サイド ユメ
そんな、どうして、ここに?
あなたは、ここにいないはずなのに。もう、会えないと覚悟していたのに。
「久しぶり、大っきくなったねぇ」
その声は、昔と同じように優しく、大きくなった懐かしさを持ってあたくしの……私の耳にすんなり入る。
私は走ってその人に抱きついた。ずっとずっと、会いたかった……!
「ずっと会えなくてごめんね、ユメ」
「……っ、お母さん……!!」
「?!え、でもユメの父親と縁を切ったって……どういうこと?!」
アミが前を警戒しながらも、私に問いかける。そんなの、私も知らなかったのに聞かないでくださいまし!
ああ、口調がごっちゃになってしまいますわね。長い間……本当に長い間、使っていましたもの。
「ユメ。お母さんはね、お父さんとは縁を切ったけど、貴方達子供のことを捨てた訳じゃ無いのよ」
お母さんは、そう言って真っ直ぐ目の前の、……私とアミが足止めし続けていた、父上を睨みつけました。
「……貴方は、変わってしまったのね」
「……何故、ここに」
そう言った父上の顔色は、蒼白でした。
サイド マオ
一か八かの賭けだったが、間に合ってよかった。
キリの烏と、トキの顔の広さ、そして俺のネットを使って、ユメの母親の居場所を探し出して、ユメの兄の病気とユメの父親がやろうとしていることを伝えた。
ユメが母親の写真を持っていてくれたおかげだな。
……直ぐに状況を理解して、自分のやるべきことを瞬時に把握する。ユメの心の中を読む才能は、この母親に似ていたのかもしれない。
『私が芽吹のドナーになるわ。血液型も同じだし、拒絶反応も少ないでしょう?』
スマホから、ユメの母親の気丈な声が響く。
「ルネ、なんでも一人で抱え込むな。俺たちをがいる。いつまでも正解を選び続けるわけがないんだ。人間だから」
もう、ダイチに縛られなくていいんだ。お前も、ダイキも。
「俺は、モンダイジだから!だから、不正解を選ぶことが多い。兄ちゃんがいたときも、ルネが全部話してくれたときも!」
もう、頑張らなくていいんだ。今度は、俺たちも一緒に前に進むから。
今まで辛かったよな。一番ダイチを好きだったのはお前だ。悲しかったよな。気づいてやれなくてごめんな。
「ルネ。帰るぞ。俺たちモンダイジの居場所に」
俺は、もう二度とお前を一人にしないから。
「……はぁ、しょーがないなあ」
そう言って、ルネは笑ってくれた。
俺がずっと望んでいた、本当の笑顔で。
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