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カラマリ/桃青

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カラマリ/桃青

1 - カラマリ

♥

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2024年03月26日

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絡まった糸は安易には解けない。

複雑に絡み合ったものとなれば特にそうで

ハサミを使うなんて強引なことは許されない。

ただひたすらに適当にぐちゃぐちゃやってたって解けない。

そうだ、、、あなたが解いてよ。

大丈夫、最後に解き方教えてあげるから。





―カラマリ―





青の誘拐事件

ココ最近起きた誘拐事件。

十代の少年が誘拐された。青の誘拐事件なのは、その少年が綺麗な青髪だったかららしい。

少年は、朝学校へ行ってから夜まで帰ってこなかった。両親は学校に連絡を入れたが、既に下校していると言われ、警察に連絡を入れたが、手がかりが少なすぎるのと、遊びに行ってそのまま帰って来ないだけだろうと早々に捜査を打ち切ってしまった。

近所の方に協力を得ようとしたが、近所の方は口を揃えて

「一緒に歩いてたじゃない」

と言った。



「なるほど、、、それは大変ご心配でしょう。心情お察しします。」

泣き崩れる母親に対して優しく対応する。

「お願いします、、、!どうか、、、うちの香音を、、、!!お願いします!!!」

泣きながら叫ぶように俺に伝えた。

「お母さん、ご心配なのは分かりますが、、、少し落ち着きましょう、、、?」

助手の李犬が母親の背中を優しく撫でる。

「、、、必ずとは言えませんが、、、やれることはやりましょう。」

一探偵として、、、やれることくらいはやらなければならない。

決して安い訳では無いのだから。


翌日、少年が住んでいた地域へ向かう。

「里実さーん、、、今回大丈夫っすかね〜」

李犬は少し心配そうに俺に聞いた。

「なんだよ、心配してんのか?いつも通りちゃちゃっと解決するよ。」

「里実さんは信じてますよ?信じてますけどぉ、、、」

「ますけどぉ?」

「神隠しみたいに消えちゃったんですよ?証拠も、手がかりも何にもないんですよ!?いくら凄腕の里実さんでも、、、」

「はぁ〜、、、いつから俺は信用されなくなったんだか、、、」

「そ、そうじゃないですけど、、、!」

「まぁいい、、、そろそろ着くぞ。」




ただの住宅街は誘拐事件なんて無かったかのようにのどかな雰囲気で溢れていた。

まずは目撃者へ事情聴取。

「すみません、桃乃探偵事務所の者なんですが、誘拐事件について少々お話聞いてもよろしいでしょうか?」

一人目の目撃者は、十七時頃に少年の父親らしき人と歩いてるのを見かけたとのことで、それ以上の情報は得ることが出来なかった。

「十七時頃、、、学生が帰る時間ってそれくらいか、、、」

少し考えるように李犬が呟く。

「少年と親の2人きりだったんっすかね?下校時刻がその辺なら他の学生さんもいると思うんっすけど、、、」

「一人目からはその辺特に言われなかったからな、、、もう少し近所の人を回って、次に少年の友達にも聞きに行こうか」


二人目の目撃者は、少年1人で歩いている所を見かけたとの事。しかし、普段なら真っ直ぐ行く道を、遠回りになる道を通って行ったとのこと。親らしき人は見かけなかったそう。

