「なぁ…そろそろ離れてくれないか…?」
「嫌だ…」
今この俺…ドイツにくっついているのは、愛人のロシア。
先週告白されて付き合ったばっかりなんだが…
ずっとベタベタしてくる!!!
本当に重い(二つの意味で)。
「今仕事中なんだが…」
そうなだめてもロシアはずっとくっついてくる。
これ酔ってるのか…???
「なぁ…もっと構ってくれ…」
「仕事終わったらな、」
「んん゛…」
駄々をこねてくるのは可愛らしいが…
いつもならこんな誘いには乗らないが、今日くらいは良いか…
「おし…今日は構ってやる、」
「!!」
嬉しそうにウシャンカの耳当て部分をゆらゆらする姿が愛おしい。
いつも抱きしめて貰ってばかりだからな…と思って抱きしめ返すとまた耳当てはゆらゆら揺れだす。
…可愛い…
そう思ったが口にも出てたようで、ロシアは顔を赤らめて反応してくれる。
ずっと引っ付いてくる割には初心なんだな…
「…中々に恥ずかしがり屋さんだな…」
そう口に出すと、
「うるせぇ…もん…」
大の大人が「もん」なんて使ってるところを見ると吐き気がするが、ロシアだけは違う。
可愛らしいという感想しか出てこないな…
俺はいつからこんな馬鹿になったんだ…???
うちの家には古い部屋があった。
何回か入った事があるが、使うことは無い。
最初は埃っぽくて、掃除が大変だったし…
けれど昨日その部屋から、書物が出てきた。
最初の掃除では見つけられなかったが…これはなんだろう?日記?
恐る恐る俺はページをめくった。
『5月8日 ソ連がこの世から消え去ってしまった。俺の存在価値はあるのだろうか。これから日記をつけていこうと思う。』
…背中がぶわっと逆立つような感覚がした。
先代だ。直感でそう感じた。
名前も姿も知らないはずなのに…どういう事だろうか?
吸い込まれるように手が次のページをめくる。
『5月9日 ソ連に話しかけたが返事は来なかった。きっと悪い夢でも見ているのだろう。…あの線路で俺が居たことは誰も知らない。俺がこんな思いをしていることを誰も知らない。散々ソ連を間違った愛情と嫉妬で虐めたのは自分自身だというのに、何故こんなにも辛いのだろうか?』
『5月10日 今日は線路の邪魔にならない端に花を置きに行った。キキョウとミヤコスワレという花だが、気に入ってくれただろうか?ウォッカを渡そうかと考えたが、さすがにやめた。最近指に亀裂が入って治る様子が無い。俺もそろそろ君のところへ行くのかもしれないな。』
『5月11日 ヒビが深くなった気がする。俺が居なくなるのも時間の問題だろう。あと持っても一年程度だ。君と同じように自殺してもいいが、俺にはそんな勇気ありゃしなかった。この日記も死ぬ前にどこかへ隠しておこうか?運が良ければここの家を継いだ誰かが見てくれるだろう…』
大体流れは分かった気がする。
ソ連?に好かれる何かに嫉妬した先代がソ連を虐め…踏切で自殺された。
こんな悲劇が起きていたとは、知らなかった。
先代の記憶がまだあるのか、知らない誰かの笑った顔が頭に浮かぶ。
でも靄が掛かったかのようにおぼろげで、よく分からない。
ああ…雰囲気はあれだな。
ロシアと似ている。
コメント
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一気読みさせていただきました!なんだろう、すごくすごいです(は) フォロー失礼します!