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苦手な方回れ右
それではスタート
夕焼けが、屋上をオレンジ色に染めていた。
指を絡めたまま、二人はしばらく何も言わずに立っていた。
風の音だけが、やけに大きく聞こえる。
「……ねえ、ゆあんくん」
うりが、小さく呼ぶ。
「なに?」
「俺さ……」
一瞬、言葉に詰まってから、続きを絞り出す。
「ちゃんと、大事にされてるって……感じたい」
その声は、強がっていなくて、
ただ……
ただ………素直だった。
ゆあんくんは息を吸って、うりの顔を見る。
夕焼けのせいか、目が潤んでいるように見えた。
「俺も」
低い声で言う。
「ずっと我慢してた」
「……なにを?」
「触れたいって気持ち」
うりの目が、少し見開かれる。
でも、逃げなかった。
ゆあんくんは、そっと両手でうりの頬に触れた。
指先が、震えている。
「嫌だったら、言って」
「……嫌じゃない」
むしろ、うりの方から一歩近づいた。
距離が、なくなる。
呼吸が、混ざる。
一瞬、ためらってから――
ゆあんくんは、そっと顔を近づけた。
触れるか触れないかの距離で、止まる。
「……初めてだから」
「俺も」
その言葉が、合図みたいだった。
ゆっくり、ゆっくり。
唇が、かすかに触れる。
ほんの一瞬なのに、
胸がぎゅっと締めつけられる。
「……っ」
うりが小さく息を漏らす。
ゆあんくんは慌てて離れた。
「ご、ごめん……!」
「なんで謝るの」
うりはそう言って、でも頬を赤く染めている。
「……もう一回」
「え?」
「今度は、俺から」
うりは目を閉じて、背伸びをした。
今度は、逃げなかった。
ゆあんくんは受け止めるように、優しく唇を重ねる。
さっきより、少し長く。
でも、それ以上はしない。
離れた瞬間、二人とも顔が真っ赤だった。
「……心臓、うるさい」
「俺も」
思わず笑ってしまう。
うりは、ゆあんくんの制服の袖をぎゅっと掴む。
「これで……」
「うん?」
「ちゃんと、俺のだって思えた」
ゆあんくんは、照れながらも、はっきり言った。
「俺は最初から、うりのだよ」
夕焼けの中、二人はもう一度、額を寄せた。
初めてのキスは、
上手でも、大人でもなかった。
でも、
誰よりも大切な人と交わした、
忘れられない温度だけは、確かに残っていた。