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琳埜
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夜。
部屋の電気は消えているのに、二人とも眠れていなかった。
『……まだ起きてる?』
「……ん」
『……』
沈黙が重い。
昼間の言い合いが、頭から離れない。
『……悪かった』
「……何が」
『……言いすぎた』
「……俺も」
布団が擦れる音。
ローレンが少しだけ近づく。
『……近づくなって言うかと思った』
「……言うと思う?」
『……くっさん、怒ると黙るから』
「……ローレンが泣きそうになるからだろ」
『……見てたんだ』
「見ないわけねぇ」
また沈黙。
ローレンは天井を見る。
『……なんであんな言い方したんだろ』
「……怖かったからだろ」
『……何が』
「俺が離れるの」
『……っ』
ローレンは体を横に向ける。
二人の距離が、一気に縮まる。
『……くっさんの顔』
「見るな」
『……近い』
「お前が寄ってきた」
『……そうだけど』
息がかかるほどの距離。
『……まだ怒ってる?』
「……怒ってたら」
「こんな近く来ねぇ」
『……じゃあ』
「……まだムカついてる」
『……どっちだよ』
「……好きだからムカつく」
ローレンの喉が鳴る。
『……そういう言い方、ずるい』
「知ってる」
ローレンの指が、葛葉の服の裾を掴む。
『……離れたら』
『……また喧嘩しそう』
「……じゃあ離れんな」
『……くっさん』
「……何」
『……今、変な顔してる』
「どんな」
『……エロい』
一瞬、沈黙。
「……お前な」
「喧嘩した直後にそれ言う?」
『……だって』
『……近いから』
葛葉はローレンの額に手をつく。
壁と体の間に閉じ込める形。
「……逃げるな」
『……逃げてない』
「……じゃあ見るな」
『……無理』
視線が絡む。
唇まで、あと少し。
『……くっさん』
「……やめる?」
『……やめたら』
『……また距離できる気がする』
葛葉は動きを止める。
「……じゃあ」
「仲直りな」
『……どうやって』
「……こうやって」
額と額が触れる。
キスはしない。
けど、近すぎて心臓がうるさい。
『……ずるい』
「何が」
『……触れないの』
「……喧嘩中だからな」
『……もう終わりでいいだろ』
「……確かに」
葛葉は少しだけ距離を離す。
「……ごめん」
『……俺も』
布団の中で、手が触れる。
指先が絡む。
『……離れんなよ』
「……離れねぇ」
『……約束』
「……約束」
部屋は静かで、さっきよりずっと暖かかった。