テラーノベル
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ともさんのとこにいなさいとクロノアさんに言われて素直に応じる。
ともさんも俺が来ることを知っていたのか嬉しそうに招き入れてくれた。
みんな優しくて、何も聞かずいてくれた。
「美味い飯食って寝ろ!」
そう言って食べきれないくらいの美味しそうな料理をたくさん、ともさんが出してくれた。
お腹いっぱいになって眠くなった時、ふっと頭をよぎる悪夢のような出来事。
そんな時、ソーラさんが手を握ってくれた。
小さくて柔らかい優しい手で。
「大丈夫よ。ここにはトラゾーくんを傷付ける人はいないわ。みんなあなたの味方よ」
ふわりと花のように笑う顔にボロボロと涙が落ちていった。
そんな俺の背中を優しく撫でるソーラさんはずっと大丈夫と言ってくれていた。
あの時、しにがみさんがしてくれていたように。
泣いたせいと、お腹が満たされたおかげでふわふわと眠くなってきた俺はそのまま任せるようにして眠りにおちた。
両手を誰かに握られてる感じがして安心感であれだけ魘されて悩まされた出来事は霧散していった。
目を覚ました時、俺の両脇にはぺいんととしにがみさんがいて、手を握りしめてくれていた。
「ぺいんと…?…しにがみさん…?」
ふわっと2人からそれぞれ違ういい匂いがした。
「?、風呂、入ったの?」
「え?あー、走ってきたからともさんにシャワー借りたんだよ」
「僕もです」
「なんかいつもと匂い違うけど、安心する…」
握られる手を握り返す。
「「ん゛ん゛っ」」
「え、大丈夫か?」
「だ、大丈夫大丈夫!」
「お、お気になさらず!」
まだふわついてる頭を振って起き上がる。
「…クロノアさんは?」
「もうじき来るんじゃねーの?」
「……なんかあった?」
じっとぺいんとを見つめるも、きょとんと首を傾げられた。
「何にも?たまたま俺らに別々の依頼が入っただけで、寂しがりやのトラゾーきゅんが泣かないようにともさんとこに連れてきただけだけど?」
「……」
無言でぺいんとに肩パンする。
「い゛ってぇえ!!」
「トラゾーきゅんって言うんじゃねぇ」
「今のはぺいんとさんが百パー悪い」
「……ゔ…ごめん、トラゾー。なんかお前見てホッとしたからさ」
心配かけてしまったことが嫌で、でも嬉しくて。
「…ううん、ありがと。ぺいんと、しにがみさんも」
「「どういたしまして」」
いつもの笑顔の2人にあの時感じた殺気みたいなのはやっぱ気のせいだったのだと胸を撫で下ろす。
「あ、ちょっと待ってろ」
「うん…?」
「クロノアさんから電話です。ちょっと行ってきますね」
グループ通話なら俺の方にもくるはずだけど、気を遣ってくれたのかもしれない。
クロノアさんは気遣いのできる人だから、そうなのだろう。
「分かった…」
部屋を出ていく2人に寂しさを感じた。
「なんか仲間はずれみてぇ…」
俺は簡単なことしかさせてもらえない。
みんなの役に立ちたいのに。
「いや、…男に襲われる時点で役に立たないか…」
自分で言って自分で落ち込む。
まだ色濃く残る鬱血痕。
「っ…」
それを隠すように袖を引っ張る。
「ただいま。やっぱクロノアさんすぐ来るって。トラゾーが心配してたこと伝えたら喜んでだぜ」
「急いでくるって言ってましたよ」
「うん、」
隠した手首を2人に掴まれて、びくりと肩が跳ねた。
「トラゾーの傷、俺らでちゃんと消せるようにしてやるから」
「だから、あと1日だけ待っててくれませんか」
「あと、1日…?みんなまたどっか行くの?」
また独りになるということなのだろうか。
「今度は別件で僕たちに依頼が入ったんです。トラゾーさんはまだ本調子じゃないので、3人で行ってきます」
「あと1日の辛抱だから。待っててくれるよな、トラゾー」
「……」
