第22章:黄昏の翼、二人の誓い
ウカビルが闇に消えてから数日。
ゲズとセレナは、再び世界を巡る旅へと足を踏み出していた。
彼らが向かったのは――空と海が出会う、雲上の浮遊島“ファルナ”。
そこには、**「天空の導師」**と呼ばれる存在がいるという。
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【1. 空の導師】
ファルナの頂に立つ石の寺院。
風のように軽やかな老人――導師クヴァールが二人を迎えた。
クヴァール「君たち、よほど因果を背負っておるな。
空が重く感じるのは、君たちの“決意”がまだ揺れておるからじゃ」
ゲズ「決意、か……」
導師はゲズを深く見つめ、続ける。
クヴァール「“不死”を持つ敵に勝つには、ただ力を磨くだけでは足りぬ。
真に恐れるべきは、“諦め”という名の敵じゃよ」
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【2. セレナの揺らぎ】
訓練の後、夜の空の下――
セレナはひとり、崖の先に立っていた。
月の光に照らされるその横顔には、珍しく陰りがあった。
セレナ「……私、怖いの。
あのウカビルの目……自分の存在を失ってる人間の目だった」
ゲズが隣に立ち、黙って聞いていた。
セレナ「私がもし……誰かの命を奪わなきゃいけないときが来たら……
ちゃんとできるのかな……?」
ゲズ「……そんなときは、俺が隣にいる。
お前が手を汚さずに済むように、俺が全部背負ってやる」
セレナの瞳が揺れる。
彼女はそっとゲズの腕に手を重ねた。
セレナ「それじゃ意味ないのよ、ゲズ。
私だって“あなたの背中”を支えられるようになりたいの」
ゲズ「……じゃあさ、一緒に強くなろう。
強くなるって、誰かを守ることだけじゃない。
誰かに守られることを、恐れないことだって――“強さ”だ」
二人はそのまましばらく黙って空を見上げていた。
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【3. 黄昏の誓い】
その夜、導師の導きで、二人は“誓いの崖”へと連れて行かれる。
そこは古代より、“英雄たちが誓いを立てた”場所。
クヴァール「言葉ではなく、心に刻むんじゃ。
君たちが本当に信じたいものを、この空に告げなさい」
沈みゆく太陽の光の中、ゲズが小さく呟いた。
ゲズ「俺はもう……目の前で誰かを失わねぇ。
セレナ、お前を守りきる。だから……」
セレナ「私も、あなたを守る。
あなたがもし、絶望に飲まれそうになったら――私が引き戻すわ。
それが、私の“生きる意味”なの」
二人の誓いは、静かに空に溶けていった。
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【4. 動き出す闇】
その頃、ルシフェルは遠く離れた黒の聖堂で“儀式”を進めていた。
ルシフェル「星の英雄の意志が、またひとつ育った……
だがその芽は、私の手で“理想の花”として咲かせてあげる」
彼女のもとには、すでに新たな尖兵が整っていた。
その名は――カティナ
かつてウカビルと共に戦った“第二の英雄”にして、いまや完全なるルシフェルの忠臣。
カティナ「命令を……。私は、もう迷いません」
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