「風間さん、母がもうすぐ来ます」
俺はいつの間にか眠っていた。時計を確認するともうすぐ20:00だ。
「美海外にでるぞ」
俺は美海を誘い店の外にでる。万が一母親に何か取り憑いていた場合、この強力な結界の中に入れても一時的に母親から離れてしまう可能性があるからだ。
「母です」美海は向かいの通りにとまったタクシーを指差した。
タクシーからおりた女性は左右の安全を確認してこちら駆け寄る。
「すみません、遅くなり、美海の母です」
「お母さん早速ですが場所を移動して宜しいでしょうか?」
3人でさっきのカフェに移動する。
俺は早速元凶かもしれない、同窓会の話を伺った。同窓会は女子校時代の集まりで高校3年の時の吹奏楽部のメンバーで行ったようだ。
俺が霊視でみた2年B組になにか覚えがないか聞いてみると、母親は美海を外させた。
「ごめんなさい、美海の前では話しずらいことなので。。。」
母親は苦悶の表情で話し始めた。高校3年の頃の吹奏楽のコンクールの練習に明け暮れていた。全国で上位のレベルを誇る学校だったために、練習も上下関係も厳しい部活であり、イジメなんて事もよく行われていたようだ。2年B組にひとつ年下の#千尋__チヒロ__#という、トロンボーン奏者がいて度々演奏をミスすることからイジメの対象になっていたようだ。
美海の母はそんな千尋をいつも慰めてあげてたようだが、イジメの指導者、明子がある日こんな事を提案してきた。
学校からほど遠くないところに一件の空き家があり、そこに千尋を誘い出し閉じ込めていじめよういう計画だ。
美海の母は明子の指示で千尋をその一軒家に誘き出せと命じられた。どんな結末か想像できるものの仕返しを恐れていたため、仕方なく千尋を放課後誘い出した。
ただ閉じ込めると聞いていたのに、結果は想像を遥かに超えるものであった。
家の中には明子の友人の男子校生が潜んでおり、性的暴力をうけインスタントカメラでその様子を撮影された。
笑いながら一軒家から出てきた、若者たち。美海の母は中に入れず、立ち去ってしまった。次の日から千尋は不登校になり、3年生が卒業をひかえた半年後、自ら命を経ってしまったとのことだ。
当時の友人の子供が事故や病気で3人もなくなっているという不自然な点があり、どの子も高校2年の時に亡くなっているというはなしになり、タブーである千尋の名前がでてきた。首謀者の明子とは連絡が取れないようだった。今回の同窓会はそんな話題がほとんどだった。
「なるほど、これはちょっと娘さんには言えないですね」
「美海の悪夢といい写真といい不安なんです。」
「ちなみに写真に映る女性はその千尋なんです?」
「似てるといえば似てるのですが。」
俺は今回のこの怪現象を止めて、美海を救うには母親にある覚悟をして貰わなければならなかった。