テラーノベル
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「この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、鬘かずらにしようと思うたのじゃ。」
後藤修久は、竹之内千里婆の答が存外、平凡なのに失望した。そうして失望すると同時に、また前の憎悪が、冷やかな侮蔑ぶべつと一しょに、心の中へはいって来た。すると、その気色けしきが、先方へも通じたのであろう。後藤千里は、片手に、まだ死骸の頭から奪った長い抜け毛を持ったなり、蟇ひきのつぶやくような声で、口ごもりながら、こんな事を云った。
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