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アルゴちゃんの手を離し、私の父の名を呼ぶ男に近づく。
「あ、あの…」
「なんだい、今君には用はないんだ」
「…カルト・ロナウドは、私の父の名前です」
男は前髪に隠れた目でこちらを見つめた。
「…そういえば娘がいたな」
しばらく彼は黙った。
「まぁいい!君の家へ案内してくれるかな?君の父親と話がしたいんだ」
私が返答しようとすると、横から別の男が割って入ってきた。
「パーカー、調査書の提出が遅れているようだが…こんな場所で何をしている?」
男は低い声で言う。よく見ると、身なりが整っていて、位の高い事が分かった。
私は数歩後退りする。
「あぁ、そういえばそうでしたね。…すまないね、君の父親の話は後にしよう。用が済んだらそっちに行くよ」
彼は手を軽く振り、2人でどこかへ歩いて行った。
それにしても、まだ父の名前を知っている人が知人以外にいる事に、私は嬉しさと同時になにか別の感情が沸いた。だが、それが何かわからなかった。
「ティファニちゃん!」
後ろから声をかけられた。父のことで頭がいっぱいで、 アルゴちゃんのことをすっかり忘れていた。
「ティファニちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だよ。もう家に戻ろうか」
「…うん」
アルゴちゃんの家へ彼を招く。彼と話をする間、アルゴちゃんには席を外してもらうことにした。
「遅れてすまなかったね、少々お偉いさんとの話が長引いてしまって…」
ヘラヘラと笑いながら彼は椅子に腰掛ける。私は彼の向かいの椅子に座った。
「まだ名乗っていなかったね、僕はライト・パーカー。君は確か、ティファニだったかな? 」
「はい…」
おそらく、父から私の名を聞いたことがあるのだろう。
「で、君の父親、カルト・ロナウドはどこかな?」
「……父は、7年前に亡くなりました」
彼はしばらく黙り込み、またしばらくして口を開いた。
「そうだったのか。すまないね、余計なことを聞いてしまって…」
「いえ、勝手に研究に出て行った父が悪いんです。家族を捨てて研究に行き、海に呑まれ、骨も残さず死にましたよ」
「父親の事が嫌いなのかい?」
「………」
「答えなくていい。…本題に入ろうか」
彼は指を組んで机に置いた。
「君の父親、カルトが残した研究書を調べさせて欲しい」