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朝の情熱的な抱擁から数日。元水柱として、そして優れた医術の心得を持つ者として、しのぶは自分の体内に訪れた「極めて微かな、けれど決定的な違和感」を敏感に察知していました。下腹部の奥深くが、内側からじわりと熱を帯びるような、何かがしっかりと根を下ろしたような独特の感覚。それは、かつて恋を授かった時にも感じた、生命が宿る瞬間の予感でした。
「……あら。あんなに熱心に注がれては、抗いようもありませんね」
洗面台の前で、しのぶは自分の頬が心なしかふっくらと上気しているのを鏡越しに見つめ、ふっと柔らかく微笑みました。
その時、背後から大きな温もりが重なります。童磨が、吸い寄せられるように彼女の腰に腕を回し、首筋に鼻先を寄せました。
「しのぶちゃん、どうしたんだい? なんだか今日の君は、いつもよりずっと甘い匂いがする。……僕の『愛』が、まだ君の中に残っているのかな?」
童磨の言葉は冗談めいていましたが、その瞳は獲物を見つける獣のように鋭く、それでいて深い慈愛に満ちていました。
「……童磨さま。あなたの直感は、時に恐ろしいほど鋭いのですね」
しのぶは、自分の腰を抱く彼の大きな手に、そっと自分の手を重ねました。
「まだ確信ではありませんが……わかってしまいました。あなたのあんなに強引で、情熱的な贈り物……。どうやら、しっかりと私の奥深くに届いてしまったようです」
「……えっ? それって、つまり……!」
童磨の動きが止まりました。いつも余裕を崩さない彼の顔が、驚きと、そして弾けるような歓喜に塗り替えられていきます。
「本当かい!? 僕たちの二人目が、もうここに……?」
彼は膝をつくようにして、しのぶのまだ平坦なお腹に耳を寄せました。そこにはまだ鼓動さえ聞こえないはずなのに、童磨には、自分の分身がしのぶの温かな胎内で芽吹いた確かな手応えが感じられたのです。
「ああ、嬉しい……! しのぶちゃん、本当にありがとう。僕、君のことを世界一幸せな妊婦さんにしてみせるよ。今日からは指一本動かさせないからね!」
「ふふ、またそうやって大袈裟な……。でも、そうですね。今度はどんな子が生まれてくるのか、私も楽しみです」
童磨は感極まったように、しのぶのお腹に何度も何度も、宝物を愛でるような優しい口づけを落としました。
「次は僕に似た男の子かな。それとも、もっともっと君に似た可愛い女の子かな。……どちらにせよ、僕が一生かけて、君も恋も、この子も、全部まるごと愛し抜くよ」
しのぶは、自分を抱きしめる彼の腕の強さと、その瞳に宿る真実の愛に触れ、心からの安らぎを感じていました。
かつての因縁を超え、二人の間に新しく灯った二つ目の命。窓から差し込む柔らかな光の中で、二人は新しい家族の訪れを静かに、けれどこの上なく熱く喜び合うのでした。