コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第21章:黒の鎧、英雄の影
地下神殿の奥。
目覚めた男がゆっくりとこちらを向いた――
その瞳は、まるで感情をすべて失った機械のようだった。
⸻
【1. 封印の解放】
ウカビル「識別完了……星の刻印、確認……。戦闘条件、起動」
その声は、まるで機械が吐き出す命令のように冷たかった。
ゲズ「……お前が……ウカビル、なのか……?」
セレナ「違う……こんなの、伝承で語られた“英雄”じゃない……!」
ウカビルは無言のまま、右腕をゆっくりと掲げる。
その手から黒い霧が生まれ、周囲の空間を圧迫するように広がっていく。
ウカビル「ルシフェルの命により、対象:ゲズ=アストリアを抹消する」
⸻
【2. 英雄と戦うということ】
激しい衝撃音が遺跡を揺らす。
ウカビルが放った衝撃波だけで、天井の半分が崩れ落ちた。
ゲズは即座に剣を抜き、雷をまといながら跳び上がる。
ゲズ「こっちだって簡単にやられねぇぞ……!」
雷撃と黒霧が激突し、空間が軋む。
セレナも後方支援にまわり、結界と治癒の術を繰り返しながら、ゲズを支える。
セレナ(この力……これが“本物の英雄”……?)
ゲズの剣は確かに強くなった。
でも、ウカビルの一撃はまるで“歴史そのもの”が打ち込んでくるような重みだった。
⸻
【3. 記憶のほころび】
一瞬、ウカビルの動きが止まる。
ゲズ「……!?」
その目に、わずかな揺れがあった。
雷撃を受け止めたその手が、微かに震えていた。
セレナ「……記憶が……彼の中で、揺らいでる……?」
ゲズは剣をおさめ、真っ直ぐウカビルに向かって叫んだ。
ゲズ「本当は……お前、誰かを守ろうとしてたんじゃねぇのか!?
ルシフェルなんかの、ただの人形じゃねぇはずだろ!!」
その言葉に、ウカビルの瞳が一瞬、強く光る。
⸻
【4. 苦悩と後退】
突如、ウカビルが膝をつき、頭を押さえ始める。
ウカビル「……誰だ……?
……誰を……俺は……」
その姿は、まるで記憶の底から何かを引きずり上げようとしているかのようだった。
セレナ「……彼、まだ完全には“支配されてない”!」
その瞬間、神殿全体が激しく揺れ出す。
遠くからルシフェルの声が響く。
ルシフェル「ウカビル。戻りなさい。記憶など不要。
あなたは“絶望の器”」
黒い渦が空中に現れ、ウカビルを包もうとする。
ゲズ「待て! まだ話は――!」
だが、その声は届かず、ウカビルは闇の中に吸い込まれるように姿を消した。
⸻
【5. 遺されたもの】
静まり返った神殿に、ぽつんと黒い羽根だけが残されていた。
セレナがそれを拾い、呟く。
セレナ「……彼は、きっと戻ってくる。
自分が誰だったのか、思い出すために……」
ゲズ「ああ……それまでに、俺たちが強くならなきゃな。
奴を“解き放つ”ために――本当の英雄に戻すために」
ふたりは静かに見つめ合い、頷いた