「遠回りって、、、なーんでそんなことするんだよぉ、、、どー考えたってすぐ帰れた方がいーじゃん」

「まぁま、学生なんてみんな気まぐれだよ。李犬も無かったか?なんとなーく違う道を通りたくなること。」

「ありましたけどぉ、、、」

「ほら、ふてくれてないでちょっと鞄持って」

押し付けるように鞄を李犬に持たせた。

メモ帳とボールペンを取り出し、ささっと簡易的な地図を書いた

画像

少年が通った遠回りの道、、、その死角部分できっと何かが起きた。

「あのー、、、なんっすかそれ」

横から俺の書いた地図を指さして質問してきた李犬。

「どっからどう見ても地図だろ」

「そーは見えないっすけど、、、」

「うるさいな、、、いいんだよ俺が分かれば。」

少しイラついたように返事して、次の目撃情報を得ようと少し早歩きで歩いた。

「待ってくださいよぉ〜」なんて声が聞こえてきだか知らんぷりで足を早めた。

三人目の目撃者は、

画像

丸が着いている箇所が見えるところに住んでいる方に問う。

その人曰く、見慣れない子が通ってるのは見かけた。道の真ん中辺りで大人の方も来て手を繋いで居たので知り合いなんだと思った。とのこと。

「さっきからその”大人”って誰なんっすかね?」

「少年の親と面識がある人は皆”親らしき人”って言ってるな」

「らしきって、、、不確かっすね〜、、、」

「ソイツがどっち方面に行ったのか、、、色々詳しく聞く前に、少年の友達の話を聞きに行こうか」

「え、、、なんでです?このまま近所の方に聞きましょうよ」

「、、、口答えとは、、、随分立派になったね?」

「口答えって、、、そーゆーつもりじゃないですけど、、、」

「特に親しかった二人に聞くだけだ。すぐだよ。」

「、、、分かりました」


一人目の友達は、またね!なんて言って自分だけ先に帰らなければ良かったこと、もっと早く漫画返してあげれば良かったこと、早く一緒に遊びたいこと、、、事件に関係ないことを沢山吐いた。

名前は橙と言うらしい。


二人目の友達は、少年から最近誰かに見られてる気がすると相談を受けてたこと、誘拐された日は両親が普段より遅めに帰ると言われてたこと、それに対しウキウキしていたこと、、、少年について詳しく教えてくれた。

名前は琉斗と言うらしい。


「ほら、結構いい情報が手に入っただろ?」

「琉斗?さんからは手に入りましたけどぉ、、、本当に要りましたぁ?」

「念の為だ。」


お次は戻って四人目の目撃者、少年の家付近の人。

目撃者は、少年の親らしい人と少年の家に入るのを見たとのこと。少しして、着替えて少量の荷物を持った少年と親らしい人が車に乗ってそのままどこか行ったらしい。

目撃者は、どこかお出かけに行ったんだろうな〜と思って深く受け止めてなかったとのことで、もちろん車のナンバーも覚えてない。

「、、、なんで少年はその親らしい人を受け入れて家に入れたんですかね?」

「、、、あくまで予想だけど、、、親らしい人は親とは名乗らなかったんじゃないか?」

「なんで名乗らないと受け入れるんっすか?」

「両親は少年に遅くなることを伝えていた。それを犯人は聞いていたんだよ。だからそれを理由に、近付いたんだよ。両親にお願いされて帰ってくるまで面倒見ることになった、、、とか言ってね。少年の父親の服まで観察して、同じものを買い、周囲からは”親らしく”した。ただのカモフラージュだよ。」

「なんでそんなこと、、、」

「知らない人と歩くのは怪しいだろ?ここら辺の人は皆ご近所付き合いが良いようだからね。すぐに怪しまれると思うよ。」

「だ、だとしても!ソイツとどうしてどこか出かけるんですか!なんで車乗っちゃったんですか!絶対そいつが犯人なんですから!!」

「子供ってのは甘い言葉の奥を考えない。お菓子あげるよ。ゲーム買ってあげる。どこか楽しいところ行こうか。少しでも信じた相手、、、もしくは信じてなくても甘い言葉を鵜呑みにする。もちろん、中高生なら考える余裕が出てくるとは思うが、、、」

「なら!少年はたしか中学生、、、!」

「相手は両親と関わりがあると嘘をついた可能性があるんだぞ?両親の知人が怪しいなんて、、、誰が疑う?少なくとも子供じゃ無理だ。それに、、、どんなに少年が誘拐された訳について俺らが追求しようと、、、起きてしまったことに変わりは無い。そんなことに時間を使うより、犯人が何処にいるのかを探した方がよっぽど有意義だ。」

