家に帰るとリビングは暗くて、中に入ったら阿部ちゃんが窓際にいた。
こういう日はなんとかムーンの日だ。何回目かにしてやっと覚えた。
🖤「ただいま。今月は何ですか?」
💚「あっ、めめおかえり。早かったね」
後ろから抱きしめ、振り返って嬉しそうにすり寄ってくる阿部ちゃんとハグ。
空には少し小さな満月が浮かんでいる。
💚「今月は、フラワームーン」
🖤「綺麗な名前」
💚「だよね。あっそうだ、コーヒー淹れようか?」
🖤「ありがとう。手洗ってくる」
窓際に並んでコーヒーを飲む。
🖤「そろそろアイスとホット悩む時期だね」
💚「確かに。夜も気温上がってきたし」
そんな話をしながら、スマホでフラワームーンと検索する。
『他者と絆を深める事ができるジンクスがある』
🖤「へぇ」
💚「どうしたの?」
🖤「フラワームーン、ジンクスあるんだね。本当なら、俺と阿部ちゃんの絆が今日でまた深まっちゃう」
💚「そうみたい」
嬉しそうにはにかむ阿部ちゃんが可愛くて距離を詰め、髪を撫でる。
俺を見る阿部ちゃんの瞳には、街灯であろう光が映り込んでいる。それは人工物なのに、阿部ちゃんの目に吸い込まれるとまるでジュエリーのようにきらきらと曇りのない輝きをもって俺を映していた。
🖤「月より阿部ちゃんの方が綺麗」
💚「なに言ってんの」
🖤「阿部ちゃんの目、今星空みたいにキラキラしててすごく綺麗。ずっと見てたい」
そこまで言うと『やめてよ恥ずかしい』と顔を仰ぎ、外に向き直ってしまった。
仕方ない、絆を深めるらしいからもう少し月を見ておくか…とコーヒーを置いたら、そのはずみにスマホをスクロールしてしまったようだ。
思わず画面を見ると、そこには『新たな出会いを引き寄せるジンクスもある』と書かれていて、二度見した。
🖤「…終わり」
💚「えっ」
🖤「フラワームーン、見るの終わり!」
💚「なんでぇ!?」
カーテンを強引に閉めた俺を睨む。
🖤「新しい出会いを引き寄せたら困るから!俺の阿部ちゃんなのにそんなの嫌だよ」
💚「新しい…めめ、なんの話?」
だってほら、これ!とスマホの画面を見せると、阿部ちゃんはそれをまじまじと見てから『そういう事ね』と笑った。
💚「どんな新しい出会いがあったとしても、俺はめめだけだよ」
🖤「ほんと?ほんとに?」
💚「ほんとに」
だからもう少し見たいな?と言われ、ごめんねとカーテンを開けた。
フラワームーンが変わらず世界を照らす。月明かりに浮かぶ阿部ちゃんは改めて見ても息を飲むほど儚くて、美しかった。
🖤「俺の阿部ちゃん」
💚「うん、めめの」
そう囁き合い抱きしめて交わしたキスは、いつもより少し熱っぽかった。
終
コメント
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わ〜〜、michiruさんありがとうございます😭💓本物の二人が!ここにいました!😭💓二人のやり取りが自然で甘くてきゅんとします🥹
あべちゃん溺愛のめめやっぱいいわ🖤💚
大人の愛❤️ですね🖤⚽️💚📗