むっとしていたのが顔に出ていたのか2人が目を見開いた。
「トラゾー拗ねてんの?」
「…拗ねてない」
「拗ねてるんですか、トラゾーさん」
「…拗ねてねぇってば」
ぷいと横を向くと、ぺいんとたちは笑い出した。
「やっぱ寂しがりやじゃんか!」
「これは、トラゾーきゅんと言われても仕方ないのでは?」
「拗ねてない!あとトラゾーきゅんって言うな!」
吹き出して大笑いし出した2人にムカついて肩パンをしてやった。
それから少ししてクロノアさんも来て、俺を見るなり抱きしめてきた。
「あー……癒される…」
「く、クロノアさん?」
ぎゅうっと隙間なく抱きしめられて、俺もおずおずと背中に手を回した。
「大丈夫ですか…?やっぱり何かありましたか…?」
「ん?ううん。”何も”ないよ」
にこりと穏やかに笑う顔。
違和感は全く感じられなくて、俺の気にしすぎかと思って、そうですかと返した。
「ともさんのご飯食べれたんだね」
「はい、美味しくて食べすぎちゃいました…」
「ふふ、安心した」
俺を離したクロノアさんが困った顔をする。
「ぺいんとたちから聞いてると思うけど、もう1日だけともさんのところにいてくれる?」
「……ホントに1日ですか」
「うん。約束するよ」
「……嫌です」
「っ、」
独りになるのも、役に立てないのも。
「…でも、クロノアさんたちを困らせる方が嫌なんで我慢します…」
俯いてクロノアさんの服を引っ張る。
「明日、俺のことちゃんと迎えにきてくださいね」
「っっ、…勿論。遅くなるかもしれないけど、絶対に迎えにくるから」
ホッとして目の前の人を見上げて笑うとクロノアさんが勢いよく横を向いた。
「⁇、クロノアさん?大丈夫ですか?」
「、大丈夫だよ。ちょっと心臓に悪かっただけ」
「⁇⁇」
どういう意味かは分からなかったけどクロノアさんが言うなら大丈夫なんだろう。
「もう、行っちゃうんですか?」
「うん。俺らも早めに終わらせたいけど、事情があるからね。だから、前倒すために早めに出るよ」
俺の手を優しく握るクロノアさんは優しく笑っていた。
「…気をつけてくださいね。怪我も、しないでくださいよ」
「気をつけるよ。大丈夫、今回は絶対に無傷で帰ってくるから」
「そんな危ないことするなら俺も…」
そう言いかけるとクロノアさんの目の色が変わった。
「ダメだ。……お願いだからトラゾーはここでともさんと一緒にいて」
握られる手に力が込められる。
「は、はい…」
それに、真剣な表情にも頷くしかなかった。
「ん、いい子だね」
「うわっちょっ、子供扱いしないでください。俺、小さい子じゃないです」
「俺より年下でしょ?じゃあいいじゃん」
「よくねぇです。たった一個ですし、なんか減ります…」
わしゃわしゃと頭を撫でていたクロノアさんの手を掴む。
「じゃ行ってくるね」
「はい、行ってらっしゃい。俺待ってますね」
「うん」
背を向けて部屋を出て行くクロノアさんに着いて行くようにぺいんととしにがみさんも出て行く。
扉が閉まる前に2人が手を振ってきたから俺も振り返した。
「……」
クロノアさんに撫でられた頭に自分の手を置く。
「ふふっ、」
まだ、あたたかみのあるそこにクロノアさんを感じていた。
「…いや、我ながら気持ち悪いな、それは」
明日また待つようになるけどちゃんと迎えに来るって約束した。
「ともさんとこ行ってこよ」
沈みかけた気持ちは3人の顔を見たおかげでふわりと浮いていて。
悪夢のような出来事も忘れさせてくれるように感じたから。
コメント
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甘々なトラゾーさん可愛い...😪💕ちょっと子供っぽいのほんとにさいこーです!
う"っ…尊い(◜¬◝ ) trzさんが可愛すぎる…!!!! trzさん一つ一つの行動や仕草が尊い…♡