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────嫌
自分の声が頭の中でフラッシュバックする。脳髄をぐちゃぐちゃにされる様な感覚がして吐き気がする。
あの時凪が立ち去った後、弱々しい声で呟いた私の声だ。
思い出したくない記憶ほど何故思い出してしまうのだろう?私はとうに昔のような明るい生活を諦めている。私はそう思っている、言い聞かせている?
死のうという手段を取るには弱い私だ。そんな勇気がある訳がない。私のように一人で抱え続けることに比べ、誰かにSOSを出せる人というのは、本当に尊敬するものだ。例え、その助けてという思いがそれが爆発してしまったとしても、分かりづらくてもずっと。
自殺…その手段が私はまだ最善とは思わない。私に救いようがあるのかは分からないが、そう思えているだけでも助けを求めることには事足りるだろうか?
薄暗い部屋の中で答えの返ってくることはない疑問を自分自身に問い掛けながら時間は過ぎて行く。時計の針は一時を指していた。
頭で考える事をやめたくても、やめることが出来ない。どんだけ辛くたって嫌だって心の傷が癒える事はなく血が流れ続けるのに。
まずなんで私は他の人に助けを求めることに拒絶を示しているのだろうか?
それは私だけではないのは知っている。他の人に構ってほしいと勘違いされそうで怖いのだろう。
迷惑を掛けたくないという気持ちよりも、自分の僅かな逃げ道が塞がれるのが怖いのかもしれない。
嫌われるのが怖い、迷惑を掛けるのがこわい。そう思ってしまうのは仕方がない。でも意外と嫌われたりそんなことは無いのかもしれない。そう頭では少しわかっている。私だって元気だった時、それなりに仲の良い友達のSOSに気付いていた。
悩んでいる人は分かりづらくともSOSを出せた所で、自分からその話を持ち出すことが難しい。分かっていた。それでも私は「辛かったね」「いつでも話聞くよ」といった言葉を掛ける事が出来なかった。
叶恵の時、私はあからさまに泣いている所を見た。私にとってはそれを放っておく方が難しかった。
案外、周りの人は助けを受け入れてくれるかもしれない。昔の私が一例だ。仲の良い友達である程信頼出来る。でもその分、嫌われるというリスクが怖い。
紗奈は純粋にずっと私のことを心配してくれている。風の噂で不登校だと聞いたんだろう。詳しい事情を話すことは無い儘。
スマホの通知が鳴った。
『辛いあなたへ、──』
よくみる電話相談口の広告だ。
スマホを投げ出して、仰向きに寝転がる。
私も辛いけど、こんな辛い気持ちを隠したまま元気に取り繕ってる人も辛いだろうな。
どこか他人事に思えたけど、近しいようで遠い。
救う側は救いたくても中々救えないし、救われる側は助けを求めることが難しい。
そんなすれ違いが色んな所で起きているんだろう、と何処か悲しくなった。