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1 - 第1話 救いの手

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2025年09月23日

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僕らは永遠にずうっと一緒。

怯える日々も、落ち着かない夜も。

君を傷つけるためのものは全部、僕を傷つけるためのものでもある。

君を怯えさせるものたちは、僕ができる限り全部、君から遠ざけてあげる。

僕がいるから、僕だけはちゃんといるから。

大丈夫、僕のところには逃げていいんだよ。

全部忘れていいよ。

君の背負ってる重たいものも、見えないようにしようね?感じないようにしようね?

僕と、二人っきりでいる安心感に浸ってればいいんだよ。

この僕らだけの時間、無という色が光って見えそうな時間。

君は君でいい。

君は君であることを、僕が証明するから。

ここでは、晒していいんだよ。

誰も否定しないから。

ここは君の居場所だから。

怖いよね、苦しいよね、辛いよね、しんどいよね、悲しいよね、何も感じたくないよね…でももう大丈夫だよ、ほんの少し、休んじゃおう。

一人で休まなくていいんだよ、僕も一緒にいる。

一人で泣かなくていいんだよ、僕も泣く。

君が泣けない分だけ代わりに泣くし、君が怒れなかった分だけ僕が怒る。

もうどんな感情も否定しなくていいよ。

たくさんたくさん、君を抱きしめてあげる。

大事に大事に、匿ってあげる。

もういいんだよ、もう大丈夫なんだよ。

ほら、こっちにおいで。



………よくできました。



垂れ流されたテレビをぼーっと見ていた。

小学生の男女が、物陰に隠れて指切りをしていた。

一度見たことのあるものだったのか、見覚えのあるシーンだった。

途中で興味が失せて、ソファーのクッションに顔を埋めた。

ストンと肩が重くなって、ぬくもりに包まれる。

「どうしたのー?」

聞き慣れた優しい声。

ずっと声を出していなかったのか、少しかすれていた。

その問いに首を横に振って答える。

胸の奥がなんだか落ち着かない気がしたけれど、分からなかった。

「僕お仕事終わったから、一緒にお風呂入りに行こう?」

今度は縦に首を振った。


いつものようにお風呂を終わらせると、スキンケアされて、流れるように髪も乾かされる。

終わると同時に抱きしめられる。

「あつい…。」

一言ポツリと呟くと、左耳に息が吹きかかった。

反射的に体をのけぞった。

「ごめん、笑い我慢できなかった…。」

今も笑いをこらえているようだった。

「お風呂上がりにハグは、流石に暑かった?」

顔を見なくても、微笑んでいるのがわかる声だった。

「うん。」

そう私が小さく返事をすると、頭を私の肩に押し付けて、また笑いを堪えるのに必死になっていた。

その間もずっと、背中の方から回された腕は取れない。

密着した体は離れない。

暑かった。


二人で冷凍庫を開けた。

バニラとオレンジとチョコミントの棒アイスが何本ずつかある。

「今日はどれがいい?」

「…。」

何を食べたいとかは無かった。

少し悩んで、一番手前にあったチョコミントを選んだ。

「じゃあ僕も同じやつにしようっと…。」

透明の袋からアイスが取り出され、顔に近づけられる。

一口かじる。

「おいしい?」

少し頷いて答えた。

それから自分でアイスを持って、ソファーへ移動した。

二人並んで座った。

アイスは甘かった。


ふかふかの少し大きなベッド。

保温性もそこそこ高いはずなのに、寒い気がした。

枕を抱いて、部屋を移動する。

どこの部屋も暗くて、たまに壁に足をぶつけた。

じんと痛かったけれど、止まることはなかった。

静かにそっとドアを開ける。

掛け布団に潜り込んで、そのまま腕の中に入る。

途中で持っている枕が邪魔だと気がついて、そこら辺に置いておく。

添い寝は成功した。

このベッドは暖かかった。

すぐに瞼が重たくなって、気づけば夜は通り過ぎていった。



あの日以降、ずっと僕らは一緒にいる。

そのためにたくさんの準備も進めてきたし、仕事だって変えた。

すべては君を救うため。

君が救われれば、僕も救われる気がした。

あまりにも重たい日々だった。

重たいものからできる限り遮断させた。

けれど、数カ月の間、君は苦しみ続けた。

病気はそんな簡単に良くはならなかった。

長い間悪化させ続けたものだったから、時間がかかることは覚悟していた。

でも状態は、僕が思っている以上にひどいものだった。

こんなにまでなっていたのに…そう色んなものを恨んだ。

数年して、体調不良の傾向は減少してきた。

今でもたまに具合が悪くなる日はあるが、それでも以前に比べたらよっぽどマシだった。

それは頻度だけでなく、症状の重さにも言えることだった。

ただ、どれほど時が経っても変わらないものもあった。

それは、記憶の曖昧さだった。

脳の働きはまだ復旧しきっていないようだった。

少しずつ、感情の制御も落ち着いてきているし、自発的な行動も増えてきている。

ただ、何をどこまで理解しているのかは、曖昧だった。

過去の壮絶な話は体が拒絶するようだけれど、よくわかってもいなさそうだった。

小学生の頃、二人で写っている動画を見せてみても、自分たちだと認識している気配は無かった。

僕と自分が恋人であること、そして僕を好いていることは理解しているみたいだから、愛情に触れてもらうためにも、スキンシップも愛情表現もやめていないが、寝室は分けるようにしていた。

いつでも入れるように鍵は開けておいている。

過去をちゃんと認識すること、自分をちゃんと認識することは、本人には余りにも苦しいことなのかもしれないけれど、生きていくうえで必要なことだから、ゆっくりでいいから、やめさせないようにしないと。

もう一緒に暮らして5年も経つ。

僕らに流れる時間は、もっともっとゆっくりに感じる。

彼女が彼女であれる日を今日も願って、僕は彼女を抱きしめた。

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