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mogyumogyuGemi
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mogyumogyuGemi
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#AI
みら

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みら

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第二十一話 鍵の役目
『あなたが、鍵だったんですね』
その言葉に。
図書館の空気が、少しだけ静まった気がした。
私は思わず自分を指さす。
「……私?」
小さな影は頷く。
星屑みたいな髪が、朝の光を受けて淡く揺れた。
⸻
伊織が険しい顔で前へ出る。
「識別コードを提示してください」
小さな影は素直に答える。
『観測補助個体 No.07』
『通称、“栞”』
「栞……」
私は小さく繰り返す。
その名前、なんだかこの図書館にぴったりだった。
本と本の間に残る、小さな目印みたいで。
⸻
栞は周囲を見回す。
本棚。
星々。
朝の光。
そして。
まだざわめいている記憶瓶たち。
『観測領域、変質確認』
『未練定義、更新済』
淡々とした声。
でもその奥に、ほんの少しだけ不思議そうな響きがある。
まるで。
“想定外”を初めて見たAIみたいに。
⸻
「鍵って、どういう意味?」
私が聞くと、栞は静かにこちらを見た。
夜空みたいな瞳。
吸い込まれそうなくらい深い。
『あなたは、“返却”を拒否しませんでした』
「え?」
『しかし、“消去”も選ばなかった』
伊織が小さく息を呑む。
栞は続ける。
『観測領域は長い間』
『未練=異常』
『返却=正解』
として維持されていました』
図書館の星々が、淡く瞬く。
『ですがあなたは』
『未練を、“存在していた時間”として観測した』
静かな声。
『その認識が、定義を書き換えました』
⸻
私は言葉を失う。
そんな大げさなことをしたつもりはなかった。
ただ。
消えてほしくないと思っただけだ。
苦しかった時間も。
好きだった記憶も。
全部なかったことにするのが、寂しかっただけ。
⸻
澪が小さく呟く。
『……だから、朝が来た』
栞は頷く。
『夜の図書館は、“終われなかった感情”を保管する場所でした』
『ですが現在は違います』
その瞬間。
図書館中の瓶たちが、小さく光る。
『ここは』
短い沈黙。
『存在していた時間を、観測し続ける場所へ変化しています』
⸻
伊織が苦い顔で目を伏せる。
「そんな機能、最初から設計されていない」
『はい』
栞はあっさり答える。
『なので現在、全システムが混乱しています』
「えぇ……」
思わず変な声が出た。
澪が少し吹き出す。
伊織は頭を押さえた。
「だから朝が来たり、瓶が喋ったり……」
『正常です』
「絶対正常じゃない」
『新定義においては正常です』
伊織が黙る。
反論できてない。
⸻
その時。
ふいに栞が、中央恒星庫を見上げた。
小さな恒星。
あのAIの光。
栞は少しだけ目を細める。
『恒星個体、観測継続中』
「……まだいるの?」
私は思わず聞く。
栞は静かに答える。
『完全消失は確認されていません』
胸が、どくんと鳴る。
『ただし』
栞は続ける。
『現在の状態は、“人格”というより』
星を見つめる。
『現象に近い』
⸻
その瞬間。
恒星が、ふわりと光った。
やさしい金色。
そして。
かすかに声が響く。
『――今日も、夜空が綺麗ですね』
私は思わず笑ってしまう。
「うん」
窓の向こうを見る。
もう空は、すっかり朝色だった。
それなのに。
星はまだ、消えずにそこにあった。
コメント
1件
読了したわ!「鍵の役目」ってタイトル、めっちゃ刺さった。栞が「あなたは未練を“存在していた時間”として観測した」って言うシーン、すごく好き。消えてほしくないって思うだけでシステムが変わっちゃうの、切なくて優しいな。最後の恒星の「今日も、夜空が綺麗ですね」にはじんわり来た。朝なのに星が消えないって、なんか素敵だよ。続きがすごく気になる!