大型ベビーショップ。入店してすぐ、北信介は“ミスター完璧”モードを全開にしていた。
「🌸、まずは必要なもんリスト確認するで。ほら、これ見ぃ」
しんちゃんが差し出したのは、まさかの“手書きの丁寧なチェックリスト”。
カテゴリーごとに色分け、使う時期まで書いてある。
「……しんちゃん、完璧すぎない?」
「当たり前やろ。子どものもんや。抜けたらあかん」
でもその完璧さのせいで―
「ほら、この肌着。縫い目が外側になってるやつがええって書いてあったやろ」
「うん」
「でも素材は…綿100%と、オーガニック綿と…どっちもええな。……🌸、どっちにする?」
「え、選んでいいの?」
「俺はどっちも丁寧に作られとるとこは評価してる」
真顔で言うから面白い。
でも次の瞬間、
「……迷いすぎて分からんようなってきた」
しんちゃん、珍しく眉間にしわ。
「しんちゃん、ほら。こっち触って?肌触り良い」
「……ほんまや。ほな、これにしよか」
ちょっと頬が緩む。
「見て、ちっちゃい靴下。可愛いね」
「……ちっこいな」
北はその小さい靴下を指先でつまみ、しばらく黙る。
「どうしたの?」
「……こ、こんな小さいんか。俺の手に乗るやん……」
明らかに動揺してる。
「しんちゃん?」
「いや、なんか……怖なってきたわ。こんな小さい子……守れるんか俺」
真面目すぎて不安になるタイプ。
🌸がそっと手を取って言う。
「しんちゃん、十分守ってるよ。今日だってこんなに考えてくれてるじゃん」
北は、ゆっくり息を吐いてうなずいた。
「……ありがとな。🌸がおるから、俺も落ち着くわ」
「この哺乳瓶、吸い口の形が自然でええって書いてあるけど……耐熱温度は…」
しんちゃん、裏面のスペックを読み込みすぎ。
「しんちゃん、店員さんに聞く?」
「いや、自分で調べる」
そしてスマホ取り出し“哺乳瓶 比較 おすすめ”と検索し始める。
「しんちゃん、調べだしたら止まらないやつだ」
「止めるな。これ大事や」
完全に“機械モード”。
でも結局、🌸が「私はこれ好き」と言ったら
「……ほな、それにするか」
秒で折れる。
支払いしようとしたら、北がふと振り返って言う。
「🌸、ほんまにもうすぐなんやな」
「うん」
「……俺、練習でできてることは試合でもできてたはずや。せやから、毎日ちょっとずつ準備してこな」
そして、小さく続ける。
「……不安な時は言えよ。俺、絶対ほっとかんで」
静かでまっすぐな言葉。
なにより、北信介らしい“反復・継続・丁寧”の愛し方。
🌸が笑うと、彼も少しだけ緩んだ表情で、
「……そんな顔すんな。惚れ直すやろ」
と言う。
照れてるのか、声が少しだけ低い。
帰り道
ベビー用品の袋を持ちながら、北はぽつり。
「なぁ🌸」
「なに?」
「俺、完璧ちゃうけど……ちゃんとええ父親になるよう努力するわ」
「うん。しんちゃんなら絶対なれるよ」
「ほな、今日から“おむつ替えの練習”や。ぬいぐるみで」
「え、それはちょっと面白い」
「笑うな。真剣なんやで」
真面目すぎて、ちょっと抜けてて、でも全部優しい。
そんな北信介との“わちゃわちゃベビー用品デート”は、
安心するあたたかさで満たされていた。
コメント
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あれ?おかしいな鼻血が