皆さんこんにちは!
スイ星です!
今作は一寸した読み切り、唐突に思い付いた物です!
特にCP要素はありません!
⚠死ネタ。
⚠口調迷子。
⚠一寸佳く判らないお噺。
⚠短い。
⚠唐突に始まる。
⚠文章力が旅に出てます。
それでも大丈夫な方は、どうぞっ!↓↓↓
街中で私は偶然、彼────中原中也に会った。
「太宰、そう云えばまた自殺失敗したンだろ」
「そうだけど、何故知っているのだい?」
「ハッ、それくらい噂程度で此方にも流れて来るわ」
「うそ、何か厭なんだけど………」
「っーか失敗すンなら女巻き込むなよ」
「違うよ、今回は女性の方から誘われたのさ」
「………………」
彼は私を暫く見つめた後、ゆっくりと視線を外し、空を見上げた。
「なら、普通は止めに入れ…………」
「____…」
止めに入れ、か…………。
「………………ソレが出来たら苦労しないよ」
私は小さく呟く。
「ん?何か云ったか?」
そう云って、中也は視線を私に移した。
「別に?何でもないよ」
作り笑顔を私は作る。中也が首を傾げた。
「ていうか、中也に関係無いだろう?」
「無くても普通におかしいだろ」
顔をしかめながら中也は私に指をさす。
「手前が愛した女なら最期まで付き合ってやれよ」
「はぁ?」
中也の云っている事が、只単に自分の価値観を押し付けているようにしか聞こえず、私は少し顔をしかめて中也に聞いた。
「如何云う意味さ」
「…………はぁ、判ってねェな…」
溜め息を付いた後、靴音を響かせて私の前を歩いて行く。
そして、ゆっくりと振り返った。
『愛するものが死んだ時には、自殺しなきゃあなンねェだろ』
「____…」
暫く私は呆然として中也と視線を合わせていた。
然し彼はそんな私の心境にも気付かず、首を傾げている。
そして沈黙が過ぎると────。
「…………は?」
口先から一つ声がこぼれた。
──────この時私は、彼の感性を疑った。
――愛するものが死んだ時には、自殺しなきゃあなりません。
***
「嗚呼、本当に君は酷い」
私はそう云いながら彼を抱きしめた。
「あの言葉を云ったのは君じゃあないか」
酷く冷たい其の亡骸は、私に何も与えない。
「だのに何故、私も逝かせてくれないのだい?」
息がしにくい。
喉が痛い。
声が掠れている。
表情が上手く動かせない。
視界がぼやけている。
「本当に、君は酷い」
頬に涙が伝った。
「〈まことに人生、一瞬の夢、ゴム風船の 美しさかな〉」
何故か自然と口先からこぼれた其の言葉に、私は耳を疑った。
何かが煌めいて、脳に溢れ返る。
それは、とても小さくて、儚い記憶だった。
『手前、!好きな花は何だ!?』
『ケッ………此れだから手前は………………』
「──────ははっ……」
乾いた笑い声が響く。
儚く静かな夜に吸い込まれた。
「本当に、私は君が嫌いだよ」
私は強く彼を抱きしめる。
もう何も与えてくれない酷く冷たいその躰に、少しでも温もりが宿るようにと────。
愛するものが死んだ時には、
自殺しなきゃあなりません。
愛するものが死んだ時には、
それしか他に、方法がない。
けれどもそれでも、業が深くて、
なおもながらうことともなったら、
奉仕の気持ちに、なることなんです。
奉仕の気持ちに、なることなんです。
愛するものは、死んだのですから。
確かにそれは、死んだのですから。
もはやどうにも、ならぬのですから。
そのもののために、そのもののために、
奉仕の気持ちに、ならなけあならない。
奉仕の気持ちに、ならなけあならない。
「奉仕の気持ちに──────」
私はそう自分に云い聞かせる。
それでも私は結局、特別な事は何もできなかった。
だからせめて、
以前より丁寧に本を読み、
人には鄭重に接し、
規則正しく散歩をし、
知人に会ったらにっこりとし、
出会った人とは仲良しになり、
仲間と喫茶店に入り―――。
詰まりは、どこ迄もおだやかに過ごす。
どこ迄も──────。
私は其処に腰を下ろして、背中をもたれた。
疲れを吐き出すような息を一つ吐き、瞼を閉じる。
そして私を起こすように風が頬をなぞると、ゆっくりと瞼を開けた。
空を仰ぐと、視界に晴天が映る。
「ねぇ、中也」
私は後ろにいる彼に声をかけた。
「君が死んだ後、世界は何も変わらなかったよ」
返事は来ない。
「人間は美しさを見つけ続けている。世界は君が死んだ後でも美しさは変わらない儘だ」
鼻で息を吸う。夏の爽やかな香りが私の鼻腔を漂った。
「彼等の見る世界は、とても幸せだろうねぇ」
背中を少し曲げ、膝を抱える。
「でも、私にとっては────酷く残酷だ」
膝の上に顔をうずくめる。
彼と過ごした三年間。そして空白の四年間が、光を帯びて脳に溢れた。
止めてよ。
今は、あんな気持ちになりたくない。
思い出させないでよ。
お願いだから、さぁ……?
今は静かに──────────。
「………………」
私は顔を上げる。
ゆっくりと手を伸ばした。
目の前には、一つの赤いゴム風船があった。
「空に昇って」
ゴム風船は風に流され空に昇る。
「光って」
日光を反射し、眩しい程に光った。
「消えて」
パンッと音を立てて、ゴム風船は儚く消える。
──────まことに人生、一瞬の夢、ゴム風船の 美しさかな
人生は一瞬の夢であり、それでもゴム風船のような美しさを持っているとしたら。
だとしても私は。
一秒でも疾く、その夢から覚めたい。
愛するものが死んだ時には────『春日狂想』