「さきー!」
「ごめん、お待たせ」
「大丈夫だよー!」
彼が右手を差し出す。
私は左手で彼の右手を握る。
温かいのに何処か物足りない。
心に開いた穴を埋めてくれる人はもういない。
私の生涯でひとりの愛した人。
紗良はもういない。
何度彼女の名前を呼ぼうと返事が返ってくることは無い。
好きでもない男。
絶対に好きになるはずがないのに、彼を利用している。
もう、どうでもいい。
「ごめんね紗季ちゃん。」
「大丈夫ですよ、おばさん。」
「紗良ちゃんが亡くなったのはもう12年前か。」
「もう、そんなに経ったんですね。」
紗良のおばさんとは昔から仲良くしている。
紗良の母の姉で仲がいいそうだ。
「私の息子も12年前に亡くなったんだよ。」
「え?」
「おばさんの苗字って、」
「ん?あぁ片桐だよ」
「片桐、」
片桐 悠真
「息子さんって12年前に海で溺れて亡くなった子ですか?」
「あぁ、そうだよ」
「ち、ちなみに!紗良と息子さんって会われたことは、?」
「無いよ、元々何度誘ってもゆうまは一緒に着いて来てくれなかったからね。」
出会ったことがない。
「中学、息子さんと一緒でした」
嘘をついた。
「え?!そうなの?」
「ゆうまはおばあちゃんの家へ預けてたから。」
「そう、なんですね。」
紗良は従兄弟と、あんなことを。
「どうかした?」
「い、いえ、なんでも無いです。」
「そう?じゃあ帰ろっか」
「はい、」
ー紗良、俺達って従兄弟なのか?
そうだよー
ー前から知ってたの
うんー
ーまぁ、従兄弟とか関係ないよな
さぁ、どうだろー
ー父さんにバレたら終わりだから
おじさん?(笑)ー
ー知ってんの?
従兄弟でしょー
ーそっか
ーねぇ俺の事好き?
だから、私が好きなのは紗季だってー
何回言わせんの?ー
ーごめん、でも俺本気で紗良の事好きだから
私は好きじゃないよー
私らの関係性なんて単なるセフレでしょ?ー
ー紗良はそうかもしれないけど俺は違うよ
はいはいー
私は違うってー
私が世界で一番大好きで愛してるのは紗季だけだからー
一生変わることは無いと思うよー
ーそっかぁ、
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