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【Messiah】
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「救世主さま!」
側に駆け寄る子供達の頭を撫でながら、微笑む。
「みんな、変わりはありませんか?」
「はい、私達は元気です!」
「ですが、最近お婆様の加減が良くなくて…」
「それは大変なことです。これをお持ちなさい。滋養強壮効果のある薬草です。きっと役に立ってくれるでしょう」
「ありがとうございます、救世主さま!」
ひとびとの笑ったかおがすきだった。
救世主なんて名で呼んでくれるが、それはおそれ多く、身分不相応なこと。
せいぜい自分に出来ることといえば、寄り添って話を聴くことと、薬学の知識で、不調や苦痛を少しばかり和らげることくらい。
それでもみなが求めてくれるならば。
必要とされるのならば、なんだってできた。
「救世主様、お知恵をお借りしたい。病に倒れた信徒が居るのですが、私どもではなんとも」
尋ねて来た顔見知りの司教から頼まれ、案内された教会へ足を踏み入れる。
しかし、話に上がったような病床の者の姿はどこにもなく、不思議に思い振り返ると。
数名の男達から取り囲まれ、彼らの持つ鋭利な金属が、身体に何度も食い込む。
「…お前の事が、ずっとずっと目障りで仕方なかったのだ。いずれ得た信仰と財産で、私を脅かすつもりだったのだろうが、そうはさせん」
「調子に乗るからこうなる。安心しろ、お前の築いたモノは全て、私が引き受けるとしよう」
床に倒れ込みながら、司教を見上げる。
どうして。
貴方は神に仕える身。こんな事をしては、神聖なお役目に支障が、さわりが出てしまうかもしれないというのに
『いずれ得た信仰と財産で、私を脅かすつもりだったのだろう』
司教が溢した言葉が、頭の中に何度も巡る。
…貴方の権威を奪おうと思ったことなど、一度だってない。
ただ、みながわらってくらせるせかいを。
飢えも苦しみも弾圧もない、自由な世になってほしかった。
…あのこの。
おばあさまのかげんは、よくなっただろうか
どうか すこしでも らくになっていますように
だんだんと薄れ行く視界の先の、引き攣った泣き笑いのような顔を見つめる
……なにが、わるかった?
Reincarnation…