テラーノベル
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「来てくれてありがとう」
勝利を初めて見たのは宣伝用のトラックだった。
一瞬目の前を通り過ぎただけのただの写真にときめいて、店に足を踏み入れたのが数年前。
実物は写真と比べ物にならないくらいで、間近で見るのも話すのも慣れたはずなのに、まだ眩しい。
「なんか今日元気ない?」
勝利が声をかけてくれたので、
最近色々あって、と話すと、
「そうなの?じゃあ、疲れが取れるようにカクテル作るから……それ飲みながら話そう」
と、目の前のバーカウンターに立つ。
「〇〇好きだったよね」と私に聞いて、
シェーカーを振り始めた。
いつもと違う真剣な顔と姿に見惚れていると、勝利がこっちにおいでと笑いながら手招きをする。
「見てるよりやるほうが楽しいし、嫌なことも忘れるよ」
カウンターの中に入って、道具を見せてもらった。
そうして勝利は、こうやって振るんだと
私にシェーカーを持たせ、私の背後に立って、バックハグの体勢でゆっくり振り方を教えてくれた。
初めてのことに集中していると、悩みがとんで行くみたいだった。
それに何より勝利に包まれている手が、体が熱い。
頭がフワフワする。
出来上がったカクテルを2人で並んで飲んでいたら、
思っていたのと少し違うフルーティな香りを感じた。
「何か入れた?」
「うん。……どう?」
「すごく美味しい」
勝利は頷いてほほ笑んだ。
「あっ、そのカクテル!」
周杜くんが通りかかって足を止めた。
「美味しいでしょ?勝利さん、〇〇さんのために閉店後に研究してましたもんね!」
と私たちに笑いかける。
勝利は慌てた様子で
「内緒にしといてって言ったのに……」
と唇に指を立てて笑った。
「料理ちょっとするから……、興味あるだけで、その……」
言い訳みたいに言葉を探してるのが可愛い。
嬉しすぎて、減るのが嫌でもう飲めない。
ありがとう、勝利。
end
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