リリスが黒い翼を広げると、空気はさらに冷たくなり、全身を刺すような緊張感が場を支配した。
「さて、みんなにちょっとした秘密を教えてあげるわ。」リリスは悠然と笑みを浮かべながら語り始める。
「実はね、私は昔、マデスの妻だったのよ。」
「――何やて!?」タクトが驚きの声を上げた。「馬鹿な……お前みたいな悪魔が、神である魔cですの嫁やったなんて!」
「悪魔になったのは後の話よ。」リリスはあくまで冷静だった。「最初は天使としてあなたのもとに仕えていた。でも、天界の掟を破り、あなたを欺いて結婚したの。」
タクトは眉をひそめた。「つまり、お前は最初から嘘つきだったってわけか。」
リリスは肩をすくめる。「嘘と言わないで。すべては私の計画の一部よ。でも、正体がバレた時、私は天界を追放され――堕天して悪魔になったの。」
「堕天した私に与えられた力、それがこの術式よ。」リリスは指先を天に向けると、暗黒の魔法陣が現れた。「『堕天使の戒壇』――悪魔を従わせるための究極の術式よ。」
魔法陣からは黒い鎖が現れ、その場にいる小悪魔たちが次々とリリスのもとにひざまずいた。
「この術式の本当の恐ろしさはね、ただ従わせるだけじゃない。」リリスは悪魔たちを見下ろしながら微笑んだ。「彼らの力を私のために使えるの。」
マデスは歯を食いしばった。「……つまり、お前は俺たちの戦いから吸い取った悪魔たちの力を使い、さらに強くなっとったわけか。」
「そういうこと。」
「お前、俺のことを何年も利用してきたんか……!」マデスの声には怒りと悲しみが交じり合っていた。「俺は――お前を愛しとったんやぞ!」
リリスは冷酷な視線を返す。「愛? そんなもの、最初から必要なかった。私はあなたを利用して、天界を超えた存在になりたかっただけよ。」
タクトは剣を構え直し、険しい表情を浮かべた。「リリス、お前の話はうんざりだ。さっさと倒してこの茶番を終わらせる。」
「いいわよ、タクト。」リリスは挑発するように微笑む。「でも、私を倒すのはそう簡単じゃないわ。」
タクトとマデス、そしてミカエルの三人が一斉にリリスへ向かって攻撃を仕掛けた。しかし、リリスは黒い鎖で三人の攻撃を次々と弾き返す。
「これが堕天使の力よ!」
リリスは魔法陣をさらに展開し、無数の悪魔たちを召喚した。ミカエルが剣を振るいながら叫ぶ。「こいつは今までの敵とは別格だ!」
「だが、やるしかねぇ!」タクトは全力で斬りかかるが、リリスは余裕の表情を崩さない。「あなたたちの攻撃なんて、私には届かない。」
その時、マデスがリリスを真っ直ぐに見つめた。「リリス……俺はお前を止める。愛しとったからこそ、悪魔に堕ちたお前を赦されへん!」
マデスが両手を広げると、彼の周囲に神聖な光が集まった。「堕天使に対する制裁は――神の手で下すんや!」
タクトはその光に一瞬目を見開いた。「マデス……お前、本気か?」
「当たり前や!」マデスは覚悟を決めた表情で叫ぶ。「これは神としての責務や!」
リリスの顔に初めて焦りの色が浮かぶ。「あなたにそんな力が残っていたなんて……!」
マデスの覚醒した神聖な力がリリスの「堕天使の戒壇」にどう影響を与えるのか――次回、神と堕天使の最終決戦が始まる!
暗黒の魔法陣がリリスの足元に広がり、そこから黒煙をまとった悪魔たちが次々と姿を現した。一方で、マデスの神聖な光がその場を満たし、悪魔たちの動きを一瞬止める。
タクトとミカエルは攻撃態勢に入るが、マデスが手を挙げて制止した。「ここは俺に任せろ。これは――夫婦の問題や。」
「……大丈夫なのか?」タクトが疑念を口にするが、マデスは振り返らずに答えた。
「これ以上、リリスが暴れるのを見過ごせるか。俺が責任取るしかない。」
リリスは冷笑を浮かべ、マデスを挑発するように言った。「責任? あなたにそんなものを語る資格があると思ってるの?」
「資格かどうかは関係あらへん。」マデスは静かに答えた。「俺はお前を止めなあかん。それだけや。」
リリスの黒い翼が広がり、魔力が周囲を巻き込むほどに渦を巻く。「なら、やってみなさい。私がどれほど進化したか、思い知るがいい!」
リリスが放った闇の刃がマデスに襲いかかるが、彼は光の盾を展開してそれを受け止める。
二人の力が激突するたび、空間が悲鳴を上げるように揺れる。
マデスが一閃するごとにリリスの闇がかき消され、リリスが術を繰り出すたびにマデスの光が揺らぐ。
「なぁリリス、こんなことして楽しいか?」マデスは剣を振りながら問いかけた。「お前、こんな奴らを操るために堕ちたんか?」
リリスは目を細め、冷たく言い放つ。「理想のために何を捨てても構わない。それが私の選んだ道。」
「そんな道、間違っとる!」マデスは剣を強く握りしめた。「俺は――お前を救いたい!」
タクトとミカエルは遠巻きにその戦いを見守っていた。
「救いたい、か。アイツ、本気でそう思ってるのかな?」タクトが呟く。
「……知らないが、あの二人には複雑な歴史があるようだな。」ミカエルは眉をしかめた。
「でもよ、もしマデスが失敗したら、俺たちがリリスを倒さなきゃなんねぇんだろ?」
「その時は俺が行く。」ミカエルが自信満々に言う。
リリスの術式「堕天使の戒壇」が再び展開され、周囲の悪魔たちが狂乱するように襲いかかる。しかし、マデスは動じなかった。
「リリス――お前がどれほど変わったとしても、俺の心は変わらん!」
マデスは全身に光をまとい、剣を高く掲げた。「『神罰の閃光』!」
眩い光が戦場全体を包み込み、悪魔たちはその光の中で次々と消え去った。リリスは膝をつき、苦しそうに息をする。
マデスは剣を下ろし、リリスに近づいた。「まだ終わりやない。お前を――もう一度救う。」
リリスは弱々しい声で笑った。「救う? あなたは本当に、私をまだ愛しているの?」
「愛してる。だからこそ、お前がこのまま堕ち続けるのは見逃せへん。」
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