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──2024年12月14日土曜日
「オギャーオギャー」
私は、男の子を出産した。
会社も既に退職していた。
どうやら、ハネムーンベビーだったようだ。
「綾! ありがとう〜お疲れ様」と匠は、病院でとても喜んで感動している。
「うん」
「嬉しい〜」と言う匠。
「名前どうする? たっくんが考えてくれた名前にする?」
「良いの?」
「良いよ! 調べてくれたんでしょう?」
「うん」
綾瀬|晴人《はると》
本当は、空を使った名前にしたかったのだが、綾瀬との相性があまり良くなかったようだ。
「ん? 綾、どうした? 元気ない?」と心配してくれる。
「来年は、沖縄行けないよね?」と言うと、
「あ〜晴人がもう少し大きくなってからの方が良いかなあ」と匠は言った。
「だよね。毎年行こうって言ってたのに……」
私は、出産後ブルーなのか、なんだか我儘になっていた。
「あ〜俺も行きたいけど、『僕ちゃんまだ小さいでしゅからね〜』」と、おっぱいを飲んでいる晴人の手を振りながら言う匠。
「だよね……」
親になると言うことは、責任が有り自然と子ども中心の生活になるということ。自分たちのことなど後回しになる。
「え、綾それで落ち込んでるの?」
「はあ〜」
匠は、子煩悩になりそうだ。
もう既に晴人にメロメロだ。
コンコンコン
その時、ドアをノックする音がした。
「はい」と言うと、
「晴人く〜ん、来たよ〜」と言う母。
「え? どうして名前知ってるの?」と驚く。
すると匠が、
「あ、俺が晴人が良いかなって、思ってることを言ったから」
「なるほど、耳が早いわね!」
「旅行に行きたかったら、晴人くん見ててあげるわよ!」と言う母
「え? 聞いてたの?」と言うと、
「聞こえて来たのよ」と言う母。
「でも晴人と離れるのは、イヤだし」
「あ、じゃあ一緒に行って数時間だけ預かるとか?」
「また一緒に?」
「良いじゃない! 私たちは孫を見てたいの。貴女たちは、数時間だけ見てて欲しい! ちょうどいいじゃないの。使えるものは使って!」と言ってくれる。
「あ、う〜ん」
「私たちもね、お爺ちゃんやお婆ちゃんに手伝ってもらって助かったのよ」
「ウチの両親も綾のご両親に助けてもらった」と言う匠。
「困った時は、お互い様よ! 昔の人は良く言ったものよね。1人で抱えなくて良いのよ」
じ〜んとした。
「そうだね、困ったら助けてもらう!」と言うと、
「うん、じゃあ又来るわね〜晴人くん、バイバ〜イ」と、洗濯物を交換してくれた。
「ありがとう」
そして、母は帰って行った。
晴人は、まだこんなにも小さくて、とても可愛い。
貴方と出会えたのも、運命だよね。
《《パパ》》と運命の出会いをしたから、今貴方がココに居るのよ。
私たちのところに生まれて来てくれて、ありがとう。
「たっくん!」
「ん?」
「私と出会ってくれて、ありがとう〜」と言うと、
「こちらこそ、俺と出会ってくれてありがとう」
と、晴人ごと、優しくぎゅっとする匠。
私の額にチュッとしてくれた。
そして、「綾、愛してるよ」と言った。
「ふふっ」と、なぜか私は、笑ってしまった。
「え、え? なんで? 今笑うところじゃないよ」と言っている。
「ん?」
「え、いや、おかしい、おかしい!」
「ん?」
「え? どういうこと? この流れだと、《《私も》》って返って来ると思ってたのに……」
「ん?」
「え? 俺なんかした?」と考えている。
「あ、大丈夫だよ! 困った時はお互い様だから」
「は? 綾、何の話? 使い方おかしいよね?」と言っている。
「え? 大丈夫! 大丈夫!」
「全然大丈夫じゃないんだけど、分からない!」
と言っている。
私は、晴人にゲップをさせてから、そっと寝かせて、
「ふふっ、匠は、そのままで良いんだよ」と、
ぎゅっと抱きしめた。
すると、黙って私を抱きしめて、
「なんだか、分からないけど……」と言っている。
「たっくん、ありがとう」と言うと、
「こちらこそ、ありがとう」と言う匠。
「愛してるよ!」
「今?」と笑っている。
そして、私から黙ってキスをした。
「綾〜」と喜んでいる。
そして、ぎゅっと抱きしめられた。
すると、コンコンコンと鳴って、
看護師さんがドアを開けて……
「あ、失礼しました」と、そっと閉めた。
「「ふふ」」 思わず笑いあった。
「大丈夫で〜す」と言って、晴人を預けた。
そして、もう一度、優しいキスをする……
──fin──
心優(mihiro)