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きらきら光るもの
しんしんと降る雪。
アンナ(10)が雪をかき分けながら泣いている。
アンナ「うう……どうしよう」
そこに雪の精霊が現れる。
雪の精「どうしたの?」
アンナ「……」
美しい雪の精に見惚れるアンナ。
雪の精「ふふ。泣き止んでよかった」
アンナ「……お姉さん、だれ?」
雪の精「私? 私は雪の精霊よ」
アンナ「雪の精霊……」
雪の精「どうして、さっきは泣いていたの?」
アンナ「えっとね、お母さんの大事なブローチ、無くしちゃったの」
雪の精「あら……。それは大変。でも、寒い中、探してたら風邪ひいちゃうわよ」
アンナ「別に風邪くらいいいの」
雪の精「ダメよ。お母さん、悲しんじゃうわよ」
アンナ「大丈夫。……お母さん、もう死んじゃったから」
雪の精「……」
アンナ「お母さんが大事にしてたブローチ。ちょっと借りただけなのに……」
雪の精「そっか。でも、こんな雪の中じゃ見つかりっこないわ」
アンナ「それでも、探すの!」
雪の精「あのね、アンナ。そんなことしてもお母さんは喜ばないわ。何かあったら大変だもの」
アンナ「……でも」
雪の精「今日はもう帰りなさい。明日、また探すのを手伝ってあげるから」
アンナ「本当?」
雪の精「ええ」
アンナ「じゃあ、また明日来るね」
アンナが駆け出していく。
・・・
晴れて、晴天。
アンナが走ってくる。
きょろきょろと周りを見渡すアンナ。
アンナ「雪の精霊さん、来たよ」
雪の精霊が現れる。
雪の精「ふふ。来たのね。じゃあ、探そうか」
アンナ「うん」
アンナが雪を掘り返している。
雪の精「ねえ、アンナ。雪だるま、作らない?」
アンナ「え? でも……」
雪の精「ふふ。少しくらい遊んでもいいんじゃないの?」
アンナ「うーん。じゃあ、ちょっとだけ」
大きな雪だるま。
アンナ「えへへ。できた」
雪の精「あらあら、アンナは相変わらず雪だるま作るのがうまいわね」
アンナ「うん。だって、たくさん作ってたから」
雪の精「そう」
アンナ「私ね、冬が大好き」
雪の精「あら、どうして? 冬は寒くて嫌いって人が多いのよ」
アンナ「私は好き! だって、雪が降るから」
雪の精「……」
アンナ「雪はね。きらきら光るの。ほら、あそこ、きらきらってね」
雪の精「ああ、あれは太陽の光が反射してるのよ」
アンナ「あとね、雪だるま作るのも好きなの」
雪の精「たくさん、作ってるものね」
アンナ「うん! 冬は雪だるまの友達がいっぱい作れるからうれしいんだ。ひとりぼっちじゃないの」
雪の精「……ねえ、アンナ。人間のお友達は?」
アンナ「いないよ」
雪の精「あら、どうして?」
アンナ「だって、一人で遊んだほうが楽しいから」
雪の精「そんなことないわ。お友達と一緒に遊ぶの、きっと楽しいわよ」
アンナ「でも……」
雪の精「何か、心配なことがあるの?」
アンナ「あのね、アンナね、引っ越してきたの」
雪の精「……」
アンナ「だからね、お友達が一人もいなくて」
雪の精「あら、なら作ればいいんじゃないの?」
アンナ「ううん。怖いの」
雪の精「怖い?」
アンナ「なにをお話ししたらいいかわからないし」
雪の精「そんなのなんでもいいんじゃない?」
アンナ「それに、意地悪されても嫌だから」
雪の精「大丈夫。そんなことする子はいないわ」
アンナ「嫌なの! アンナは一人がいいの」
雪の精「なら、私といるのも嫌?」
アンナ「ううん。雪の精霊さんは好き」
雪の精「ねえ、アンナ。滑り台作ろうか。雪の滑り台」
アンナ「なにそれ! 面白そう!」
雪の精「ふふ。それじゃ、一緒に作りましょう」
雪を積み重ねていくアンナ。
アンナ「えへへ。なんかね、お母さんと一緒にいるみたい」
雪の精「そう。それは嬉しいわ。でも、お母さんはこんな風に遊んでくれなかったでしょ?」
アンナ「うん。お母さんは病気だったから……。でも本はたくさん読んでくれたよ?」
雪の精「お母さんはアンナが友達いないって知ってたの?」
アンナ「ううん。お友達、いっぱいいるって嘘ついてたから」
雪の精「……どうして、嘘ついたの?」
アンナ「だって、お母さん、心配するから」
雪の精「でも、嘘ついたほうが、お母さん、悲しむと思うわ」
アンナ「……」
雪の精「ごめんなさい。攻めるつもりはないの。でもね、やっぱり、お友達作ったほうがいいと思うな」
アンナ「……」
雪の精「あら、今日はもう遅いわ。帰ったほうがいいわね」
アンナ「ねえ、明日も一緒に遊んでくれる?」
雪の精「ええ。もちろん!」
・・・
曇り。
アンナが雪を積み重ねて滑り台を作っている。
雪の精「アンナは頑張り屋さんね」
アンナ「えへへ」
雪の精「こんなに頑張り屋さんなアンナなら、きっと素敵なお友達ができるわ」
アンナ「……」
雪の精「そういえば、アンナはどうしてブローチを借りたの?」
アンナ「実はね、クラスの子の誕生日会の呼ばれてたの。それで……」
雪の精「あらあら、そうなの。そこでお友達できなかったの?」
アンナ「……誰とも話せなかったの」
雪の精「そう……」
アンナ「きっと、みんな、アンナのこと嫌いなんだよ」
雪の精「そんなことないわ」
アンナ「……」
・・・
少し雪が降っている。
そんな中、アンナが雪の滑り台を作る。
アンナ「できた!」
雪の精「すごいわ!」
アンナ「滑ってみる」
アンナが雪の滑り台を滑る。
それを微笑んで見ている雪の精。
同
晴天。
アンナが走ってくる。
アンナ「!」
立ち止まるアンナ。
目線の先には、数人の子供が雪の滑り台で遊んでいる。
背を向けて帰ろうとするアンナ。
雪の精「一緒に遊ばないの?」
アンナ「……でも、断られたら」
雪の精「大丈夫。一緒に遊ぼうって言ってみて」
アンナ「……」
雪の精「頑張って」
アンナ「うん」
アンナが子供たちのところへ行く。
アンナ「一緒に遊ぼう」
子供「うん、いいよ!」
アンナと子供たちが遊んでいる姿を微笑んで見ている雪の精。
アンナと子供たちが遊んでいる。
・・・
アンナと遊んでいる子供たちがどんどんと増えていく。
そして、雪も解けていく。
・・・
雪だるまが解けて、代わりにその場所には子供が立って笑っている。
それを愛おしそうに見ている雪の精。
・・・
・・・
・・・
春。蝶々が飛んでいる。
アンナが大勢の子供たちと遊んでいる。
草の上にキラリと光るもの。
それはブローチ。
雪の精がブローチを拾い上げ、身に着ける。
すると人間の姿になる。
雪の精「よかったわね、アンナ。これで、お母さんがいなくても、大丈夫ね。……最後に一緒に遊べて、楽しかったわ」
雪の精が淡く光り、そして消える。
アンナ「……」
雪の精がいたところを振り返るアンナ。
子供「アンナちゃん、どうしたの?」
アンナ「ううん、なんでもない!」
再び、友達と遊び始めるアンナ。
アンナと友達が光を浴びて、光り輝いている。
end