「、、、そうかも、、、ですけど、、、」

「とは言え、、、これ以上の追求はいくら俺でもほぼ不可能だ。ナンバーも知らなければどっち方面に行ったのかも分からない。お手上げだよ。」

「じゃ、じゃあ少年はどうなっちゃうんですか!?」

「拉致か、性的暴行、、、最悪、、、売買だろうね」

「そんな、、、!!どうにかなりませんか!?こんなの、、、ご両親が可愛そうです、、、!」

「、、、申し訳ないけど、、、車ってなると県外に逃げてる可能性も国外の可能性もある訳だからね、、、これ以上は厳しいよ。」

「そんな、、、可哀想です、、、!!」

まるで両親かのように悲しむ李犬。仕方がないなんて言ってしまったら失礼なのは重々承知の上だが、、、仕方がないものは仕方がない。無理なものは無理なのと同じだ。

「可哀想なのは俺も同じ気持ちだ。助けたいのもな。でも、、、無理なものは無理なんだよ。」

「、、、ちゃちゃっと解決するって言ったくせに、、、」

「、、、嘘になってしまったことは謝る。俺が悪かった。だが、、、解決できなかった件だって少なからずあっただろ、、、?向こうの方が賢かったんだ、、、未解決事件なんて少なくないんだから、、、」

「言い訳ですか」

「そうじゃないけど、、、はぁ、、、なんでそんなに少年に執着する、、、」

「、、、俺、、、少年と面識あるんです」

「、、、そうだったのか」

「はい、、、里実さんに頼まれて買い出ししてる最中に、、、迷子になってるところを助けたんです、、、ご両親と合流できた時に、俺に何度も何度もありがとうって、、、俺が迷子センターに連れてってる最中も泣くの我慢して、、、本当にいい子なんですよ、、、!だから、、、!!」

「、、、李犬の気持ちはよく分かった。だが、、、無理なものは無理なんだ。」

「、、、どうしても、、、ですか、、、」

俺は小さく頷くことしか出来なかった。






「ただいま」

誰に言うでもなく玄関で呟いた。

少し歩いた所にある階段を上り、二階へ上がり奥にある部屋の鍵を開ける。

部屋に入ると少年はこちらへ振り向き、光のない瞳を、助けを求める瞳を俺にみせた。

「、、、ただいま。いい子にしてた?」

少年へ近付き、喋れるようにタオルを取ってあげる。

「、、、お家、、、帰して、、、」

「、、、違うでしょ?いい子にしてたよ。でしょ?」

まったく、違う事を言うなんて、、、本当に悪い子だ。

「、、、いい子に、、、してたよ」

「、、、偉いね」

少年の頭を優しく撫でてあげる。

「そういえば、、、君の両親が心配してたよ。でも大丈夫!手がかりがなくて警察は諦めたから!」

「、、、そんな、、、」

「困っちゃうよねー頭良すぎて、、、」

「、、、なんで、、、なんで、、、こんなことするの、、、?」

「ん?好きだから以外にある?大丈夫大丈夫、、、酷いことはしないよ。だからさ、、、大人しくしててね。」

少年、、、いや、香音は嫌そうな目を逸らした。逸らし目の君も本当に可愛いよ。

足を縛られてどこにも行けない君も

俺の好きにされる君も

何しても可愛いね。


さぁ、答え合わせと行こうか。

犯人は桃乃里実。俺だよ。

疑われないためにこの件を引き受けたし、これのために他県へ引っ越した。ここに香音を知る者なんて居ない。

あなたは解けたかな?いや、ここまで読んでないかな?まぁどうでもいいんだけどさ。

これは個人的意見なんだが、、、時に絡まったままでいいものもあると思うんだ。無理にハサミで切るより、そのままにしといた方がいい事って必ずあると思うんだ。

君もそう思うだろ?

あぁ、別に返事とかしなくていいよ。


さて、そろそろ香音と楽しいことしようかな。


それじゃ、俺の方が賢かったってことで







―カラマリ―





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