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放課後、校舎の屋上近くにある“旧放送室”には、今でもひとりの生徒が通っているという。もう使われなくなった古いマイクとスピーカー。
スイッチを入れても、学校中のどこにも音は届かない。
けれど——その部屋だけは、なぜか声が響く。
「午後五時をお知らせします。……今日も、誰かがこの声を聴いてくれているといいな」
そう呟くのは、放送委員だった結城真尋(ゆうき まひろ)。
彼はもう卒業しているはずの“存在しない生徒”だった。
「おかしいな、またスイッチが入ってる……」
後輩の千景は、誰もいない放送室でマイクの赤いランプを見つめた。
そこに流れてきたのは、確かに“声”だった。
けれど、それは彼女が一度も聞いたことのない——
それでいて、なぜか涙が出そうになるほど懐かしい声だった。