17
阿須の家に麗乃を連れて、話すことにした。
「いいぞ。話して。聞かせろ。」
「私、昔に虐待されてたの。」
「うん。知ってる。」
「え…???なんで???」
固まる麗乃に阿須は「いいから。」と言うような振りをした。
「痣やら傷跡がすごくて。痣の跡とかはまだ治ってないところもあるの。それがずっと続いて、私が12歳ぐらいだったかな。少し親の話が通じるような歳になった時、親から「お前が働き始めたら、給料は全額俺たちがもらって、いい家に住むから早く働いて出ていってくれ。」って言われたことがあるの。」
「それで、働きまくって親に全額渡すことを決めたと。お前は人間の道具じゃねぇだろ。」
阿須が少しキレる。だが、麗乃はそんな阿須には構わず、反論。
「分かってる。けどね、やっぱ私以外が幸せならいいかなって思っちゃって。こうやって働き始めて、お金も稼げるようにはなった。けど、全額親にいく。それがやっぱりしんどい。私が稼いだお金が、全て親に行ってしまう。欲しいもの。何も買えないの。」
「そんなこったろうと思った。」
「ご飯もあまり食べれてなくてね。昔のフラッシュバックは凄いし…。」
麗乃が自分の腹を撫でて困ったような顔をする。でも、そんな時もずっとニコニコしていた。もちろん阿須はそれに気づいている。
「んで、どうしたい?どうして欲しい?」
「だからといって、親が不幸になって欲しい訳じゃないの。私だけが不幸に、、。寿命を縮める薬がある。それで縮ませてしまおうかとも思ったんだけど…。」
「おい。麗乃。」
阿須は麗乃に近づき、両頬を片手で掴んだ。
「間違った不幸のなり方をするな。別に俺はお前の親を殺そうとなんてしねぇ。ちっと説得するだけだ。お前がどうしたいかは知らねぇ。けど、お前のことだから自分の給料を親に渡し続けるのは変わんねぇんだろ?」
「うん…、それは…。」
「だったら、半分だ。お前の給料の半分。親に渡せばいい。」
「でも、また殴られちゃう…。」
麗乃が思い出し、震え出す。それだけでも相当親が怖いのがわかる。阿須はそんなの構わない。
「どうしたいんだよ。お前は。」
「私は、、。」
麗乃は少し悩み、小さな口を開けた。
「助けてください、皆が笑顔になれるように、、。私の親を、、何とかしてくださいっ、。」
「ったく、お前が泣いてたら、蒼も泣くし、彗もテンションちょっと下がるんだからさ。笑ってる時間、俺が増やしてやんよ。」
阿須が親指を自分に指し、ドヤ顔をした。
まるで俺に任せとけというような顔だった。
麗乃にとってはすごく阿須が頼もしく、自分にとってヒーローのような存在だった。
「ありがとう、阿須くん。」
「おうよ。話してくれてありがとな。今日は帰ってゆっくりしろ。」
「うん…!」
麗乃が阿須の家から離れ、自分の国に帰っていった。
阿須家
「阿須、お前そんなに人の話聞けたっけ?」
「は?!聞けるに決まってんだろ!」
「だってずっと騒いでばっかだったから。」
出雲が少し笑いながら阿須を見る。
阿須はそんな出雲の姿にムカついていた。
「俺がやらねぇと、進まねぇ。苦しい思いして欲しくねぇだろ。」
「阿須にもそんな気持ちがあって良かったよ。」
「ないと思ってたお前は死ぬほど失礼だな。俺も色々あんだ。流石に共感できる部分は多い。」
阿須は自分の過去を思い出し、グッと強く拳を握りしめた。それを見た出雲は少し悲しそうな顔をして阿須のことを見ていた。
「明日から麗乃のことよろしくね。ヒーローさん。 」
「ふんっ、任せとけ。」
続
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!