テラーノベル
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1月1日、新年という行事に巻き込まれるような形で参加している。戦時下、そんなことも忘れて人々は宴や飲み会、遊びに暮れている。
荒れ果てた荒野に少し雪が積もった。明らかに人がいるに似合わないこの場所で戦時中と言うことをこの日くらいは忘れようと必死にお酒を飲んでいる。
アシュリー・アンテナー。戦争の指示、支援をするアンテナー家の令嬢だ。
「アシュリー・アンテナー嬢。どうしてこのような場所に。」
「あなたたち、こんな所で何をしているの。」
「新年、この雪が降るような季節は敵の攻めもないので少しはしゃいでしまいました。申し訳ございません。」
仲間が焦りながら答える。
「軍人ごときが、休息なんて与えられてると思っているの」
「す、すみません!!」
第32小隊全員で謝る。土下座。それ以外の選択肢など持っていない。この世界、この国では権力が全て、国王を中心に形成された権力、その最下層軍人。そんなものになってしまった。
「全く、最前線に言ってない軍人とかいる意味あるのかしら。」
「すみません。」
謝ることしか出来ない。我々は第1小隊ではない。第1部隊ではない。最前線じゃない。国の防壁の目の前、そこを突破されない、突破されるまで、国が対策を考えるまで、他の部隊、小隊が来るまでの時間稼ぎ。肉壁だ。
「本当、気持ち悪い、第1戦線にでも爆弾持って出ればいいのに、自爆でもすれば少しくらい国の役にたつんじゃない?」
「でも、僕たちにも使命が。」
**「口答えすんな!!*」*
イグラスが殴られる。顔が赤く腫れ上がり、吹っ飛ぶ。黒い土と白い雪が半々くらいに背中についている。
「いって….。」
イグラスが殴り返そうとしたその時、サイレンがなる。敵が攻めてきた。第1戦線で戦いが起きる。今どんな戦いが起きていて何人死んでいるのかさえ、第1戦線の人しか知らない。
「ちっ、戦いに行っとけ軍人が。」
アシュリーは文句を言いながら壁の中に戻っていく、軍人には通ることが許されていない、あの門の中に戻っていく。中がどうなっているのかこの高い壁を越えない限り僕たちは知れない。
門が開けられる、少年が外に投げ出される。
「いや、いやぁぁ!!!」
投げられる前、少年は叫んでいた。とても嫌がっていた。軍人になるものは強制的に門の外に投げ出されるのだ、男女など関係なく、捨てられるように。
「君も軍人かい?」
僕、ホクトが声をかける。どこまでも穏やかな声で。
「おにいさんたちも軍人?」
涙を拭きながら少年はそう言ってきた。服がかなり汚れていた。手には軍服を持っていた。これから一生自分を苦しめる重り、そして、自分を守る服となる。着なかったらまだ軍人ではない、でも、着なかったら死ぬ。そんな残酷な服だ。
少年はボロボロの服を脱いで軍服を着た。
「君も立派な軍人だね。」
褒めている。しかし、褒めていない。残酷だ。
「君はどこの部隊配属なんだ?」
イグラスが優しく声をかける。門から出されてきた少年、少女たちをなだめるのは門の目の前を守る第32小隊の役目だ。
「僕は….第1小隊って言われました。」
全員、息を飲んだ。あぁ、この子は死ぬのだと。全員思った。
「し、知ってる?第1小隊って」
アーナが少年に聞く
「知ってる、最前線の場所でしょ?」
「最前線は危険だよ、怖くない?」
「うん。怖くない。沢山敵を倒したら門の中に戻れるって言われたから。僕頑張る! 」
さっきまで門の外に出たくなくて泣いていた少年とは思えない覚悟の決まりようだった。
そして、そんな少年の覚悟は無意味なこともわかっていた。
「….うん。頑張ってね!私たちはずっとこの門の前にいるから、いつか敵いっぱい倒して帰ってくるの楽しみに待っておくよ。」
「うん!それまでおにいさん、おねえさんたちも頑張ってね!」
第1小隊、最前線。第1部隊との違いはさほどないためどちらで呼んでも構わない、と軍人たちは全員聞かされている。
そして、門の前、この第32小隊だけは知っている、どれだけ敵兵を殺しても門の中には戻れないことを。
しかし、言わない。言えないのだ。門の中に戻れると夢見て敵兵を殺しに行く少年にそんな残酷なことは言えない。
言ってしまった方がここに 来た少年、少女たちは死なないのに。
言わない理由、それは残酷と言うだけじゃない。この戦いさえ終われば軍人は平和になれる、そう信じて。死にたくない自分の意思を全て第1小隊に任せている。頼むからここまで敵兵を送らないでくれ、来ないでくれ。毎日考えながら第1小隊の健闘を祈る。
「いってらっしゃい。」
第32小隊全員で見送る。いつか死ぬ、その少年を見ながら、できるだけ敵兵を殺してくれ。そんな残酷な願いを込めて。
「桜、あげるよ。」
ホクトは言う。桜をあげる。
桜をあげる理由。すぐ咲き、すぐ散る。この子供たちのように。産まれてすぐ門の外に出され死ぬ。第10部隊までに配属される子供たちには渡している。最悪のプレゼント。
