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食べ物をいくつか買って俺達は先輩の言う秘密の場所に向かう。しばらく歩いて坂道を登り切ると立ち止まり、先輩が言う。
「ついたよ」
俺は息を切らしながら言う。
「校庭ですか」
「うん。ここ、文化祭の時は誰も来ないの。1年の時に見つけたんだ」
先輩はそう言ってニコっと笑う。この学校の校庭は坂道を登って行かなければならない。文化祭でも使われていないから、わざわざ坂道を登って来る人もいないのだろう。
「もう疲れちゃいました」
俺がそう言うと、先輩はふふっと笑う。
「じゃあ、ベンチに座って栄養補給だね」
そう言って歩き出す先輩に俺はついていく。先輩がベンチに座ると、俺も隣に座った。
先輩は深呼吸をした後、目を瞑った。
「静かで落ち着く」
俺はそう言う先輩の横顔を見る。
(横顔もかっこいいな…)
しばらく見惚れていると、先輩がこっちを見る。
「春人くん?」
「あ、はい。なんですか?」
「なんで俺の事そんなに見てるの?」
「あ、すみません。かっこいいなって思っただけです」
「春人くんに褒められると、なんかすごい嬉しいな〜」
そう言って先輩は嬉しそうに笑った。そんな先輩を見て、俺の胸が高鳴る。
(やっぱりおかしい…この感覚は…)
この感覚はあの時に似ている。中学生の頃、好きな子がいた。その子と一緒にいると胸がドキドキしたし、いつもその子の事を考えてたし、ずっと一緒にいたいと思った。
そして今、冬馬先輩に対して、同じ感情を抱いている。
(俺、冬馬先輩のことが好きなんだ…)
そう意識してしまうと、何だか緊張してしまう。文化祭の日に、誰もいない校庭で二人きり。なんだか、二人だけの世界に入っているようで、妙に緊張してしまった。
俺はその気持ちを誤魔化すようにさっき買ったフランクフルトを頬張る。
そんな俺を見て、先輩もフランクフルトを食べた。
「うん。美味しい。静かで落ち着いて美味しい物食べて、最高の文化祭だよ。春人くん、ありがとう」
「そう言ってもらえるなら、誘ったかいがありました」
「春人くんはちゃんと楽しめてる?」
「はい。楽しいですよ」
「それならよかった。でも、下に戻りたくなったらいつでも言ってね」
「はい。でも、ここで冬馬先輩といる方が楽しいと思うのでしばらくここにいたいです」
俺がそう言うと、先輩は俺から目を逸らして前を向き、フランクフルトを食べる。
(あれ。もしかして俺、結構恥ずいこと言った?)
そう思った俺は、慌てて訂正する。
「あ、いや。その、別に変な意味じゃなくて。ただ、先輩といたいなって…」
(なんかもっと恥ずいこと言ったかも…)
俺がそう思っているうちに先輩はフランクフルトを食べ終え、ゴミ袋に閉まった。
「春人くん」
「はい」
俺がそう言うと、先輩はベンチに片手をつき、俺の顔を覗き込みながら言う。
「あんまりそういうこと言うと、俺勘違いしちゃうよ?」
その言葉で俺の心臓が高鳴る。
「え?」
しばらく沈黙が続き、俺の心臓の音だけが聞こえる。先輩にも聞こえていないか心配になる。どうしたらいいか分からず目を泳がせていると、先輩はふふっと笑う。
「冗談だよ。別に変な意味に捉えてないから大丈夫だよ」
そう言って先輩は体制を元に戻した。
「そ、そうですか」
「うん。ほら、買ってきたやつ早く食べよ」
そう言って先輩は袋の中を見た。
それからしばらく買ってきたものを食べながら他愛のない話をしていた。そして文化祭の終わりが近づいた時、先輩が言う。
「最後にシュークリーム食べて下戻ろっか」
「はい」
俺がそう言うと、先輩は袋からシュークリームを取り出す。
「チョコとカスタードどっちがいい?」
「う〜ん…チョコで!」
俺がそう言うと、先輩はチョコのシュークリームを俺に差し出す。
「はい」
「ありがとうございます」
俺は先輩からシュークリームを受け取って一口食べる。
「ん!美味い!」
そう言う俺を見て、先輩もシュークリームを一口食べる。
「お、めっちゃ美味い」
「ほんとですか?俺も食べたいな。先輩、一口くださいよ。俺のもあげるんで」
「いいよ」
そう言って先輩は俺にシュークリームを差し出す。俺はそのシュークリームを一口食べた。
「ん!こっちも美味いです」
「でしょ?」
「はい。じゃあ、冬馬先輩も。どうぞ」
そう言って俺が先輩にシュークリームを差し出すと、先輩も俺と同じように一口食べた。
「おぉ〜。チョコもいいね」
そういう先輩の口元には、クリームが付いていた。俺はそんな先輩を見てふふっと笑う。
「先輩。クリーム付いてますよ」
「え?どこ?」
そう言って先輩は口元を触るが、クリームのところを上手くかわしてしまう。
「そこじゃなくて、ここです」
俺はそう言いながら先輩の口元に付いたクリームを手で拭う。
「…ありがとう」
先輩はそう言いながら目を逸らし、シュークリームを頬張る。そんな先輩を見て、俺は焦る。
(やば。変なことしたかな…)
二人の間に沈黙が走る。なんとなく気まずくなってあたりを見回すと、坂の方に人影が見えた。
「あっ」
だが、すぐに人影はなくなった。
(あれ…気のせいかな?)
俺の様子を見て、先輩が不思議そうに言う。
「どうしたの?」
「いや。誰かいたような気がして」
「ほんと?こんなとこ誰も来ないと思うけどな」
「そうですよね。気のせいかもしれないです」
「よし。じゃあそろそろ戻ろっか」
「そうですね」
そして俺達は坂を降りて解散し、文化祭が終わった。
次の日、学校に登校し、教室に入る。だが、いつもと様子が違う。みんな俺を見てコソコソとなにか言っている。
(なんでみんな俺の事みてるの…)
俺はわけが分からず、ただ席に座る。その時、どこかからぼそっと聞こえた。
「佐野先輩ってゲイなのかな?」
俺の胸がドキッとする。
(なんでそんなこと…)
そう思っていると、翔が急いで教室に入って来てこっちに来る。
「春人、大丈夫か!」
「何が?」
「何って…これ」
そう言って翔は携帯の画面を見せる。そこには、校庭のベンチで俺が先輩の口を手で拭っている写真だった。
「…なにこれ」