テラーノベル
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気がつくと、きれいな緑色の草原に座っていた。
「こ、ここは…?」
あたりは見渡すかぎり草原だけど、下り坂の下から見える大きな街は、活気を放っている。
帰らなきゃ。
戻らなきゃ。
みんなのお家に……!
「だめよ。」
すべすべしたきれいな声で、誰かに話しかけられた。
「誰?」「ここよ。」
うわっ!びっくりした!
目の前にいたのは、空に浮かんでいる猫。
「あなた、ナグよね?」「へっ……!?」
びっくりした。
見事に的中しているから。
そうだ、うちは……
咲とか明希とかのお家にいたけど、なんか暗いところに閉じ込められて……?
「あなた、もう一回人間の世界に来たのよ。転生、というべきかしらねぇー。」「そうなんだー…ってか誰!?」「あぁ、私?私はニャカミ。猫の神よ。あなたをこの世界に転生させた。以上。」
ニャカミと名乗るやつは乾いた顔でそう言った。
「転生!?どうして、そんなこと………。」「あなた、人間の世界でまだやりたいことがあるんでしょう?新しい家の中でゴロゴロダラダラ遊んで寝て……。でもそれをやるまえに、あなたは事故で死んでしまった。」「そ……そ、そうかもしれないけど…ゴロゴロダラダラはいらない!」「そこ気にするとこかしら?」「うー、それは今置いておいてっ!この世にもっかい来たとなったらさぁー咲と明希に会いたいよーっ!」「あら?飼い主の名前を覚えているの?」「うん…。あと、ホシのことも…………。」
思い出したくなかった。
咲や明希と会う前に、うちはホシの家にいた。
一緒に住んでいた男の人の提案で、うちをお店で買ったらしい。
でも、うちは1回も誰かのお家に住んだことがないから、きれいですごく整った部屋が落ち着かなかった。
だからどんどん散らかしてしまったうちに、ホシに怒られるようになって………。
自分が悪かったのは分かってるけど、耐えられなくなって、家を出た。
そうしたら…………
「育、どーした?」「あれ、猫が。」
明希と、咲に拾われて、ルナって呼ばれてたけど、ナグって呼ばれるようになった。ルナも可愛くておしゃれな名前だけど、ナグって名前のほうがお気に入りだった。
「2人に会いたいよ!ニャカミ〜!」「大丈夫よ!ここはね……」
ニャカミは街の方を見下ろした。
「ここは明希達が住んでいる地域なのよ。ちょうど春ね。いきなり家におしかけても驚かれるだろうし…………素晴らしい提案をするわ。」「?」「明希のいる中学校に行ってみない?」「えっ!?いいのっ!?あ、でも…明希が言ってた。学校に行くには、勉強できないとダメだって……」「もちろんそうね。でも大丈夫!今あなたの頭の中に、中学1年生までにならった知識を転送したわ。」
ニャカミが微笑んだ。
頭の中に、色々となにかが入っていくような感じがした。
………分かる!分かる!明希はこれを勉強してたんだ!咲達はこれを学んで大人になってきたんだ!
で、でも……
「うーん…………」「ちょっと?」「頭がクラクラするぅー………」
バタリ
「あらま、一気に送り込みすぎて処理できなかったみたいね。」
待っててね、明希たち!必ずそっちに行ってみせるから!!
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