「あ、でもさっきサイレンなったからまだ危ないかも。もう少し一緒に話そ。少年」
アーナが伝える、まだ行かない、今向かわせたら敵兵を1人も殺せず死んでしまう。
「君名前なんて言うの?」
「アルトって言います。」
「アルト君か、よろしくね!同じ軍人として。」
「うん!よろしくおねえさん!」
その時、銃声が聞こえてくる。
「え….。」
第32小隊に入って初めてのことだった。
前線が負けた。そんな絶望が頭をよぎる。そんなはずはない。第32小隊の全員、誰もがそう思った。
「戦闘準備。 」
ホクトが隊員に伝える。
「はい!!」
全員が返事をする。隊員、ほとんどの手が震えていた。
「….死ぬ気で戦え。どうせ門の外に捨てられた人種だ。….もう、失うものなどないだろう。」
行くぞ。
第32小隊全員出撃した。戦い慣れてない。敵兵や第1小隊とは違う。戦えない、銃もまともに撃てない。
撃ち合う。敵兵はミサイル、アサルトライフル、色々な武器を使ってくる。第32小隊は第1小隊とは違い武器の補給がほとんどない。壁の中の人が対策するための時間稼ぎ。肉壁。まともな武器は持っていない、全員拳銃か殴る木の棒みたいな武器だけだ。勝てるわけが無い。そんなことは全員分かりきっていた。
「頼む。早く、早く壁の中のヤツら。対策をっ!」
イグラスがミサイルに巻き込まれる。即死。
アルトもイグラスと共に巻き込まれて死んだ。
まだ小さい少年が死んだ。
「アーナ逃げよう。」
ホクトはアーナに言う。提案。死ぬ訳には行かない。1人でも生き残らねば。この絶望を後世に伝えなければ。
「アーナ早く!!」
「うん。」
ホクトとアーナは敵兵を掻い潜り、逃げ切る。
死んだ仲間へ弔いをしながら逃げる。
「….もう人いないね。」
「うん。いない。」
アーナは双眼鏡で逃げてきた方向を見る。
「敵兵。門の中入っていってる。」
「そうか。あの中の人、生き残れるかな。」
「悪い人だけじゃないもんね。」
「ああ、そうだな」
数日後。壁が壊された。国として、新年最悪の事件となった。
この事件の原因はアシュリー・アンテナー。
数ヶ月前敵国の貴族と恋に落ち自分の国を潰してもらったら存分に恋ができる。そんな理由で国を潰したらしい。アシュリー・アンテナーの望み通り国は潰れ婚約することができた。
1人の思惑のために国民の半分以上が死んだ。恋のために何人も何人も死んだ。
ホクトとアーナは辺境の国に行った。
「ここで平和に暮らそう。 」
「私たち、本当にこんなことしてていいのかな。」
「あいつらの分まで生き残るしかないよ。 いつか、生き残ったやつを殺しにくることがあるかもな。」
「….絶対生き残るよ。」
意味もなく、生き残り平和に暮らそうとしていた。あの、軍隊時代よりはよっぽどマシな最高の生活だった。
恋、それに全てをかける気持ちがよく分からなかった。が、少しだけわかった気がした。
それでも、国を揺るがす。そんなことはしない。絶対にそんな大層なものではない。愛して、叶わないのならば諦める。それくらい普通なものでいいと思う。
「何書いてるの?」
「僕の気持ちだよ。」
「なんか面白そうなの書いてるね。」
「全然面白くないよ。今まであったことの日記みたいな感じ。」
「この平和、後どのくらい続くかな。」
「辺境だからな長く続いて欲しいよ」
木造の少しボロい家。そこに、2人で暮らしている。
5月。あの最悪の新年から4ヶ月たった。
ホクトとアーナは平和に暮らしている。あの新年からは考えつかないほど平和だった。
「私、本当にこれでいいのかな」
「いいって言ってるだろ。安心しろ。」
アーナの頭を優しくなでる。
そして、願う。この平和がいつまでも続くように。
コメント
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この話、すごく重くて、でも綺麗なところもあって、心にずっしりきました…。 冒頭のアシュリー嬢の傲慢さと、第32小隊の「謝ることしかできない」無力感が痛いほど伝わってきました。特に、少年アルトに「頑張ってね」と笑顔で送り出すシーン、あれは本当に残酷で。門の中に戻れないと知りながら、希望を見せて送り出すしかない理不尽さ、考えさせられました。 反面、恋で国を壊したアシュリーと、ただ「生き残った者の務め」として静かに生きることを選んだホクトとアーナの対比も、すごく印象的です。粗末な木造家屋での「この平和が続くように」という願い、すごく切ないですね… 設定の「肉壁」「門の中と外の格差」が世界観をすごくしっかり支えていて、続きが気になります。ねらちさんの世界構築、好きです。
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#赤水
ゴリちゃま
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