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第7話 家族
おんりー君は、よく病室で手紙を書く。
両親に向けての手紙だとか。
手紙を書いている時の彼はとても穏やかな顔で、思わず微笑んでしまう。
 「手紙、お願いします」
「はい、預かるね」
 彼はきっちりと封筒に入れて、宛先と切手を貼ったものを僕に渡してくれる。
僕はそれを郵便ポストに届けるという役目だ。
 そもそもこの病院にはポストがあるので、そこに投函するだけ。
それでも、最近は彼の 体調があまり良くないから、僕に渡すだけだ。
 彼が両親に宛てた手紙を書いても、両親から手紙が返ってきたことは一度もない。
 「今回は返事、来るといいな…」
 ポストの中には、息子からの手紙。
思わず溜息を吐いてしまう。
 「…あの子はいつになったら帰ってこられるのやら…」
 毎月毎月入院費が嵩み、生活の質は悪くなる一方だ。あの子の弟となる子も産まれたし、正直生活が辛いのは事実だ。
 「おかーさん?どうしたの?」
「…なんでもないよ。さ、晩御飯の準備しましょ‼︎」
 手紙を木箱に入れて、台所に向かった。
 「おんりー君、ここ数日調子いいね。
今日から、ベットから起き上がって動いても大丈夫だよ。」
「ありがとうございます!」
 最近の検診での彼の体調は快調だ。
少し前までは体調が良くなかったから心配だったけれど、 今は大丈夫そうでほっとした。
 今日はおんりー君のお母さんが来ると聞いている。もう着た服は鞄に詰めてあるので、これを渡せばいいだけだ。
その時、胸元のPHSが鳴った。
「はい、小児科のドズルです」
「先生、おんりー君のお母さんがいらっしゃいましたよ」
「…はい、すぐ行きます‼︎」
 「先生、僕の母親来たの?」
「うん、先生行ってくるね」
 僕は机の上の鞄を取り、急ぎめに病室を後にした。
 「先日はうちの息子がご迷惑をおかけしたと訊きました…本当に申し訳ございません…」
「いえいえ、本人の体調が変化するようなことがなかったので、大丈夫ですよ。」
「それに、患者さんが入院生活が苦痛で病院から抜け出す事例はよくありますから。」
 「あの子の服、新しく買ったんです。着られないかもですが…」
「はい、お預かりしますね。それと、こちらが着替えです。」
 「今日は面会、されますか?最近体調も良さそうですよ〜」
「いえ…すみません。ではこれで…」
おんりー君のお母さんはいつも通り出口に向かって歩き始めた。
その時、後ろからパタパタと足音が聞こえた。
 「待ってよお母さん‼︎」
「…」
彼のお母さんは、何も話さない。
 「おんりー君?走っちゃダメだよ。」
走って発作が出たら大変なことになるので、僕は出来る限り優しくその事を咎めた。
 「…ごめんなさい。」
そう言って、下を向いたまま黙ってしまった。
 彼のお母さんは、彼を見てくれない。
ねむいですたすけてちょんまげ(by主)