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一体、何時からだろう。
この狂った日々に慣れてしまったのは。
今日も鳴り響く轟音、それはとてつもなく耳に伝わり嫌気がさす。
雨で泥濘ができ、水溜まりに震える足を付けないように皆上げて座っている。
塹壕の中は悪臭がする。もう、これすら慣れてしまった自分が怖いな。
興奮と恐怖、死の絶望と生の希望。人は愚かなものだと改めて思う。
神はこれを見て嘲笑うのだろうか。
……………………ド!グライ……ド…
「グライドー!!!」
「うおっ!?」
俺は親友のバリス・ザブロッキーに呼び
戻される。バリスはメガネをかけ直して
俺に話す。
「…しっかりしろよ、ここは戦場だぞ?」
「はは…分かってるさ…な、バリス。」
「ん?どうした?」
「お前、生きれる自信あるか?」
「…………さあな。でも、お前よりは生きてみせるさ」
バリスは俺の肩をポンポンと叩きなんと
か笑ってみせる。
「…そうか。今にも死にそうな顔してる癖にな」
「はあ?なんだお前…お前よりは訓練してるっつうの……ってうわ!!」
バリスがそう大口を叩いたと同時に、敵の迫撃砲が塹壕の目の前で爆発し、土が飛び散り、轟音が耳を貫く。慌てて俺とバリスは頭を抱える。
「………俺らまだ若いのに……クソが!」.
「バリス、落ち着こうぜ…ここは笑って…」
「おい、それはジョークか?グライド・ネムロ」
バリスが睨みつける。
「ジョークにしては笑えねえな…この頭でっかち野郎め」
「唇紫お化けに言われても悔しくないね、残念だったな」
俺はバリスと言い合った。 でも、これがいいんだ。これでいい。こんなことは
些細な幸せで、その幸せがどれだけ必要なのか再確認できる。俺はバリスと喋ると落ち着くんだ。
だが、そんな時間はもう無い。そう、グレイ分隊長が立ち上がり俺たち目掛け熱く演説を始めた。
「…お前ら!!英雄になりたいか?なりたいのならば生き延びろ。この地獄をな。なりたくないのなら離脱、すなわち死だ!!!……勇猛果敢に進め、それすらできないなら死ね。…この国を、愛する人を、友を、家族を…みんなを護りたいならば、立ち上がれ!!!」
そう言うと、塹壕の兵士たちはバッと立ち上がった。そして、グレイ分隊長は歩き出しハシゴを少し登って敵の塹壕の様子を見渡した。そして、ハンドガンと笛を取り出した。
ああ、始まるのか突撃が。
すると、バリスがこう言った。
「…俺は、生きるからこんなこと言う必要はねえけどさ…もし死んじまった時のために言っとくよ………お前の友達になれて最高だったぜ、ありがとな。グライド。」
バリスが少し恥ずかしそうに、そして悲しそうに俺にそう言った。俺はバリスとハグをした。
「バリス……お前は、ホント良い奴だよ。俺と一緒に居てくれてありがとう…」
俺は涙を流した。バリスは少し笑いながら「泣くなよ、生きれればまた会えんだからさ」と俺に言ってくれた。
そんな会話も虚しく、笛が鳴り響いた。グレイ分隊長は叫んだ。
「総員、突撃せよ!!!!!」
俺たちは塹壕をよじ登り声をあげ叫びならがら敵に目掛けて走り出した。
「うぉぉおおおお!!!!!!」
「ジャーマルー帝国に、栄光あれ!!!」
「母さん!!母さん!!!!!」
「死んでたまるかあああ!!」
様々な声を揉み消すかのように、敵の銃撃が開始した。
俺とバリスは恐怖と、生への執着と、防衛本能で伏せてしまった。
顔を上げた。
飛び散る脳漿。
倒れる兵士たち。
真っ赤に染まる大地。
真っ黒に染る空。
それでも突撃する兵士たち。
なんの為に…俺たちは生まれてきたんだろう?
俺は、生きれるのか。バリスは、生きれるのだろうか。
共に……この地獄・戦場を………
乗り越えられるのだろうか。