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#謎解き
金華にょこ
585
ゆずき
256
3
「ハアハアハア……」
飛び起きた尊は、べっとりとした額の汗を拭った。
「やっぱり夢か。ひどい夢だったな……」
ここが本間家のリビングだとわかって、ふうっと息を吐く。
窓からは暖かな日が差して、庭には洗濯物がはためいている。
ポカポカ陽気の春休みの午後。ガラステーブルの上にはピラミッドやストーンヘンジ、ナスカの地上絵など、彼の大好きなミステリースポットの資料が山になっていた。どれも行きたいけど、海外旅行なんてとても無理だ。写真を眺めて旅した気分になっている内に、いつの間にかソファーで眠っていたらしい。
一番上にあったのがイースター島の観光パンフレットだ。おまけにつけっぱなしのテレビまで、イースター島での発掘作業の様子を伝えていた。だからあんな夢を見たんだ……。
パンフレットに目をやった尊は、「不思議発見のミステリーツアー! モアイの謎解きにイースター島へ行こう」という派手な宣伝文句にふうっとため息をつく。きっとモアイをネタにして笑うのだろう。行けたとしても、こういうのはね……。
みんながミステリースポットに興味を持つのは嬉しいけど、詳しく知ろうとせずにただモアイを笑ったり適当なことを言ったりする人を見るのが嫌なのだ。なんだか地球を馬鹿にされているみたいで……。
「それにしても変な夢だったな。空からモアイが降ってくるなんて。あれは地面に立ってるもので、外から降ってくるわけが……」
誰に言うでもなくうんちくを呟いた途端、空から何かが降ってきた。彼の顔面めがけて、いきなり飛んできたのだ。
「わっ!」
放物線を描いた縦長の物体をなんとかキャッチしたものの、運動が得意ではない。バランスを崩して、ソファーの隙間にひっくり返った。
「いたたた! 何だ何だ、誰がこんな……?」
「……尊……」
夢と同じように自分を呼ぶ声が聞こえる。尊はパッと正座して、ソファーの縁から覗き込む。
黒い大きなリボンを揺らし、外国人の美少女がこちらを見下ろしていた。いつからなのか、彼女はソファーの肘かけに突っ立てる。
「マーガレットちゃん!?」
彼女マーガレット・ルシフェルは、いつも突然現れる不思議な友達だ。翼に育ての父を住まわせて世界中の魔物を退治している、普通じゃない女の子だ。
(これを放ったのはマーガレットちゃんなのか? でも、なんで?)
謎の物体を握りしめたまま、彼女を見上げる。マーガレットはいつもの超然とした目で、テーブルのパンフをチラッと見やった。
「やっぱりね。尊は好きだからな、そういうの」
「え?」
つかんでいたものに目をやる。
「違うか?」
その場で器用にしゃがみ込み、じっとこちらを見つめる。表情も変えず感情を見せない話し方だが、マーガレットが心配しているのはわかった。
「これの……この石像のこと?」
改めて手の中のものを見る。それは三十センチくらいの石像だった。
頭に生えた猫耳。まんまるな瞳。デフォルトされた胴体。額の傷跡。見れば見るほど……。
「ノークにそっくりだ!」
「そいつはお前にくれてやる。ありがたく思え」
「あ、ありがとう。でもこれどこで見つけたの?」
「イスラ・デ・パスクワ。太平洋の隅っこ、ちっちゃな島だ」
ニコリともせずに答える。それでも、受け取ったのには満足した様子だ。
「島……?」
「うむ。ラパ・ヌイと呼ばれている島だ」
答えたのはマーガレットではない。翼の形をしたゾロクだ。黒い翼がうねうねと形を変え、小さな目が現れる。不気味だが、可愛らしいと言えなくもない。
「ラパ・ヌイって……?」
そう聞いた時にはもう、用事が済んだとばかりにくるくると背中を向ける。
「じゃあな」
背中に生えている大きな翼を広げて、窓から出て行く。
「ちょっと待って! マーガレットちゃん!」
コウモリのような黒い翼をはためかせ、マーガレットは空の彼方へ飛び去っていった。彼女はいつもそっけないのだ。
ぼんやりと見送った彼は、ハッと手元に残された石像を見やった。
「ラパ・ヌイ……どこかで聞いたような……あっ! イースター島のことじゃないか!」
イースターとは、西洋の探検家が発見した時につけた名前だ。日本ではその名で知られているが、現地の人はラパ・ヌイと呼んでいる。
「マーガレットちゃんは、ラパ・ヌイからこれを持ってきたの? じゃあ、これって……」
(まさかのモアイ? しかもノークにそっくりの? そんなモアイ、聞いたことがないぞ)
「もしかして、まだ未発見のモアイ? アニマル人とイースター島の古代文明に関係が?」
床に落ちている石像を不思議そうに見つめた。転がったノークモアイの目が、こちらを見返してくる。
「尊……」
「えっ?」
周囲を見渡すが、誰もいない。気のせいなのか、モアイの目が光り出して……。
「尊くん……」
「……ノーク?」
光る目に吸い寄せされ、尊はモアイ像から目が離せなくなった。催眠術にかかったような不思議な感覚。見つめていると、何故だか夢の続きのような光景が浮かんだ。
一点を見つめるモアイたち……。やけに鮮やかな緑色をしたノークの姿。なんだろう? どこかで見たような光景だ……思い出せそうと思ったその時。
ものすごい爆音が本間家を揺るがしたのだった。
コメント
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「マーガレットちゃんの贈り物」第2話読みました!尊くんのミステリースポット愛がひしひし伝わってきて、夢から覚めたと思ったらまさかの現実でも空から石像が!?ノークそっくりのモアイ像、めっちゃ可愛くて不気味で気になる…💕 マーガレットちゃんのそっけない優しさも尊いし、最後の爆音で次回どうなるの!?ってなった😭 カナリアさんの不思議ワールド、引き込まれすぎてヤバいです!!続きが待ちきれない〜✨