ほんの少し、頭の奥で…誰かが自分を呼んだような気がした…
「は?俺が二重人格?」
涼太と同棲して、ちゃんと朝食を摂る様になってから…もうどれ位、経つだろう…
不健康な暮らしぶりを見兼ねた宮舘が、食生活から見直そうと…
俺に、こうして朝食を作るようになった
掃除、洗濯、食事の支度…
食事は宮舘の担当で…涼太が言うには【1人分も2人分も、作る分には変わらない】と言う
おかげで、健康的にはなって来たが…最初は食べた後、胃が重くて動きづらい気がしていた…
しかし慣れてくると、それも気にならなくなって来たが
今度は食後の眠気が気に掛かる…
「そう。昨日の深夜…ショウタって言う奴が現れてさ…。俺の上に乗って来たの」
「涼太の上に?」
そこで宮舘は、ふと気づく…
今重要なのは、そこでは無い…
「ねぇ、上に乗られて…何されたの?」
しかし翔太は逃さない…
「あの…【しよう…】って言われて…」
「するって何を…?」
勿論、上に乗られててする事と言えば…喧嘩以外は、アレしか無い…
「涼太…ショウタと、しちゃったの?」
「いやいや!ちゃんと気付いて、止めましたよ…」
何故か敬語になったのにも気付いておらず…
浮気の弁明の様になって来た
「それで…そのショウタは、涼太を誘いに出て来たの?」
「それが、俺にも分からなくて…。それからすぐに眠っちゃって…朝起きたら翔太だった…」
翔太に話を聞くつもりが、宮舘の尋問の様になっている
「何で、その場で聞かなかったの?」
「だって、翔太に聞けって言われたし…」
「それを涼太は信じた訳ね…」
どうも宮舘は渡辺には甘い…同棲してから尚更甘く…
こうして詰められると、言い返せない
「ごめん。今度、ショウタに聞いとく…」
「今度って、ショウタ…また来るの?」
「それは、俺にも分からないけど…。全部見てるぞって、俺には言ってた…」
確かに身体が同じなら、あり得るが…
これは厄介な事になって来た…
宮舘の言葉を、そっくりそのまま信じるならば…これは自分にとっても、面倒だ
「はぁ…」
渡辺は味噌汁を啜り、目の前の席で恐縮している宮舘を見た






