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ゆゆゆゆ
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朝。
カーテンの隙間から光が差し込んでくる。
静か。
やけに静か。
「……」
エリオットはゆっくり目を開ける。
ぼんやりした視界。
重たい体。
(……なんか、だる……)
寝返りを打とうとして——止まる。
昨日の断片が、ふっと浮かぶ。
壁。
距離。
呼吸。
「……っ」
一瞬で目が覚める。
(……は?)
記憶が、繋がる。
カフェ。
路地裏。
帰宅して——
「……っっ!!」
ガバッと起き上がる。
心臓が一気にうるさくなる。
「なにしてんだ俺……」
顔を覆う。
熱い。
思い出したくないのに、
勝手に細部まで蘇る。
「……無理……」
小さく呟く。
完全に“やらかした側”。
その時——
「起きたか」
キッチンの方から、普通の声。
「っ!?」
エリオットがビクッとする。
振り向くと、
チャンスが普通にコーヒーを飲んでる。
完全に、いつも通り。
「……」
「……」
温度差が、えぐい。
「……なにその顔」
チャンスが軽く言う。
「……何もない顔だけど」
エリオットは即答する。
でも声がちょっと裏返る。
チャンスは一瞬だけ見て、
「嘘つけ」
ってあっさり言う。
「顔赤いぞ」
「赤くない」
即答。
でも絶対赤い。
「昨日のこと思い出してるだろ」
「思い出してない」
間髪入れずに否定。
でも目が逸れる。
チャンスはそれを見て、
ふっと小さく笑う。
「分かりやす」
「うるさい」
エリオットはそっぽ向く。
でも落ち着かない。
(なんで平然としてんだよ……)
あれだけの空気だったのに。
あれだけ——
「……っ」
また思い出して、勝手に詰まる。
「ほら」
チャンスがマグを差し出す。
「飲め」
「……いらない」
「いいから」
半ば強引に持たされる。
エリオットはしぶしぶ受け取る。
でも手が少しぎこちない。
チャンスはそれを見て、
「そんなにか?」
って軽く言う。
「……は?」
「昨日のやつ」
さらっと言う。
“昨日のやつ”で済ませるな。
エリオットの眉がぴくっと動く。
「……お前さ」
低く言う。
「なんでそんな普通なの」
チャンスは少しだけ考えて、
「普通じゃダメか?」
って返す。
「ダメとかじゃなくて……」
言葉に詰まる。
「……温度差やばいだろ」
ぽつり。
本音。
チャンスはそれを聞いて、
少しだけ目を細める。
「じゃあ」
マグをテーブルに置いて、
一歩近づく。
「どうしてほしい」
低く聞く。
距離が、昨日の感覚を思い出させる。
「……っ」
エリオットが一瞬固まる。
「別に……」
逃げるように言う。
でもチャンスは止まらない。
「昨日みたいにした方がいいか?」
さらっと言う。
「っ!?」
エリオットの顔が一気に赤くなる。
「朝から何言ってんだよ!!」
声が裏返る。
チャンスは普通の顔。
「聞いただけだろ」
「聞くな!!」
完全に動揺。
チャンスはそれを見て、
「やっぱ思い出してんじゃねぇか」
って笑う。
「……っ、うるさい……」
エリオットは顔を逸らす。
でも——逃げきれない。
チャンスがすぐ近くにいる。
距離が、近い。
「なぁ」
低く呼ばれる。
「……なに」
「そんな嫌か?」
少しだけトーンが落ちる。
エリオットは一瞬黙って——
「……嫌じゃない」
小さく言う。
本音。
でもすぐに、
「けど……」
って続ける。
「なんか、思い出すと無理」
顔を押さえる。
チャンスはそれを見て、
少しだけ笑う。
「面倒くせぇな」
「誰のせいだよ」
即答。
チャンスは肩をすくめる。
「俺だな」
あっさり認める。
エリオットは少しだけ睨んで、
「分かってんならやめろ」
「何を」
「その……普通な感じ」
言いづらそうに言う。
チャンスは一瞬だけ黙って、
それから少しだけ距離を詰める。
「こういうのか?」
「っ……」
近い。
完全に近い。
昨日の記憶がフラッシュバックする。
「朝だぞ……」
弱い抵抗。
チャンスは少しだけ笑う。
「知ってる」
そのまま——
ほんの一瞬だけ、距離を詰める。
軽く触れる程度。
一瞬。
それだけ。
でも——
エリオットの呼吸が止まる。
「……っ」
完全に固まる。
チャンスはすぐ離れて、
「これでいいか?」
って普通に聞く。
エリオットは数秒フリーズして、
それから——
「……無理……」
って呟く。
でもその声は、
さっきよりちょっとだけ柔らかかった。
END