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ティータイムを終えて、子どもたちと彼の部屋へ行くと、ドアを開けた拍子にスルリと猫のミルクが入り込んだ。
「ミルクちゃんも、貴仁さんにおかえりを言いに来たの?」
私がそう尋ねると、ミルクは「ニャー」と返事をするように一声鳴いて、彼の足に擦り寄った。
「ただいま、ミルク」
彼が声をかけ、その頭を撫でると、ミルクはまた応えるかのように、「にゃーん」と鳴いた。
「みんな、あなたの帰りを待ってたみたい」
ふふっと笑って言うと、
「待っていてもらえて、こんなにうれしいことはない」
彼が、心から満ち足りた風で、ふわりと顔をほころばせた。
双児用のベビーベッドに、子どもたちを寝かしつけると、すかさずミルクが後ろ足で立ち上がり、両前足をベッドサイドに掛けて、中をじっと覗き込んだ。
「なんだかお守りをしてくれているみたい」
微笑ましい思いで、その光景を見つめる私に、
「ああミルクも、子どもたちが家族だとわかっていてくれるのかもしれないな」
彼が頷いて答える。
「ええ、きっと……」
窓から射し込む暖かな日差しが降り注ぐ中で、ベビーベッドの子どもたちを真っ白でふわふわな猫が見守る様は、幸せをそのまま絵に描いたようでもあった。
しばらく子どもたちを眺めたミルクが、入って来た時と同じように、ふらりとまたドアの隙から出て行くと、驚かさないようにと黙ってそれを見ていた彼が思い立ったように服を着替え始めて、つい見入ってしまった。
「何を、そんなに見つめていて?」
私の視線に気づいた彼が、ふと手を止める。
「あっ……着替えているところも、カッコよくてと思って……」
自分の言動が途端に恥ずかしくなって、顔をうつむかせると、
「そうか、そんな風に思ってもらえてうれしい……」
答えた貴仁さんの方も、ふっと照れ顔になった。
二人して照れくささを感じていると、子どもたちが構ってほしいと言いたげに、「あーう」と声を上げて、私たちを包む空気はのどかに和んだ。