テラーノベル
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朝。
藍色に染まる運河のそば。
2階建ての家で目を覚ます。
川のせせらぎや、どこからか聞こえてくる路面電車の音、 小鳥のさえずりが心地よい。
朝日は薄いレース生地のカーテンを、通り抜けて部屋を照らす。
部屋は太陽の明かりで淡く色づいている。
パステル調にも見える部屋には昨日の服が散らかっていた。
あぁとても気分が良い。
出窓に置かれている赤色のチューリップは今日も美しく咲いている。
その出窓を大きく開ける。
外から澄んだ風が吹いてくる。
空はまだ朝焼けの橙色を帯びている。
相変わらず、我が国オランダは存在している。
それだけのことだが、これ以外に尊いものは無い。
一階はパン屋で、朝からパンを焼く香ばしい匂いが鼻を通る。
そう言えば、今日は久しぶりに夢を見た。
私は初め暗闇にいたんだ。
どこへ行っても暗闇ばかりで、
少し肌寒かった。
でも歩いていると不思議と足が軽くなってくるのだ。
重力が段々となくなっていくような感覚で、
進むと共に、向こう岸に眩い光が見えた。
無我夢中に走って走って、
後もう少しで追いつけそうで追いつけない、そんな感覚を覚えながらも諦める事が出来なかった。
ようやくの思いで着いた先には、 大きな谷があった。
足元には茨が生い茂り、無情にも足に巻き付いた棘は離れようとしない。
はっとして向こう岸を見ると、
それはそれは綺麗な薔薇の原っぱが広がっていた。
一面赤色の絨毯がひかれているようだった。
その時、向こう岸へ行きたい、という強い欲望に駆られて、足を動かそうとした。
しかし、茨の棘が動くたびに深く深くと突き刺さる
痛みなんか気にしてられないほどの強い欲望が心を支配した。
ようやく抜け出せたかと思えば、その先に地面は無い。
そのまま深い深い谷の底へと永遠に落ちていくところで目が覚めた。
今日はサイクリングにでも行こうかと考えている。
川沿いの良さげなカフェを巡る休日というものも悪くはないだろう。
責務に追われない日はとても久しい。
この休日を有意義に使おう。
そう心に決め、支度を進める。
まずは顔を洗い、メイクをする。
男…まぁ国に正確な性別という概念は無いが、私の性自認は男だ。
大抵は男だが、エストニア、ベラルーシ、フランス…それからモンゴルあたりは女だった筈だ。
一通りのアイメイクを終え、棚にメイク用品をしまう。
いつもなら、ここで朝ご飯を食べるはずだが、今日は外で食べよう。
仕事帰りや、移動の最中に見つけた気になるお店は、全てメモしてある。
「今日は…そうだな…。
ここのカフェにでもいこうかな。
モーニングが安いって聞いたし。」
国なんだから、お金の心配をする身分じゃないと言われても仕方がないが、どうも高いものを買えない性分なのだ。
昔は、周りの国にはケチだと罵られたりなどもしたが、自分の考えを疑ったことはない。
布の財布を手に取り、少しの札と、少しの硬貨を入れた。
そして、いつものジーンズとシャツに、紺のキャスケット帽をふわりと被る。
最後に、革の肩掛けカバンを持ち、ドアノブに手をかける。
開けると同時にふわりと、外の人や土の香りが流れ込み、白い光が目を刺した。
清々しい朝だ。
そして、玄関に置いてあった自転車にまたがった。
一漕ぎすれば、滑らかに地面をタイヤが押していく。
日陰に入ればまだ肌寒い気温だが、頬を掠めていく風が、日を重ねるごとに暖かくなっていくのを感じていた。
こんな毎日が、いつまでも続けばいいのに。
デビル@永遠の3ちゃい
コメント
3件
いつもと違う雰囲気で攻めてきたね?好きだよそういうのも!!!!!!!! 静かすぎて今回は逆に不穏なのよ。怖い。いい意味で。 ケチ…うん私も多分そう言うよ。節約かとても読んで誤魔化しとこうかな? 日常シーンを書くの上手くない?詩的で超引き込まれたんですけど!? ほんと丼ちゃん大好き!!!!!!