──翌朝、起きて来た彼女は、
私の顔を見るなり、再び眉根を寄せた。
昨日は、完全に落ちたわけでもなかったのかと思っていると、
「……昨夜のことで、もう私を虜にしたとでも思っているんですか?」
と、きつい表情を崩さないままで訊いてきた。
「あそこまで身体を許しておきながら、まだそんなことを……?」
ふっ…と微かな笑いが漏れると、
「それは、先生も同じですよね…?」
思いもかけなかった言葉を口にした。
まさか……心中を知られていたのかと、
「……私の心の内など、あなたにはわからないでしょう?」
そう問い返すと、
「わかります……。あなたは本気になんてならない…誰にも、私にも……」
と、彼女が答えた。
なぜ自身の愛し方が悟られているんだと……一体彼女は、私のどこを見ているんだろうかと思った。
「…………。」
喉の奥が詰まるような息苦しさを感じて、
「……私が本気かそうでないかなど、君にわかるはずもない」
ようやく声を絞り出した。
同時に喉元を堰止められない激情が駆け上がって、彼女の頬を片手で掴んで仰のかせると、
いつにない激しさで、その唇に喰らいついていた──。
「……どう、思われているのです? 私のことを……」
口づけを解いてひと息を吐き、尋ねた。
「……心がない人」
拳で唇を拭って言う彼女に、
「……抱かれている時にも、そう思われていたのですか?」
さらに言いつのった。
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