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走り続け外壁の外に繋がる門の前に来た。どうやら今は門番が不在らしく、私達は門を開け外へと出た。
さっきぶりの外は、外壁の内側に比べたらずっと安全に感じた。 暗い空に赤褐色の羽が舞う。普段なら美しく輝いているはずの星が全く見えない。
この世は蝶によって消えてしまうのでは無いかと思ってしまうほどの絶望に襲われる。まともに休まずほとんどパニック状態で走り続けているせいで、足が悲鳴をあげていた。
「……ちゃん、ティファニちゃん!」
アルゴちゃんの声で我に帰る。振り返ると、彼女はとても不安そうな目で私を見つめていた。
「ど、どうしたのアルゴちゃん」
「ずっと声かけてたけど、ティファニちゃん気づかないから…怖くて」
「そう…ごめんね、疲れたよね、少し休もっか」
私達は背の低い草が生い茂っている場所に座り込む。走っている時はパニックになっていて感じなかった疲労や足の痛みに襲われる。
ふとエボリュの方を見た。外壁で中の様子は見えないが、微かに煙が上がっているのが見えた。おそらく家が燃えているのだろう、ヴェリアと同じで木造の建築も少なく無い。アルゴちゃんの家も燃えてしまっただろうか。もし燃えていたら、私達が帰る場所はどこにも無いことになる。
私は不安で泣きそうになった。俯き気分を落ち着かせる。これからどうすればいいのだろう、今は何時?そういえばここはどこだっけ。考えるたび希望が無くなって、余計に泣きたくなった。
「大丈夫?」
私は顔を上げ、アルゴちゃんを見る。先程に比べて少し落ち着いていた彼女を見て、私も落ち着く。
「大丈夫だよ……これからどうしよっか」
エボリュに戻ったところで何も残っていない。蝶に殺された死体や、火事で焼けた死体があるかもしれない。そんなもの、アルゴちゃんに見せたく無い。
ヴェリアも同じだ。どちらかと言えばヴェリアの方が状況は最悪だろう。腐敗が進んだ死体に、蝶が群がっている死体。ひたすら気持ち悪くなるだけなので、私は考えるのをやめた。
「本当に、どうしよっか……」
「ティファニちゃん……」
アルゴちゃんの頭を撫でる。ふわふわしている彼女の髪に触れるのは、すごく久しぶりな気がする。
「今日はもう寝ちゃおう?蝶はみんなエボリュの方にいるから、ここは安全だよ」
「うん、ティファニちゃんも休んでね」
「わかってるよ」
私達はそのまま眠りについた。