テラーノベル
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部屋へ向かう途中、まだ開いていた売店でつまみとご当地ワインなども買いたした。
部屋へ戻ると、さっそく缶のプルタブを引き抜いて乾杯し、静かな晩酌をはじめる。
「なんかさぁ……」
「んー? どうしたん?」
「いや、このままずっとここにいたいなぁ、とか思ってさ」
「っ、またそうやってかわいいこと言うて!」
「だって、本当に幸せすぎて……」
「俺も幸せや、じゅう、一緒に北海道来てくれてほんまにありがとうな?」
「俺の方こそ、こんな素敵なところに誘ってくれてありがとう」
グラスを重ねながら、ふたりで柔らかく笑い合う。
「あと、……さっき、色々と話してくれてありがとうな?」
しゅんの声のトーンが、優しく僕を包み込む。
「うん……。でも、話した後もこうやってしゅんが何も変わらずに接してくれて、本当に安心した」
「当たり前やん……俺はじゅうの過去で、今のじゅうを否定する事は絶対しないし、気持ちは一生変わらんよ。いや、むしろ話してくれたことで、もっともっと、大切にしたいって思ったかな……」
「ありがと…。なんか、本当に救われたよ。…でも、しゅんも本当に色々と辛いことがあったんだね」
「まぁな〜。俺のは大したことないよ…。でも人間誰しも、生きてりゃ辛い事や上手くいかん事の、ひとつやふたつあるんやろなぁ」
「そうだね。でも俺はまだ、全然乗り越えられないんだよなぁ。ふとした拍子に思い出しちゃって、ダメになる」
「そうやなぁ……。まぁでも、これからは俺がいるやん! これから楽しい事たくさんして、色んな所行って、色んな経験してさ。幸せな思い出で、じゅうの嫌な記憶を全部、ぜーーんぶ綺麗に塗り替えていこうや! な?」
「うん……っ! ありがと、しゅん」
「おう、俺に全部任せてや!!」
彼の広くて温かい愛が、胸の奥にじんわりと染み渡っていく。
「俺も……ちゃんと強くならなくちゃ。少しでも自分に自信を持てるように、自分のことを好きになれるように、頑張るから」
「俺は、どんな柔太朗も大好きやからな? それだけは絶対に覚えておいて?」
「……うん、ありがと」
心地よい会話と共に、缶を空けるペースが早くなっていく。
徐々に酔いが回り、頭がふわふわと心地よく痺れ始めていた。
ふと、テーブルを挟んで向かい合って座る彼の存在が、なんだかひどく遠く感じる。
寂しい。
もっと近くに来てほしい。
触れたい――。
「強くなるまで待ってて」なんて、自分で彼にブレーキをかけたはずなのに、お酒の熱は僕のそんな理性を簡単に融かしていく。
「ねぇ、……しゅん、こっち、」
僕は自分の隣の畳を、ぽんぽんと2度優しく叩いて、彼を誘った。
「ん~? なしたん、じゅう?」
不思議そうにしながらも、しゅんは素直に立ち上がって僕のすぐ隣に腰掛けた。
距離がゼロになる。
僕は吸い寄せられるように彼の手を取り、自分の頬へとぴとっと押し当てた。
お酒のせいで熱く火照った肌に、しゅんの少し冷たくて大きな手のひらが、たまらなく気持ちいい。
「なに? じゅう、めずらしく甘えたさん?」
「なんか、あつくて……。しゅんの手、冷たくて気持ちいいんだもん……」
浴衣なのにあぐらで座る、しゅんの無防備な姿勢。
衣服の裾からのぞく、彼の引き締まった男らしいふくらはぎの筋肉が不意に目に入って、僕はいたずら心と抑えきれない衝動のままに、人差し指でそこをつんつんと突いてみた。
しゅんの身体が、ビクッと激しく反応する。
「ちょ! じゅう……っ!」
「んぇ……?」
僕は上目遣いで、彼の目をじっと見つめた。
アルコールのせいで、視界がとろとろと上手く定まらない。
「そんな、とろーんとした顔して……っ」
「なんか、いつもより酔っちゃったみたい……」
自分でも、信じられないくらい甘えた声が出る。
僕はそのまま、彼の広い右肩にコテンと頭を預けた。
一瞬、驚いたようにぴくっと身体を硬くさせたしゅんだったが、すぐに観念したように僕の肩を優しく抱き寄せ、空いた右手の指先で、僕の髪を手櫛するように優しく、何度も何度も撫でてくれた。
しゅんの左手が僕の肩から離れ、膝の上で所在なさげに開いていた。
僕はその手のひらの上に、自分の右手をそっと、重ねるようにして置いてみる。
「なぁ……じゅう。それって、俺を誘ってるん……?」
しゅんの声が、急激に低く、掠れた熱を帯びる。
彼は重ねられた僕の手の指の隙間に、自分の太い指をじわりと滑り込ませて、完全に固く絡め合わせてきた。
お互いの指が複雑に交差する、恋人繋ぎ。
繋いだ手のなかで、彼の親指が重なった僕の親指の肌を優しく、熱くなぞり上げる。
もっと、近付きたい。
もっと、この熱い体温を感じたい。
僕は肩に頭を乗せたまま、顔を上げて彼の目を見つめた。
僕を見下ろす、しゅんの瞳。
そこには、昼間の優しいわんこみたいな光はどこにもなくて、いつもとは全く違う、僕を独占しようとする雄の熱が悍ましいほどに籠っていた。
そのあまりの色気に、僕はハッと息をのむ。
「なぁ……どういうつもりなん?これ……、」
「んー? なにがぁ……?」
何も知らないフリをして、わざと上目遣いで彼を誘う。
僕のその生返事に、しゅんの視線の熱がさらに焼き付くように温度を増した。
背筋がゾクッとするような快感が走る。
「付き合ってない」とか、「待ってて」とか言っておきながら、 こんな風に自分からしゅんに触れて彼の欲望を煽るだなんて、本当に自分勝手で都合が良くて、最低だ。
自分でブレーキをかけておきながら、身体はこんなにも彼の熱を欲しがっている。
でも、どうしても触れたかった。
彼の熱で、全部満たされたかった。
頭がふわふわと融けていく。
僕は空いている左手を伸ばし、彼の逞しい右太腿の素肌を下から上へとそっと淫らになぞり上げた。
それは、これ以上ない明確な僕からの誘いだった。
「……はぁ、もう。じゅう、そんなんして……あかんやろ……っ」
低く苦しげなため息と共に、しゅんの手が僕の肩を掴む。
そのまま、抵抗する隙もないほど優しく、けれど拒ませない絶対的な力で、僕は畳の上へと押し倒された。
背中に伝わる畳の感触。
「……もう、知らんで? ……これからどうなっても」
しゅんは僕の顔の横に左手を突いて、覆いかぶさるように僕を見下ろす。
自由になった右手で、僕の熱い頬を愛おしそうになぞる彼の目は、完全に理性のタガが外れていた。
「……うん、」
僕は静かに目を閉じて、そのすべてを受け入れるように、短く、小さく返事をした。
to be continued…….
コメント
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意を決して初めてコメントいたします!いつも素敵な作品ありがとうございます🙇最新話が来るのをいつも楽しみにしています💗 うまく言葉にできずに心苦しいのですが、尊い…💕という気持ちでいっぱいです。 二人の優しい関係を見守っていきます!
