テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
286
#誰でも大歓迎
こむぎ@多忙/たまに書いてる
1,272
いつものとおり駅で文也と別れたあと、秋は背後から呼び止められた。
「秋くん!」
それは、コスメブランドの社長、久美だった。
「今レッスンの帰り?」
三十二歳よりずっと若く見える美人の久美は、いつも非の打ち所のない格好をしている。久美は秋のファンを公言しており、いつも会うとプレゼントをくれた。
「はい、これ新作のスキンケアシリーズの乳液。」
「わあ~。いつもありがとうございます。久美さんのブランドの商品、ホント良いですよね!」
秋はこの久美の好意にいつも、素直に喜んで見せた。ファンとの付き合いを大切にしろとの、芸術監督の田辺の教えだった。
「今度白鳥の湖で道化をやるんでしょ?すっごく楽しみ、秋くんのソロ。」
久美は魅力的な笑顔を見せた。
「ぜひ観に来て下さい。お待ちしています。」
秋は微笑んだ。
「今週末、どこかで会える?二人きりで。」 急に久美の目が本気の光を放った。秋は、ついに来た、と思った。
「僕、まだ下っ端なので、今はバレエを頑張らないといけないので、プライベートで人とのお付き合いは・・・ごめんなさい。」
秋は久美に期待を持たせないように、誠実に答えた。久美はふふふと笑って、
「そんな真面目にとらないで。ちょっとお仕事関連のお話したかっただけよ。もちろんデート出来たら最高だけどね。私から声掛けて、断るの秋くんだけよ。まあいいわ。いずれ、また。じゃあね。」
久美は小悪魔らしい笑顔を見せて、去って行った。秋は少し気恥ずかしさを感じながらも、ほっと胸をなで下ろした。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!